中小企業の税金と会計

印紙税の概要

最終更新日:2018年3月31日

1.印紙税とは

印紙税とは、日常の経済取引に伴って作成される契約書や領収書など、一定の文書に担税力を見出して課税される税金です。印紙税が課税されるかどうかの判定は、下記の印紙税額一覧表に掲げられている20種類の文書(以下、課税文書)に該当するかどうかにより行われます。

契約書のような文書は、その形式、内容等を自由に作成することができ、その内容には様々なものがあります。よって、印紙税が課税されるかどうかの判定は、その文書の内容として記載されている個々の事項の中に、一つでも印紙税額一覧表に掲げる課税文書に該当する事項が含まれている場合には、その文書は課税文書となります。

印紙税が課される課税文書やその金額は、印紙税額一覧表で確認できますが、その適用方法については、一つの文書ごとに個別に判断するため、多額の取引をしても文書が作成されていなければ印紙税は不要となります。当然、一つの取引につき何通もの課税文書を作成すれば、それぞれの文書に印紙税が必要となります。

また、納品書等で印紙税の課税文書とならないものについても、これら納品書等に「○○円受領した。」などの記載がある場合には、それが金銭の受領書とみなされて課税文書に該当することになります(受領済みというスタンプ等を納品書に押した場合でも課税文書となります)。

なお、不動産譲渡契約書や建設工事請負契約書で平成30年3月31日までの間に作成されたものは、不動産流通の促進という政策的見地から軽減措置が講じられております。

また、平成28年4月1日以後に発生した自然災害等により被害を受けられた方が作成する、不動産譲渡契約書および建設工事請負契約書ならびに消費貸借契約書については、非課税措置が設けられております。
詳しくは国税庁の「自然災害等により被害を受けられた方が作成する契約書等に係る 印紙税の非課税措置について」(PDF)をご覧ください。

印紙税額一覧表

印紙税の納税義務者は、課税文書を作成した者になります。複数の人が文書の作成に携われば、連帯してその納付義務を負うことになります。印紙税は文書を作成した者が、その文書が課税文書に該当するのかどうか、印紙税額がいくらになるのかどうかを判断して印紙を貼付することにより税金を納付することになります。
 

印紙税の納付は、通常、印紙を郵便局・郵便切手類販売所などで購入し、課税文書に貼り付け、印章または署名で消印することにより行われます。課税文書に印紙を貼り忘れてしまった場合においても、その書類自体は有効なものですが、当初に納付すべき印紙税額の3倍に相当する金額の過怠税が徴収されることになります。ただし、税務調査を受ける前に、自主的に印紙税を納付していない旨を申し出たときは、その不納付となっている印紙税額の1.1倍に相当する金額の過怠税が徴収されることになります。また、貼り付けた印紙を所定の方法によって消印しなかった場合には、消印されていない印紙の額面に相当する金額の過怠税が徴収されることになります。

なお、当然の事ですが、過怠税はその全額が法人税の損金および所得税の必要経費に算入されないことになります。

2.記載金額とは

印紙税は、平成26年4月1日以降作成されるものについては、受取金額が5万円未満の領収書は非課税とされていることなど、一定金額未満の少額な取引に係るものは、非課税とされています。
また、請負契約書など文書の種類によっては、記載された契約金額(以下、記載金額)に応じて印紙税額が異なることなど、記載金額をどのように算定するかは非常に重要なことになります。
日常の経済取引には、消費税及び地方消費税(以下、消費税額等)が含まれている取引が多くありますが、消費税額等が区分記載されている場合等で、その取引に係る消費税額等が明らかとされている場合には、「建物売買契約書」などの第1号文書や、「工事請負契約書」などの第2号文書、「領収書」などの第17号文書については、その消費税額等の金額は記載金額に含めないこととされています。

3.誤って納付した場合

印紙税の納付は、印紙税額一覧表に定められている金額の印紙を課税文書に貼り付け、消印することにより行われますが、印紙税の納付が必要がない文書に誤って印紙を貼り付けてしまった場合や、定められた金額以上に印紙を貼り付けてしまった場合には、税務署にてその文書を提示して還付請求の手続きを行うことにより、その過大に納付した金額の還付を受けることができます。

4.収入印紙の交換

金額の異なる印紙を誤って購入してしまった場合など、「印紙をもつてする歳入金納付に関する法律」及び「収入印紙及び自動車重量税印紙の売りさばきに関する省令」に基づき、郵便局において他の印紙に交換する制度が設けられています。
郵便局の窓口において、交換する印紙と交換手数料(交換しようとする収入印紙1枚当たり5円の手数料)を提出して他の印紙と交換する手続が必要です。

収入印紙を現金に交換することはできません。 文書等にはり付けた収入印紙の交換を郵便局に請求するため、その収入印紙の貼り付けが印紙税の納付のためにされたものではないことの確認を受けようとする場合には、「印紙税法第14条不適用確認請求書」と確認を受けようとする文書を、最寄りの所轄税務署長に提出し、確認を受けることになります。

なお、白紙、封筒等に貼り付けたもので、客観的にみて課税文書でないことが明らかな場合には、この税務署長の確認を受けることなく、郵便局で交換することができます。詳しくは、最寄りの郵便局にお尋ねください。

5.領収書の非課税文書

平成26年4月1日以降、5万円以上の領収書には、印紙が必要なことは知られているようですが、営業に関しない領収書は、非課税文書になっていることはあまり知られていないようです。
記載金額が5万円未満の受取書及び営業に関しない受取書は非課税となります。
この場合の「営業」とは、一般通念による営業をいうものであり、おおむね営利を目的として同種の行為を反復継続して行うことをいいます。
したがって、個人である商人の行為や、営利法人の行為は営業となりますが、祭祀、宗教、慈善、学術、技芸などの公益を目的としたいわゆる公益法人は、営利を目的とするものではありませんから、その行為は営業には該当しません。例えば、個人がたまたま不動産を売却した場合の領収書は非課税文書になります。
また、営利法人(会社)にも公益法人にも当たらない私法人(特別法によって法人となることを認められた法人)については、法令の規定や定款の定めによって利益金の配当や剰余金の分配をすることができることとなっている法人が、その出資者以外の者に対して行う事業は営業となります。

以下に領収書の課否判定の具体例を挙げておきます。

  1. 仮領収書
    仮領収書と称するものであっても、それが金銭等の受取事実を証明するために作成されたものであれば、後に本領収書を作成することの有無にかかわらず金銭又は有価証券の受取書に該当します。
  2. ポスレジから打ち出される領収書等
    一般小売店や現金問屋等において使用するPOS システムの端末(いわゆる「ポスレジ」)から打ち出される帳票で、販売代金を受領した際に顧客へ交付するものは、領収書、仕切書、納品書等その名称のいかんにかかわらず、金銭の受取書に該当します。
  3. 商品券等の有価証券による支払を受けた際の領収書
    商品代金の受取に当たり、商品券又はプリペイドカードにより支払を受けた際の領収書は、金銭又は有価証券の受取書に該当します。
  4. クレジットカードによる支払を受けた際の領収書
    クレジットカードにより支払を受けた際の領収書は、信用取引により支払を受けるものですから、クレジットカードによる支払であることが明らかにされているものは金銭の受取書に該当しません。
  5. デビットカードによる支払を受けた際の領収書
    デビットカードにより支払を受けた際に発行する領収書は、金銭の受取書に該当します。なお、デビットカード取扱店が顧客あてに交付する「口座引落確認書」で、単に口座からの引き落とし事実のみを通知するものは、金銭の受取書に該当しません。
  6. 医師、弁護士等の作成する受取書
    医師、歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士、保健師、助産師、看護師、あん摩・マッサージ・指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師、薬剤師及び獣医師等並びに弁護士、弁理士、公認会計士、計理士、司法書士、行政書士、税理士、中小企業診断士、不動産鑑定士、土地家屋調査士、建築士、設計士、海事代理士、技術士、社会保険労務士等が、その業務上作成する受取書は、営業に関しない受取書として取り扱われ、非課税となります。
  7. 医療法人が作成する受取書
    医療法第39条に規定する医療法人は、剰余金の配当をしてはならないこととされており、いかなる者との取引についても営業者とならないため、作成される金銭等の受取書は、営業に関しない受取書に該当し、非課税となります。

    なお、営利法人組織の病院等又は営利法人の経営する病院等が作成する受取書は、営業に関しない受取書には該当せず、非課税文書にはなりません。
  8. 税理士法人などが作成する受取書
    税理士法人などは、法令の定めにより利益金の分配等をすることができるものに該当します。したがって税理士法人が出資者以外の者に交付する受取書は、営業に関しない受取書には該当せず、非課税文書にはなりません。