玉谷製麺所の創業は1949年。玉谷氏の夫で代表取締役社長の隆治氏の祖父が周辺の農家からうどんづくりを頼まれて作り始めたのがきっかけだった。「昔、この周辺には小麦畑が広がっていた。近隣の農家が自家製粉した小麦粉を持ち寄って来ていたそう。作ったうどんが評判で、それを生業にする決断をしたと聞いている」と玉谷氏。数年後にはラーメンの麺を製造。隆治氏の父の代に代わると、蕎麦も手掛けるようになった。「月山そば」は会社を代表するブランドだ。
現社長の隆治氏と玉谷氏は岩手大学農学部の先輩と後輩。新潟県の菓子メーカーに勤めていた玉谷氏は遠距離恋愛を実らせ、2001年に隆治氏のもとに嫁いだ。家族で家業を支えていたが、2000年後半になると、茹でずに水を通すだけで食べられる冷凍麺の人気が急上昇。主力だった乾麺、とくに冷麦の売り上げが落ちるようになったという。「日本の麺だけではこれから先厳しい」と、当時社長だった義父がイタリア製のパスタ製造機を購入。これがパスタづくりの大きな足がかりとなった。東日本大震災が起きる2年前のことだった。
黒米を練り込んだマカロニなどパスタマシンを活用した商品開発を進める中、2011年3月11日が訪れる。震災の直接的な被害は大きくなかったものの、その後の風評被害が経営に影響を及ぼすようになった。「国内でも東北のものが敬遠される。まして海外でも日本のものは買いたくないという風潮ができてしまった。ならば、世界から東北で作られたもので、『欲しい』と思うものを作れればいいのではないかと考えた」。山形市にある東北芸術工科大学が県内企業と取り組んだ異業種連携プロジェクトに参画。そこで開発にチャレンジしたのが「雪結晶パスタ」だった。
「いままでにない麺で、ストーリー性があって、山形を象徴するものはできないか」と思いをめぐらせる中、「西川町は夏スキーができるほど雪とともにある場所。生活には大変なものだが美しい。美しくて、おいしいと世界のお客様に言ってもらえる」と雪に着目。2013年にチャレンジが始まった。