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跡継ぎ候補者が、現役経営者と経営課題を熱く議論:中小企業大学校東京校

2024年 2月 19日

第31回在校生・卒業生合同研修会

中小機構が運営する中小企業大学校東京校は、同校で経営後継者としての知識や経営マインドを学ぶ現役の研修生(第44期後継者研修研修生)24名と、歴代の卒業生約100名が参加する「第31回在校生・卒業生合同研修会」を、TKP新橋カンファレンスセンター(東京都千代田区)で開催した。人手不足対策や第二創業など、中小企業が直面する経営課題について、在校生と経営者が熱い議論を繰り広げた。

新型コロナウイルス感染症が5類に移行後初めて開催された研修会は、卒業生の現役経営者の参加が前年度から約20名増加した。参加者は12の班に分かれ、「経営者の役割・マインド」「第二創業(新規事業・経営革新等)」「人材、組織・労務関連」の3つのテーマから1つについてそれぞれ集中的に討議するグループディスカッションを行う。コーディネーター役の坂本篤彦人間力経営株式会社社長が「今日は様々な地域、業種の経営者が参加している。教室で学んでいるだけでは得られない貴重な機会。合同研修はぶつかり稽古のようなもの。先輩後継者の胸を借りるつもりでぶつかっていこう」と発言し、議論がスタートした。

「人材、組織・労務関連」について議論したある班は、まず現役研修生が、「新卒採用をしたいが、面接をしてもいい人材かどうかが分からない」と問いかけた。これに対して経営者側から「インターンシップを行って、当社のことを知ってもらったうえで入社してもらうようにしている」「面接でその人の本質を見抜くのは正直難しいが、履歴書を見るとわかることもある」といった意見が出た。また「従業員の定着率を上げるにはどうすればよいか」という問いについては、「従業員の妻が転職を促すケースがあるが、当社のSNSを家族でフォローしてもらって、夫やお父さんが実際に働いている姿を見てもらったり、従業員の妻の誕生日にお花を贈ったりしている」「社員旅行や従業員の家族が参加するバーベキューパーティーをしている」といった具体策が示された。

全員が立ち上がって議論する班も現れた

議論が白熱して、白板の前で参加者が全員立ち上がってやりとりをする姿が見られるなど、各班とも、研修生の問いかけについて、真剣にアドバイスをし、一緒になって悩む姿が見られた。研修生にとっては、経営の最前線に立つ経営者の生の声を聴く貴重な機会となったようだ。

「中小企業こそWell-being経営を」と訴える前野教授

グループディスカッションに先立って行われた基調講演は、前野隆司慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授が登壇、「中小企業だからこそできる『Well-being経営』をテーマに講演した。前野教授は米国の研究として、幸福度の高い社員の創造性は33倍、生産性は31%、売り上げは37%上昇するという調査結果や、実際にWell-being経営に取り組み成功している日本の中小企業の事例を紹介した。「中小企業は大企業に比べて小回りがきく。是非Well-being経営を目指してほしい。それが企業の持続的な成長につながる」と強調した。

中小企業大学校東京校の経営後継者研修は、中小企業経営者の子女などの後継者が、自社を離れて10か月間にわたり全日制で経営者にとって必要な経営マインドや実務能力などについて学ぶ経営者育成プログラム。40年以上の歴史の中で850人以上の卒業生を輩出している。「在校生・卒業生合同研修会」は同プログラムの一環として毎年開催されている。現役生と卒業生による世代を超えた交流の機会となっており、経営者同士の絆づくりの場としても役立っている。