「田植えから収穫まで月のうち10日以上は生産地に行き草刈りをしています。手間隙をかけ収穫した米を消費者に届ける。喜んでいただける事業にやりがいを感じ、誇りをもち取り組んでいます」と杉原代表は語る。
山燕庵の商品は、甘みが強く香り高い米「コシヒカリアモーレ」が主力。この米をベースに自らの畑で収穫した大豆を使い、深いコクを醸し出す長期自然熟成の「米麹生みそ」や旬の野菜など。
杉原代表がマーケティングリサーチ業から転身した当時は、甘酒が静かなブームを迎えていた頃だった。生産したコシヒカリアモーレの玄米と米糀だけを使い玄米甘酒を開発。酒粕から作る甘酒と異なり、クリーミーな舌触りと優しい甘みが特徴の発酵飲料ができあがった。
「展示会で試飲を勧めると、大半の人が本当に玄米なのかと驚かれますね。多めに商品を用意するのですが完売してしまいます」と、とくに30歳代の女性からの支持を集めているという。
さらに人気があるのが袋カイロの「ぬくぬくのぬか」だ。ぬか、塩、米とハーブを入れた袋を電子レンジで温めるだけ。疲れた肩や目に当てるだけで癒される。暑い夏は冷蔵庫で冷やしても良く、さらに繰り返し使用できる優れもの。
自然の素材を生かしたカイロは、昔から伝えられていたという。「母親のアイデアで米販売店のワークショップで袋詰め作業を行ったら好評だったので2年前に商品化しました」と杉原代表は説明する。デザイナーに依頼しロゴマークも作成し、女性の目を引くパッケージを作り、肩、お腹、目に当てる3タイプにして販売を始めた。
現在、他の商品とのコラボ企画やOEM(相手先ブランドによる生産)の依頼があり、発展性のある商品への道が開けつつある。大手雑貨店での販売なども手掛け、商品認知度は少しずつ高まっている。
商品が増えるにつれ、米の生産量が間に合わなくなり、農産物生産の考え方に共鳴してくれる農家に生産委託し、増える需要に対応している。その考え方とは、農薬、化学肥料に頼らず、土着菌を活用した完熟堆肥を使うこと。
「たまには深呼吸して太陽、土のありがたさ、自然の根幹を感じる。その気持ちで農業生産を行っています」というのが山燕庵のポリシー。「深呼吸農法」と名づけられ、目指す姿は、都会と農村の人々が農業を通じたコミュニティを形成しお互いを永続的に発展させる社会を実現することだと強調する。
多彩な事業展開を目指す山燕庵は、事業目的とする生産者と消費者との「共有の場」づくりをより深化させる活動を積極化する方針。そのために必要なのはIT対応であり、それによる生産性の向上といえよう。当面の課題は手狭になった東京にあるオフィスの移転。これはすでにクリアしたという。