ビジネスQ&A

新会社法って何ですか?資本金1円でも会社が設立できると聞きました。

会社制度が改正されたと聞きました。どのように変わったのでしょうか?また、中小企業でも活用できる点があれば教えていただきたいのですが。

回答

新会社法とは、商法の抜本改正に伴うもので、株式会社の設立手続きの簡素化やLLCといった新会社形態の誕生、事業承継の円滑化など、中小企業にとっても活用可能な施策が多く盛り込まれています。

新会社法は、小泉改革の中のいわゆる商法改正の一環で、2006年5月に施行されました。50年ぶりとなる大規模な商法改正にはさまざまな項目がありますが、ここでは中小企業の方にとくに関係のありそうな内容についていくつかご説明いたします。

【1円の資本金でも株式会社の設立が可能に】

1円資本金会社とは、旧制度では有限会社は最低300万円、株式会社は最低1,000万円必要とされていた資本金(最低資本金制度)を、1円でもOKとするものです。実は1円資本金会社自体は、従前においても特例制度で設立が可能で、設立後5年以内に資本金を最低資本金まで引き上げるという条件で、会社を設立することが認められておりました(確認会社)。

ただし、厳密には、出資の最低額が1円という意味です。設立時の資本金の額は原則、設立に際し株主となる者が払い込みまたは給付をなした財産の額とされます(会社法445条1項)。しかし、発起人全員の同意があれば、この額から設立費用を控除することができます(会社計算規則43条1項3号)。ただし、資本金が0円であっても、株式の引受人は出資をしており、株式は発行されることになります。

【類似商号規制の廃止】

従前は、会社を設立する際にその会社の商号(会社名)を登記する際に、同一市町村内で同じ営業内容としている会社と同一または類似の商号があれば、新しく設立される会社はその商号を使用することができないと決められていました。そのため、これをチェックするために時間がかかる、という弊害がありましたが、今回の改正でこの類似商号禁止の制度が撤廃され、会社設立の手続きのスピードが向上しました。

ただし、同一住所にて登記する他人の商号と同じ商号は使用することができません。また、不正競争防止法にも注意する必要があります。さらに、インキュベーション施設のように、同一住所に、多数の企業が入居している場合は、同一商号の存在を確認することがポイントとなります。参考までに、「XYZ」、「xyz」、「エックス・ワイ・ゼット」は同一商号ではありません。漢字と仮名も同様です。

【取締役が1人でもOKに】

従前は株式会社を作るためには取締役3人、監査役1人を選任する必要がありました。今回の改正によりこの規制も撤廃され、取締役1人でも株式会社の機関を設計することが可能になりました。これと同時に、取締役が1人でもよくなったことにより、取締役会の設置も任意となりました(すべての株式に譲渡制限を設けている会社の場合)。従来であれば、親族や友人などに頼んで取締役や監査役になってもらっていたケースも多々ありましたが、取締役1人でOKとなったことにより、会社機関の設計の自由度が広がり、より会社を興しやすくなりました。

※会社機関とは、取締役会、株主総会、代表取締役、監査役など、会社の組織や一定の地位にある者のことです。

以上に述べた3つの施策により、株式会社を興すための要件がより緩和されたため、これから新たに会社を興そうとされている方や、子会社などを株式会社で設立しようと考えていらっしゃる中小企業の経営者の方にとっては、活用しやすい制度といえるでしょう。なお、これらの施策の背景には、国としても起業を増加させて、経済を活性化させたいという狙いがあるようです。

【LLC(合同会社)の誕生】

今回の新会社法により、LLCという新しい会社形態が誕生しました。

LLCとは、株式会社と同様に出資者は有限責任(出資額の範囲内に責任を限定できる)でありながら、利益や権限の配分を自由に設定できる、という特徴があります。原則、社員(出資者)全員の一致で会社のあり方を決定し、各社員自らが業務の執行に当たります。資金力のないベンチャーと大手企業の合弁などでの利用、ハイテク分野などでの活用が期待されています。

【事業承継の円滑化】

株式会社は、相続その他の一般承継により当該株式会社の株式(譲渡制限株式に限る)を取得した者に対し、当該株式を当該株式会社に売り渡すことを請求することができる旨を定款で定めることができる(174条)ことになりました。会社が好まない相続人に対して、強制的に株式を買い取ることができることになり、事業の承継が行いやすくなりました。

このほかにも新会社法にはさまざまな改正がありますが、そのなかでとくに中小企業に関係の深い項目として、既存の有限会社の扱いがあります。これについては、経過措置である存続などの内容について、別途詳しい説明をしていますので、下記関連情報をご参照願います。

回答者

中小企業政策研究会(山北浩史加筆)