マンガでわかる「経営計画」

経営計画は、「目標」を達成するための「具体的な取り組み」をまとめた計画です。
経営計画には、いろいろな種類があります。たとえば、スタートアップ時の「創業計画」、補助金を申請する時の「補助事業計画」、新事業展開のための「新規事業計画」、都道府県に提出して認定を受ける「経営革新計画」、経営改善や金融支援等を目的とした「収益力改善計画」など。
計画によって重視される項目が違ったり、フォーマットが指定されていたりする場合がありますが、基本要素は「現状把握」「目標設定」「取り組み」の3つで構成されます。

今回のマンガでわかるシリーズでは、「経営計画(事業計画)」の基本的な考え方と、作成にあたって、どんなことに気をつけは良いか、そのポイントについてご説明します。

なぜ、経営計画か必要なのか?

経営計画は、しばしば「地図」や「コンパス」にたとえられます。経営計画書がない経営は「地図のない旅」のようなもので、いま会社が本当に目的地(目標)に近づいているかわかりません。 経営者のなかには「頭の中に経営計画があるからいいよ」と言う人がいます。しかし、「経営計画書」という文章にすることで、頭の中の目標や戦略が整理され、目標達成までのプロセスが明確になります。これが最も大切なことです。 また、頭の中のものを他人に見せることはできません。経営計画という書類にすることで、支援機関や専門家・金融機関からの支援を受けやすくなります。従業員が一つになってワンチームで戦うためにも、経営計画の形でゴールや勝利条件を明確に示すことが必要です。経営計画が経営に欠かせないものであることはこのことからも分かると思います。 このような説得力のある経営計画をつくるためには、「一貫性」「具体性」「実現性」が必要です。

一貫性 現状分析→取り組み→目標達成までのストーリーが一貫していることが大事です。ストーリーに矛盾があると、説得力がなくなってしまいます。
具体性 経営計画では「誰が・いつ・何をすれば良いか」という具体的なアクションを記載します。また、目標もできるだけ具体的なものにします。
実現性 夢のような目標を掲げても、「絵にかいた餅」になってしまいます。現状分析を踏まえつつ、根拠のある実現性の高い計画を作りましょう。

経営計画の作成にあたっては、「一貫性」「具体性」「実現性」を意識するようにしましょう。

STEP1 現状把握

●自社の経営や商品・サービスについて分析する

経営計画づくりは、自社の現状を把握することからスタートします。 商品・サービス別の売上高(利益)・顧客別の売上高(利益)を調べて、「どの商品で儲けているか」「どのお客さまに儲けさせてもらっているか」を把握しましょう。 また、自社の商品・サービスの品質・価格・納期、人材・営業力などについて、競合と比較した時の強み・弱みを把握することも大切です。

●顧客ニーズ、市場動向・競合を調査する

顧客ニーズとは、お客さまが自社の商品・サービスを買う理由です。自社のお客さまが、その商品・サービスを通じて、どのような価値(品質・機能・ブランド…)を手に入れようとしているのかを検証しましょう。 自社の商圏の市場規模、業界全体の市場動向、競合の状況(競合の立地、価格、顧客等)についても把握しましょう。

STEP2 目標設定

●競合分析

現状分析を踏まえながら、経営計画の方針・戦略・事業コンセプト等を決めています。どのような方針・戦略・事業コンセプトにするかは、経営計画の種類によって変わってきますが、「経営ビジョン(会社のめざすべき方向や将来像)」に基づいたものでなくてはなりません。 もしも経営ビジョンが明確でない場合は、この段階で経営ビジョンについて明確にしておきましょう。

方針・事業コンセプト等を検討・整理するためのツール、フレームワークには様々なものがあります。その一つが、「SWOT(スウォット)分析」です。SWOT分析は自社の事業の状況等を、強み(Strengths)、弱み(Weaknesses)、機会(Opportunities)、脅威(Threats)の4つの項目で整理し、分析する手法です。

「アンゾフの成長マトリクス」も事業コンセプトを決める際に役立つフレームワークの一つです。「製品(商品・サービス)」と「市場(顧客・取引先)」の2軸を「既存」と「新規」に分けて、どのような成長戦略をとるのか検討します。

これからの事業のしくみ(ビジネスモデル)を考える時に役立つツールに、「経営デザインシート」があります。「これまでの価値を生み出すしくみ」と「これからの価値を生み出すしくみ」を比較することで、課題や解決策を考えていきます。

●具体的な数値目標を設定する

経営計画には、「具体的な数値目標」が必要です。商品・サービス別、事業別、顧客別などの売上高(利益額)を積み上げて設定すると、説得力が増してきます。
根拠もないのに「売上倍増・利益三倍増」のような目標を設定しても、従業員のモチベーション低下につながります。金融機関等の理解を得ることはできません。自社の経営分析、市場分析などの現状把握を踏まえた目標を設定しましょう。
その一方で、現状の延長線上にある目標では、会社の成長・発展につながりません。現状を踏まえながらも、長期的な目標である「経営ビジョン」、会社のめざす姿に近づくための目標を設定することが大切です。

STEP3 取り組み

●課題解決のためのアクションを決定する

「事業者の「現状」から「目標」に達するために欠かせない、アクション(具体的な行動)について決定します。 アクションの内容は、戦略によって業種業態によって変わります。またアクションの優先順位も、企業によって異なります。自社の課題にあわせて、アクションを決定してください。
たとえば、「採算性」「効率性」「差別化」「定着化」の視点で考えると、課題解決につながるアクションのヒントが見つかるかもしれません。

採算性 商品・顧客の絞り込み、仕入先の変更、価格の見直しなど、商品・製品・サービスの採算性・価格競争力を高めるアクション
効率性 店舗の活用改善、販促の効率化、作業工程の見直し、ITシステムの導入など、作業効率・生産性を高めるアクション
差別化 特色のある店舗づくり、新製品・新技術への取り組み、顧客ニーズに応えたサービスなど、他社との差別化につながるアクション
定着化 顧客の定着化・囲い込み、優秀な人材の育成、5S活動など、改善成果を定着させるためアクション

●アクションを5W1Hでスケジュール化する

アクションを決定したら、「誰が、いつ、何を、どのようにするか」など、5W1Hを明確にし、スケジュールに落とし込みます。
そして、アクションごとに、KPI(評価指標)を決め、四半期・年度のマイルストーン(中間目標)として設定します。

●収支計画・資金計画等に落とし込む

アクションの効果を反映させた目標売上・利益を試算して、会社の収支計画を作成します。また、収支計画で試算した利益に対してキャッシュフローはどうなるか、そこから設備投資の支出や借入金の返済はできるのかを検証し、資金計画を作成します。
この数値計画に基づいて、目標で設定した数値目標が可能であるかを検証し、必要に応じて目標設定を見直します。

経営計画作成の参考になる「支援ツール」について

以上、現状分析→目標設定→取り組みのステップで、経営計画の作成について説明してきましたが、それぞれのステップを完璧に仕上げてから、次のステップに進む必要はありません。各ステップを行きつ戻りつしながら、計画全体をブラッシュアップし、一貫性・具体性・実現性のある計画を作成してください。
といいつつ、経営計画をつくるのは忙しい経営者にとって大変な作業です。ここまでの説明を読んで「ハードルが高いなぁ」と感じる方もいるかもしれません。

そんな方は、経営計画作成アプリ「経営計画つくるくん」で、簡単な経営計画をつくるところから始めてみましょう。選択肢を選んだり、質問に答えたりするだけで、短時間(30分程度)で経営計画をつくることができるアプリです。

もう少し詳細な経営計画を作りたい方には、「起業マニュアル・事業計画書をつくる(中小機構)」が参考になります。起業する人向けに書かれていますが、経営者の方でも十分に使えます。解説も丁寧で、業種ごとの事業計画書の例も掲載されています。

本格的な計画を作りたい方は、支援者向けのマニュアルですが「支援者のための小規模事業者の事業計画づくりサポートブック」が参考になります。小規模事業者と書いてありますが、小規模事業者以外の中小企業でも十分な内容です。支援者の教育用に執筆されているため、経営計画(事業計画)を学ぶテキストとしても最適です。
サポートブックは、「小規模事業者支援ガイドブック(中小機構)」のページから「サポートキット」とともにダウンロードすることができます。

良い経営計画を作るためには、第三者の客観的な視点、専門家の視点が欠かせません。
国が設置した無料の経営相談「よろず支援拠点」や「商工会・商工会議所」などの支援機関では、事業者の経営計画づくりをサポートしています。経営計画について聞きたいこと、知りたいことがあったら、ぜひお気軽に相談してください。