~中小企業経営者は、今の景気をどのように感じているのか~

第136回中小企業景況調査【平成26年4~6月期】

一転して業況悪化も、曙光が窺える中小企業景況

2014年4-6月期の中小企業景況調査では、前期まで緩やかな改善基調にあった全産業の業況判断DIが一転して悪化し、2012年10-12月期の水準まで戻った。

原材料価格の上昇が続く中で実施された消費増税後の消費動向を目の当たりにし、不安感が広がっている反面、冷静に現状を見極め、今後の対策を検討している中小企業経営者の姿が窺えた。

1.悪化トレンドの中で窺える生産設備の不足感

今期の全産業の主要DI(前期比季調値)を見ると、業況判断DI▲23.2(前期DIとの差(以下、前期差)▲12.1ポイント減)、売上DI▲23.1(前期差▲15.3ポイント減)、資金繰りDI▲16.3(前期差▲4.1ポイント減)と、足下の経営状況が大幅に悪化していることが示された。円安に伴う原材料価格の上昇に加え、消費税率の引き上げが、需要を停滞させ、中小企業経営者のマインドが冷え込んでいるというのが大方の見方なのだろう。

しかしながら、来期(7-9月期)見通しの業況判断DIは▲15.4(今期との差7.8ポイント増)と改善が見込まれている。

さらに、今期の設備投資実施企業割合は17.1%と引続き増加傾向にあるとともに、特に製造業においては、上図の生産設備過不足DIから不足感が示されていることが分かる。これは、受注量に対応しきれていないことを嘆く経営者のマインドの表れであり、主要DIが急激に悪化した今期においても、中小製造業企業の生産活動に大きな滞りは生じていないことを示唆する。

中小企業(製造業)の生産設備過不足DIの推移

2.中小企業経営者の関心事は「これから何をするか」

今期の調査において寄せられた中小企業経営者からのコメントでは、消費税率の引き上げの影響に言及するものが目立つ。その中から、今、どのようなことに中小企業経営者は注視し、強い関心を持っているのかを確認する。

【コメント】

  • 消費税の増税の影響も和らぎ、また円安の一服で商品の価格転稼も進んで収益性が改善する。サンダルは弱いもののスニーカーやスポーツカジュアルが好調に売れている。(靴・履物卸売業 道南・道央)
  • 今回は4月より消費税が3%増税になった事により、3月の駆け込み需要と4月~5月の増減を比較するとほぼ増減なし。ただ消費者の気持ちが一段落してからの消費動向が気になるのと、冷夏の予想も消費にマイナスの影響を及ぼさないか気掛かり。(靴小売業 宮城)
  • 今期は生産設備入れ替えを実施した。量産品への移行を目指しているが、先行きは不透明だ。引き合いは活発になってきているので何とか軌道に乗せられるようにしたい。(機械器具製造業 東京)
  • 消費税の影響が少しあったが、昨年と同様の推移である。消費者のニーズに対応する必要がある。観光客相手にするのか、地元のお客様を優先にするのか、考えている。(洋品雑貨・小間物小売業 愛知)
  • 4月以降の消費税のアップによる落ち込みを心配していたが現在の所順調に推移している。ただ円安による重油価格は高止まりしており、先行きの不透明感はぬぐえない。業況判断は今しばらくかかると考える。(塩干・塩蔵品製造業 高知)
  • 消費税増税前のかけ込み需要が思った以上に多く、3%の差額に対するお客様の反応に驚いた。そこに売上額とは反比例の景気の悪さを感じた。4月、5月と売上額の減少を心配したが、意外と金額よりも技術力で選んでくれた。お客様にきちんと応えられる技術力を高める必要があると痛感している。(普通洗濯業 長崎)

3.見通し:冷静な判断力を持つ中小企業経営者が示す曙光

1994年以降最大の改善局面となった前期とは一転し、消費税率引き上げ直後の今期の主要DIは大幅に悪化しており、中小企業間に広く不安感が広がっていることが示された。しかし、今期に寄せられたコメントからは、今回の消費増税に対する反応として、足元の影響よりも、今後の消費動向・原材料価格を注視しながら、その対応策をしっかりと検討している中小企業経営者の力強い姿が確認できた。

今期の調査結果を踏まえ、中小企業はこれからどのように行動するのだろうか。今期寄せられた経営者のコメントは、その方向性を示してくれているのかもしれない。

文責

ナレッジアソシエイト 平田博紀

関連記事