~中小企業経営者は、今の景気をどのように感じているのか~

第135回中小企業景況調査【平成26年1~3月期】

さらなる業況改善も、人材不足に直面する中小企業

平成26年1-3月期の中小企業景況調査では、引き続き全産業の業況判断DIが大幅に改善。リーマンショック以前の水準にまで戻っている状況が確認できた。

しかし、原材料価格の上昇や消費税の増税後に対する不安、人材不足に直面し苦悩する声が多く寄せられている。

中小企業の業況判断DIの推移

1.増税前の駆け込み需要に人材不足が顕在化

今期の各種景況調査の多くでは、引き続き足元の企業の業況マインドが改善し、景気の回復を実感する動きが確認される。しかし、同時に先行きを不安視する動きも示されている。本調査結果について、前期比のDIの季節調整が開始した1994年以降、全産業の業況DI(▲11.1)と売上DI(▲7.8)(ともに前期比季調値)が最も高い値となった今期、従業員過不足DIには業種および規模を問わず著しい不足感が示されている。

従業員数過不足DIの推移(「過剰」-「不足」今期の水準)

2.不足しているのは、熟練技術者だけではない

今期の調査において寄せられた中小企業経営者からのコメントでは、熟練技術者はもちろん、一般の従業員さえ確保が困難になっていることを訴える内容が多く寄せられており、増税前の駆け込み需要の中で、供給不足が深刻化していることが示唆される。

【コメント】

  • 今四半期の仕事量は十分だが、原材料の値上がりで時間差分の採算が悪化している。現場工事の遅れで工場の生産計画が大幅に狂っている。また、求人難で技能士や従業員の確保ができず、今後は賃金の改定が課題となりそうだ。(建具製造業 新潟)
  • 熟練技術者の確保も必要ですが、若い従業員の確保を急ぎ進め、人材の育成と資格取得を優先する経営をこれから3年以内に強化しなければ、業界も経済も衰退するような思いが近頃します。(土木工事業 京都)
  • システム業界では人手不足が発生しているため、引き合いが多くなってきているが、単価がなかなか合わない状態。しかし、来年度から単価も上昇するといわれているので期待したい。(受託開発ソフトウェア業 東京)

3.見通し:不透明な増税後の経済状況下の雇用を考える

急激な需要の増加により、1994年以降最大の改善局面となった今期の中小企業景況であるが、増税後の4-6月期には再び悪化する可能性も高い。見通しの立たない経済状況の中で、雇用をどのように考えるか。今期寄せられたコメントの中からヒントを探るとすれば、従業員一人ひとりが自社で働く経験を通して得る知見や技術があり、それが今後の企業活動の中で必ず必要となる局面が来ると言うことだろう。環境の変化に左右されることなく、長期的な視点に立って雇用を検討することが、中小企業経営者が増税後に取り組むべき最初の課題かもしれない。

文責

ナレッジアソシエイト 平田博紀

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