すそ野が広い建設土木業界では、インフラDXに対する取り組みに温度差がある。
測量を専門業者に外注したり、リースやレンタルなどを活用したりしているケースが少なくないそうだ。これに対して、吉川氏は「3D測量やドローン、ICT建機などはできるだけ自前で賄えるようにしたほうがいい」と強調する。「外注はお金がかかる。そうなると、仕事も差しさわりのない最低限で納めてしまいがちになる。自前で持っていると、自分たちが納得のいく仕事ができる」。
測量機やドローン、建設機械のリース料やオペレーターへの委託料、3Dモデルの作成費用…。「もっと細かい図面が必要になった」となれば、外部に追加で発注しなくてはならない。持ち出しが増え、実入りがどんどん少なくなる。工期のスピードアップにも大きな効果を発揮する。堤防などの河川の工事などは渇水期に工事が集中しやすい。完成後の出来形測量などは、測量会社への発注が集中しやすく、引き渡しが遅れることも少なくないという。自前で対応できれば、こうした不便もなくなる。
金杉建設は3Dスキャナーで測量したデータを解析し、3次元モデルに落とし込む技術を備えているが、小俣氏が「これだけのデータがあるならモデリングをやってみよう」とチャレンジしたのがきっかけだったそうだ。「工事の関係者だけでなく、周辺住民との調整も建設会社の大切な仕事。図面を何枚もみせてもなかなか理解はできないが、3Dでモデリングしたものをみせると、誰もが同じ考えになり、合意形成が取りやすい」と小俣氏は話すが、インフラDX大賞を受賞した工事は、“自前主義”の真価を発揮することができた。
吉川氏は、高い評価を受けた中小型建機のICT化を積極的に進めていく考えだ。ICT施工を武器に他社が敬遠しがちな小規模な土工などが含まれる工事を受注し、収益を獲得していく戦略を立てている。
建設業界は人手不足が深刻化している業種の一つだ。ICTの活用は省力化だけでなく、工事の安全性を高める効果も大きい。自前で取り組み、内製化することでメリットを最大限享受できる。吉川氏は、「恐れずに積極的に投資をしていいと思っている。建設機械は大きな資産。買ってうまくいかなかったら売ることもできる。積極的にチャレンジすることが大事だ」と訴えている。