市場調査データ
家事代行(2022年版)
2022年 9月 28日
共働き世帯や高齢者世帯の増加などを背景に、年々利用者を増やしてきた家事代行系サービス。また昨今のコロナ禍によって各家庭での育児や家事の負担が増したことで、近年さらにユーザーの裾野が広がっているという。そんな家事代行の現在の利用実態や今後の利用意向について、20代〜60代までの男女1000人に聞いた。
1. 現在の利用状況
「現在の利用状況」〈図a〉を見ると、「まだ一度も利用したことがない」が946人(94.6%)とほとんどを占めた。ちなみに、当サイトで2019年6月に実施したアンケート調査では、「利用したことがない」が96%。少なくとも今回の調査結果を見る限り、約3年前と比べて利用状況に大きな変化はないことがわかった。利用しない理由として、記述式自由回答欄において多くの人が指摘したのが「自分でできる」「必要性を感じない」という点。また「高額なイメージがある」「他人を家に入れたくない」などの意見も多かった。
2. 利用分野
どんな家事代行サービスを利用しているかを聞いた設問において、「利用したことがない」(929人)を除いた中で最多となったのは、「室内の掃除や食器洗いなどの清掃関連」の34人(3.4%)。記述式自由回答では、「エアコン清掃など自分達ではできない掃除を頼みたい」「手の行き届かないところをプロに掃除してもらえると助かる」などの声があり、日常の清掃のアウトソーシング化ではなく、清掃に高度な専門性を求めている人の利用が多いようだ。続いて「子どもの送り迎えなどの育児関連」が10人、「料理の作り置きなどの調理関連」が9人となった。
3. コロナ禍の影響
コロナ禍が家事代行サービスの利用に与えた影響に関しては、「必要性を感じることも影響もなかった」が最多の782人(78.2%)。ただ、「初めて利用するきっかけになった」(15人)、「利用頻度が増えた」(5人)も少数ながらおり、「必要性は感じたが、結局利用に影響はなかった」という92人と合わせ、コロナ禍に家事代行の利用の前向きな変化あるいは検討をした層が全体の1割強はいたようだ。「急な学級閉鎖も多くなり、利用を検討した」など、コロナ禍という時代背景が色濃く表れた声も寄せられた。一方、「むしろ利用が減った」という106人からは、「コロナ禍に家族ではない人を家に入れたくない」「コロナの心配がなくなったらまた利用したい」などの声も挙がった。
4. 家事代行サービスの利用にかける費用
家事代行サービス1回の利用にかける費用を聞いた設問では、「利用がないため0円」を除き最多となったのが「3000円未満」の40人で、次に「5000円〜1万円」の38人、「3000円〜5000円」の24人と続いた。記述式自由回答欄では、「自分でできることをなぜ高額な費用をかけてまで誰かにお願いするのか」といった文脈の意見が多いため、事業化を見据えた場合、価格に対する提供価値をいかに理解してもらうかが大きなポイントになりそうだ。
5. 今後の利用意向
今後の利用意向に関しても、「ぜひ利用したい」(32人)と「どちらかと言えば利用したい」(134人)という利用に積極的な人の合計は166人(16.6%)にとどまり、「あまり利用したくない」(158人)と「全く利用したくない」(381人)という利用に消極的な意見の合計539人(53.9%)を大きく下回った。ただし、約3年前の前回調査時は、利用に積極的な人が10%、消極的な人が62%だったため、ここに若干、利用に積極的な層の拡大傾向が見てとれる。また今回、「どちらとも言えない」を選択した295人からは「必要性を感じたら利用したい」という声も少なからず挙がっており、今後の利用意向をもつ166人にこの295人を足した461人(46.1%)は、少なくともビジネスのターゲットになり得ると考えていいだろう。
6. 性別・年齢別の今後の利用意向
性別・年齢別の今後の利用意向を見てみると、「ぜひ利用したい」「どちらかと言えば利用したい」を合わせた割合が最も多かったのは30代女性。続いて20代女性、40代女性の順となった。利用したい理由として、前述した以外では「自分の時間を作るため」「共働きで家事が回らない」「ワンオペ育児で大変」などの声が挙がった。男性の中で今後の利用意向の割合が比較的高かったのは30代と20代。記述式自由回答では、将来の介護を見据えている人の声が目立った。一方で「全く利用したくない」「あまり利用したくない」の合計割合が最も高かったのは30代男性で、その後には男性の各世代が続いた。この結果から、どちらかと言えば男性の方が家事代行サービスの利用に後ろ向きな考えを持っているようだ。
7. まとめ(ビジネス領域としての家事代行サービス)
今回のアンケート結果を見る限り、家事代行サービスは一般消費者にとって、まだまだ身近なサービスにはなっていないといえるだろう。3年前の調査時と比べ、今後の利用への意識が積極的な方向に少々傾いている点は見てとれたが、それがまだ実際の利用にはつながっていない状況だ。家事代行サービスの利用を後押ししたとされるコロナ禍も、本調査においては利用増の顕著な変化を認めるには至らなかった。ただし、多くのユーザーがすでに存在している成熟した市場がビジネスの成功に欠かせないかといえば、必ずしもそうとは限らない。特に、個人あるいは小規模で事業をスタートさせる場合、大勢の不特定多数のユーザーがいることよりも、自社のサービスの価値を認めてくれる特定のユーザーを見つけられるかが事業継続のポイントになるだろう。また、本調査の記述式自由回答でも見られたように、「お金をかけて時間を作る」ことに対するユーザーの価値観が変われば、一気にビジネスの流れが変わる可能性もある。いずれにせよ、自分あるいは自社が何を提供できるか、あるいは何を提供したいかなどを考えた上で、その提供価値に対するニーズを調査するといったことなどは、事業化の初期段階で最低限クリアしておくべき課題の一つといえそうだ。
(本シリーズのレポートは作成時時点における情報を基にした一般的な内容になっています。個別の施策等を検討される際には、別途、専門家に相談されることをお勧めします)
調査概要
- 調査期間:
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2022年6月24日〜6月27日
- 調査対象:
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国内在住の20代男女、30代男女、40代男女、50代男女、60代以上男女。
サンプル数(n)1000人
- 調査方法:
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インターネットによるアンケート調査
最終内容確認日2022年9月