森山氏がりんご栽培のDXに取り組んだのは、父から経営を引き継ぐ決心をしたのがきっかけだった。「生涯現役で80歳を過ぎても代を渡そうとしなかった。『死んだら相続』という考えだったのかもしれない。しかし、そうは言っていられないので、その前に私が経営を引き継いだ」と森山氏は語る。2015年に経営を引き継ぎ、もりやま園を法人化したのだが、それまでが苦労の連続だった。
「園内に何本の木が植えられていて、どこに何の品種があるのか全く記録がない。 “資産内容”が全く把握できなかった。経営のしようもない状態だった」と森山氏は振り返る。2008年のことだった。大学を卒業して父のりんご園で働いていたのだが、大事なりんご園の状況はすべて父の頭の中。長年の知識と経験に基づいて運営している状態だった。
そこで、森山氏。「まずは、1本1本、園に植えられている木がどんな品種なのか、資産状況を調べることにした」。まだ、スマートフォンも普及していない時代。当然ながら、調べるための適当なソフトウエアも存在していない。木にラベルを張り、PDAという携帯端末を活用して園内を調べて回った。
誰の助けも借りず、たった一人の作業。だが、膨大な本数のりんごの木を一人で調べるには限界があった。毎日の作業の記録も欲しかったが、それにはパートやアルバイトら作業員の助けも必要になる。
もっと効率的にデータを集めようと行動に出たのが、ビジネスアイデアコンテストへの応募だった。2014年、地元の商工会議所が実施したコンテストにソフトウエアの開発を提案。みごと準グランプリを獲得した。その補助金をもとに地元のIT企業に依頼してソフトウエアを開発した。現在、活用しているシステムの原型となるものだ。そのころにはスマホも普及。飛躍的にデータ集めが進み、2016年になってやっと通年の記録を集めることができた。