市場調査データ

居酒屋(2024年版)

2024年 5月 31日

コロナ禍による影響が大きかった飲食業の中でも、最もダメージを受けたと言われるのが居酒屋だ。そもそも飲酒習慣の変化などにより市場規模が減少傾向にあった中、2020年以降のコロナ禍が追い討ちをかけた。新型コロナの5類移行後も客足の戻りは鈍く、人手不足や物価高などの影響もあり、依然として厳しい状況が続いているという。一般消費者は今、居酒屋に対してどんな認識を持っているのか。20代以上の男女1,000人に聞いた。

1. 現在の利用状況

〈図a〉居酒屋の利用状況(n=1,000)
〈図a〉居酒屋の利用状況(n=1,000)

居酒屋の利用状況に関して、現在のユーザー(年に数回程度以上は利用するユーザー)は61.9%となった。最多は「年に数回程度」の43.8%だが、月に1回程度以上利用する定期ユーザーも18.1%と決して少なくない数字となっている。

ちなみに、当サイトで過去に居酒屋に関するアンケートを行ったのは、コロナ以前となる2017年。当時と今回とではアンケートの対象はもちろん、手法や設計も異なるため、あくまで参考としての数値にしかならないが、当時の利用率は41%で、非ユーザーは59%だった。

2. 利用の基準

〈図b〉居酒屋の利用判断の基準(n=1,000)
〈図b〉居酒屋の利用判断の基準(n=1,000)

居酒屋を選ぶ際に最も重視するポイントを聞いた設問において、最多は「提供メニューのおいしさや豊富さ」の39.5%。次に「低価格、お得感」の24.9%、「生活圏内からの距離」の17.6%が続いた。そのほかの選択肢は1.8%〜6.0%と少数であることを踏まえると、居酒屋のビジネスにおいては「メニューの味と種類」「価格」「立地」といった3点を押さえることが必要と言えそうだ。

3. 利用にかける費用

〈図c〉居酒屋1回の利用にかける費用(n=1,000)
〈図c〉居酒屋1回の利用にかける費用(n=1,000)

居酒屋1回の利用にかける費用感について、最多は「3,000円〜5,000円未満」の44.9%。次に「2,000円〜3,000円未満」の26.3%が続いたが、1回の利用に5,000円以上かけるユーザーも合わせて13.2%と一定の割合を占めた。割安感を打ち出すか、あるいは高級路線でいくかは、店のコンセプトを設計する上で重要なポイントとなりそうだ。

4. コロナ禍の影響

〈図d〉コロナ禍が居酒屋の利用に与えた影響(n=1,000)
〈図d〉コロナ禍が居酒屋の利用に与えた影響(n=1,000)

コロナ禍が居酒屋の利用に与えた影響に関しては、「利用頻度が減った」が51.5%と過半数に及んだ。「影響はあったが、また元に戻った」の13.2%を含めると64.7%。この数字を見ただけでもコロナ禍が居酒屋に与えたダメージの大きさと、その影響がまだ終わってはいないことをうかがい知ることができる。実際、記述式回答欄で「コロナ禍で家飲みに慣れてしまい、外に出るのが面倒になった」という意見は多数届いており、こうした人を再び店に呼び込むための仕掛けや工夫を考える必要はあるのかもしれない。

5. 今後の利用意向

〈図e〉居酒屋の今後の利用意向(n=1,000)
〈図e〉居酒屋の今後の利用意向(n=1,000)

居酒屋の今後の利用について、積極的利用意向を持つ人は合わせて60.4%で、現ユーザーの61.9%とほぼ変わらない結果となった。利用に消極的な人の割合は15.1%となり、これは現非ユーザーの38.1%を大きく下回っている。この差分の多くが選択したと思われる「どちらとも言えない」の24.5%の記述式回答欄で目立ったのは、前述した「家飲みが習慣化した」という意見に加え、「コロナが明けたので利用したいが、この物価高の中で利用するのは気が引ける」といった声。新型コロナの扱いが変わるやいなや襲ってきた物価高という社会情勢の中で、コロナ禍で身についた節約につながる生活習慣を変えるといったことに対しては、まだまだ抵抗が強いようだ。

6. 性別・年齢別の今後の利用意向

〈図f〉性別・年齢別の今後の利用意向(n=1,000)
〈図f〉性別・年齢別の今後の利用意向(n=1,000)

居酒屋の今後の利用意向について、性別・年齢別の割合を捉えた〈図f〉を見ると、60代以上を除き、各年代で男性よりも女性の方がやや利用に積極的であることがわかった。また、利用に消極的な割合は、同じく60代以上を除き各年代で女性の方が低い結果となった。つまり、60代以上を除くと、若干ではあるものの、全体的に女性の方が居酒屋の利用に前向きということになる。

7. まとめ(ビジネス領域としての居酒屋)

昨今の倒産件数などをまとめた各種の調査結果などを見る限り、居酒屋ビジネスの未来に明るい見通しをもつことはなかなか難しいが、今回のアンケートはそうした状況とは一線を画す結果になったと言えそうだ。利用率は61.9%に及び、今後の利用に積極的な層に「どちらとも言えない」を加えたいわゆるターゲット層は84.9%に達した。

ただし、コロナ禍によって減少した利用頻度がまだ戻っていないのは、本アンケートの結果にも表れている。単純にユーザー数やターゲット層の大きさだけで、居酒屋ビジネスに商機を見出すというのは、ややリスキーと言えるかもしれない。

記述式回答欄に寄せられた回答のうち、利用に積極的な層からは「友人や家族とワイワイする特別感が好き」「家では準備や片付けの手間がかかる」「家ではなかなか作れないようなおいしいものが食べられる」「お酒は飲めなくても雰囲気を楽しみたい」「一種のコミュニケーションツール。情報交換の場」「コロナも落ち着いたので久しぶりに友達と会いたい」「ランチで利用する」「無性に居酒屋メニューが食べたくなる時がある」「子連れで利用しやすい居酒屋があれば行きたい」などといった声が上がった。

一方で、今後の利用に慎重・消極的な層からは「そもそもお酒が飲めないために行かない」という人が一定数いるほかに、「割高感がある」「家飲みに慣れてしまった」「密集しているので、コロナやインフルエンザなどの感染症が心配」「不衛生」「やかましいイメージ」「車通勤なので」「近くにいい店がない」「外だといい感じに酔えない」などの声が寄せられた。

こうしたユーザーニーズに応えつつ、繰り返しになるが「味」「価格」「立地」といった3点を押さえた上で、一度離れた人に戻ってきてもらう、あるいは元の利用頻度に戻してもらうための仕掛けや工夫について考えてみる。そのような視点を持つことが、ビジネスを切り開くための糸口になるかもしれない。

(本シリーズのレポートは作成時時点における情報を基にした一般的な内容になっています。個別の施策等を検討される際には、別途、専門家に相談されることをお勧めします)

調査概要

調査期間:

2023年11月16日〜11月18日

調査対象:

国内在住の20代男女、30代男女、40代男女、50代男女、60代以上男女。サンプル数(n)1,000人

調査方法:

インターネットによるアンケート調査

最終内容確認2024年5月

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