市場調査データ
焼肉店(2025年版)
2025年 4月 18日
コロナ禍を乗り越えて、焼肉店が再びにぎわいを見せ始めている。(一社)日本フードサービス協会が行っている外食産業市場動向調査によれば、焼き肉ファミリーレストランはコロナ禍の影響を大きく受けたものの急速に回復し、2023年には売上高、店舗数ともに2019年の水準を上回った。現在の焼肉店の利用状況や利用意向を探るべく、20代以上の男女1,000人を対象にアンケート調査を実施した。
1. 現在の利用状況

現在の焼肉店の利用状況をたずねたところ、「年に数回程度の利用頻度だ」が567人(56.7%)で最多回答となった。「月に1回程度」から「ほぼ毎日」利用している高頻度のユーザーは192人(19.2%)となった。反対に「かつて利用したことがある」と「まだ一度も利用したことがない」を合わせた非ユーザーは241人(24.1%)であった。
2. 性別・年齢別に見た利用状況の内訳

焼肉店の利用状況を性別・年齢別に示したのが〈図b〉である。「年に数回程度の利用頻度だ」と回答した割合は、男女間、年代間でほとんど差がない。日常的に利用するよりも、特別な機会に利用するというのが多数派のようだ。一方で、「月に1回程度以上」利用しているユーザーは、ほとんどの年代で男性の方が多い結果となった。高頻度で利用するユーザーは若年層に多く、年齢が上がるにつれて少なくなるのは、男女ともに見られる傾向である。
3. 利用の基準(現ユーザーおよび利用経験者)

現在、焼肉店を利用している、または利用したことがあると回答した958人を対象に、焼肉店を選ぶ際に重視するポイントを聞いた。最も多い回答となったのが「提供メニューのおいしさや豊富さ」の424人(44.3%)だった。次点の「低価格、お得感」の281人(29.3%)と、その次の「家や職場、最寄駅といった生活圏内からの距離」の155人(16.2%)を合わせると436人(45.5%)。料理のおいしさや豊富さで選ぶ人と、価格や利便性を重視する人が同程度という結果になった。
4. 性別・年齢別に見た利用の基準の内訳(現ユーザーおよび利用経験者)

焼肉店を選ぶ際のポイントを、性別・年齢別に示したのが〈図d〉である。「提供メニューのおいしさや豊富さ」がほとんどの年代で最も重視されており、特に40代と50代の女性で大きな割合を占める。一方で、「低価格、お得感」を重視するのは女性よりも男性が多く、特に30代や40代の男性が重視する傾向にある。また、「提供スピード、手軽さ」や「大手チェーンのブランド力や安心感」は全年齢層で比較的低い傾向にあり、焼肉店ではこれらの要素よりも味や価格が重視されることが分かる。
5. 利用にかける費用(現ユーザーおよび利用経験者)

焼肉店1回の利用にかける費用を聞いたところ、最も多かった回答は「3,000円~5,000円未満」の314人(32.8%)で、次が「5,000円~1万円未満」の225人(23.5%)、さらに「2,000円~3,000円未満」の186人(19.4%)が続いた。「1万円以上」の高額を利用するユーザーも100人(10.4%)となり、低価格から高級路線まで、幅広いニーズがあることが見て取れる。
6. 性別・年齢別に見た利用にかける費用の内訳(現ユーザーおよび利用経験者)

焼肉店1回の利用にかける金額を性別・年齢別に見たのが〈図f〉である。男性は総じて「1,000円~2,000円未満」および「2,000円~3,000円未満」の割合が高く、手頃な価格で利用している傾向がある。一方、女性は「5,000円以上」利用している割合が全年代で男性より高い。食事の量や飲酒率からすると男性の方が高くなりそうなものだが、多少高額になってもおいしいものを食べたいと考えるのは女性の方が多いようだ。
7. 利用する理由(現ユーザーおよび利用経験者)

焼肉店を利用する理由をたずねたところ、圧倒的に多かったのは「おいしい肉が食べたいため」という回答で、その数は612人(63.9%)に上った。それに続くのが「少人数、大人数いずれでも利用しやすいため」の118人(12.3%)、そして「気軽に利用できるため」の90人(9.4%)となった。利用しやすさ、使いやすさという点で選ぶ人も2割程度いる結果となった。
8. 性別・年齢別に見た利用する理由(現ユーザーおよび利用経験者)

焼肉店を利用する理由を性別・年齢別に見ると、「おいしい肉が食べたいため」は男女ともにどの年代でも最大で、年齢が上がるにつれてその割合が若干高まる傾向がある。店の使い勝手の面で見ると、「気軽に利用できるため」は全世代でほぼ一定の割合だが、「少人数、大人数いずれでも利用しやすいため」の回答は、20代女性と60代以上女性に多い。意外なのが「料理のボリュームがちょうどよいため」という回答が男性に多く見られたこと。多彩なメニューから食べる量を調整できる点が支持されているのかもしれない。
9. 今後の利用意向

アンケートの全対象者1,000人に今後の利用意向をたずねた。最多回答となった「ぜひ利用したい」の512人(51.2%)と「どちらかと言えば利用したい」の318人(31.8%)を合わせると、8割以上(83.0%)を占める。反対に「あまり利用したくない」と「全く利用したくない」を合わせても58人(5.8%)。大多数の人が今後も利用意向があるという結果になった。
10. 性別・年齢別の今後の利用意向

今後の利用意向を性別・年齢別のグラフで示したのが〈図j〉である。「ぜひ利用したい」と答えた割合は女性の方が多く、「どちらかと言えば利用したい」を合わせた利用意向のある割合も女性の方が多かった。男女ともに年齢が上がると利用意向が下がる傾向がある。記述式の自由回答を見ると、「昔ほど肉が食べられなくなった」というコメントも見られ、年齢による嗜好の変化が影響しているものと思われる。
11. まとめ(ビジネス領域としての焼肉店)
当サイトでは、焼肉店に関する同様のアンケート調査を2010年にも実施した。その結果は次の通り。焼肉店を「よく利用している」と「たまに利用している」を合わせた利用率は66%、1回の利用金額のボリュームゾーンは「2,000円~3,000円未満」、今後も「ぜひ利用したい」と「まあ利用したい(どちらかといえば利用したい)」を合わせた比率は66%だった。それが今回の調査では、利用率が75.9%に上がり、利用金額は「3,000円~5,000円未満」に上昇、さらに今後の利用意向がある割合も83.0%へとアップした。焼肉人気が一層高まっていることを示す結果となった。
今回のアンケート調査で特に興味深いのが、女性の回答である。利用率は男性よりやや低いものの、1回の利用で「5,000円以上」をかける割合が男性よりも多い。さらに、今後も「ぜひ利用したい」と答えた割合も男性を上回る。その女性たちが求めるのは、何よりもおいしい料理であり、人数にかかわらず利用できる使い勝手の良さである。開業を予定している地域にはどんな女性が多いのか、その女性たちが利用するのはどんな店か、といった視点も事業計画を練る際に忘れずに持っておきたい。
(本シリーズのレポートは作成時時点における情報を基にした一般的な内容になっています。個別の施策等を検討される際には、別途、専門家に相談されることをお勧めします)
調査概要
- 調査期間:
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2024年12月14日~12月30日
- 調査対象:
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国内在住の20代男女、30代男女、40代男女、50代男女、60代以上男女。
サンプル数(n)1,000人
- 調査方法:
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インターネットによるアンケート調査
最終内容確認日2025年4月