化学物質情報管理の基礎知識

新たな情報伝達スキーム

新たな情報伝達スキーム

サプライチェーンの川中企業(部品製造)、川上企業(原材料製造)は、川下企業(製品製造)が輸出している場合は間接的に輸出していることになり、また、輸入品を加工して販売することも多く、国内標準だけでなく国際標準化が求められることになります。

複雑なサプライチェーン全体での効率化が求められますので、経済産業省が化学物質規制へのあるべき姿を検討する「化学物質規制と我が国企業のアジア展開に関する研究会」を立ち上げて「製品含有化学物質の情報伝達スキームの在り方」を検討し、2014年3月に「取りまとめ」を公開しています。

情報伝達スキームは「データフォーマット」と「運用」が車の両輪となります。
情報伝達については、「情報伝達スキームが業種横断的に統一され、川中に多い中小企業が複数の川下製品メーカーから個社フォーマットの報告を求められない状況をつくり出すこと自体が、最大の中小企業支援策となる」とまとめています。
データフォーマットは「電気電子製品のデータフォーマットの国際規格である IEC62474 に準拠し、そのXML(コンピュータ言語の1種) スキーマを採用する」としています。

伝達する化学物質の種類も現状では各社各様ですが、「様々な製品分野や最終製品売先国の規制に対応するため、関連する法規制(REACH・RoHSなど)や業界基準(IEC 62474・GADSL など)の対象物質リストの和集合として物質リストを整備する」となっています。

情報伝達でキーとなるのが川中の中小企業の運用です。中小企業への普及・支援策として、次の3つの課題を掲げています。

  1. 現場への指導員の派遣、研修や能力認定、経営者への普及啓発等を検討する。
  2. 小規模・零細事業者や指定部材を加工する下請事業者等に係る情報伝達の在り方、また、一定の能力を有する者による入力代行等の仕組みの是非についても検討する。
  3. 支援対象となる中小企業は多数に上ることから、新スキームの運営組織が直接実施する研修・教材作成などのほか、業界団体・中小企業団体等を通じた支援の仕組みも検討課題となる。

情報伝達スキームの構築は緒についたばかりで、2018年からの運用開始に向けて「責任ある情報伝達」や「対象物質の特定」などの様々な課題への対応が検討されています。

(松浦 徹也)