省エネQ&A

実運転でのボイラー熱効率を求める方法を教えてください。

回答

実運転でのボイラー熱効率は、(1)排ガスが持去る熱量と(2)ボイラー壁からの放散熱量に加え、(3)缶体中へのスケール分の堆積防止のためのブロー操作や(4)低負荷時のバーナの消火に起因するパージ損失などの熱損失を考慮する必要があります。

「熱損失側からボイラー熱効率を求める方法を教えてください。」で回答した通り、ボイラーの実運転でのボイラー熱効率は、A8での熱損失(1)と(2)に加え、(3)缶体中へのスケール分の堆積防止のためのブロー操作や(4)低負荷時のバーナの消火に起因するパージ損失などの熱損失を考慮する必要があります。

(3)には、運転中に実施する連続ブロー操作と停止時に行う間欠(缶底)ブロー操作とがあります。

連続ブロー操作は中容量以上または連続で運転しているボイラーで、間欠ブロー操作は小型貫流ボイラーや炉筒煙管ボイラーなど小容量のボイラーで実施されています。いずれも、ブローに伴う熱損失は、【(ブロー水量)×(ブロー水の比エンタルピー-給水の比エンタルピー)】で表されます。ブロー水量は計測されていることが多く、また、ブロー水の比エンタルピーはブロー水からの熱回収を行っていない場合は飽和水の比エンタルピーとみなすことができます。

通常、ボイラー給水量に対するブロー水量の比率(ブローダウン比)は5~10%程度であることから、ブローダウン比を7.5%と想定すると、ボイラー給水量1kgに対し0.925kgは蒸気に0.075kgはブロー水として排出されることとなります。また、JIS B8222の測定条件である蒸気圧力0.49MPaのときの飽和蒸気の比エンタルピーは2747.2kJ/kg、飽和水の比エンタルピーは636.9kJ/kg、ボイラー給水温度15℃の比エンタルピーは62.8kJ/kgです。したがって、ボイラー給水量1kgに対するブローダウンによる損失は43.1kJ[=0.075×(636.9-62.8)]で、ボイラー熱効率が90%のときの燃焼量に対するブローダウンによる損失の割合は1.6%[=43.1÷{0.925×(2747.2-62.8)÷0.9}×100]と求められます。

次に(4)です。中・小型のボイラーではバーナの点火と消火を繰り返すことで蒸気量を制御しています。安全対策面から点火と消火を繰り返す度に炉内をパージ(送気)して未燃ガスを掃気しています。その結果、パージ時には常温の空気がボイラー内を通過し熱を奪うために熱損失が発生します。パージ損失は点火回数に比例するため、連続燃焼が行えるように蒸気の使用方法を見直し、ボイラーの運転時間をできるだけ短くし集中して蒸気を使用するような対策は有効な対策です。一方、もっとも良く使用される50%前後の負荷範囲(注1)で連続燃焼制御を採用したり、消火する代わりにパイロット燃焼を行うなどの対策がボイラーメーカで立案、実施されています。

点火と消火を繰り返す時、消火時には(1)がゼロになるのに対し、(2)は缶体に蓄熱があるため継続したままです。

以上から、排ガス損失法により実運転でのボイラー熱効率を求めるには、下表のとおり、点火時と消火時に分けて考える必要があります。

 

点火時

消火時

点消火合計

備考

燃焼時間率(1)

X

1-X

1

 

入熱:Qf

X×Qf

0

X×Qf

Qf:燃焼量

排ガス損失:Lg

X×Qf×Lg

0

X×Qf×Lg

Lg:入熱に対する比率

放熱損失:Lr

X×Qf×Lr

(1-X)×Qf×Lr

Qf×Lr

Lr:入熱に対する比率

ブロー損失:Lb(2)

X×Qf×Lb

0

X×Qf×Lb

Lb:入熱に対する比率

パージ損失:Lp(3)

0

(1-X)×Qf×Lp

(1-X)×Qf×Lp

Lp:入熱に対する比率

補足説明:
  1. 燃焼時間率は点火率と呼ばれることもあります。
  2. ブロー操作はボイラー運転に対応し実施されるため、点火時に記載しています。
  3. パージ操作は着火回数に比例し燃焼時間率とは本来関係しませんが、「燃焼時間率が大きいときは燃焼が 継続し着火回数は少なくなる」との関係が成り立つとの仮定の下に表示しています(注2)。

上表から、点消火を考慮したボイラーの熱効率は下記の通り表されます。

ボイラー効率 =(入熱-出熱)÷入熱×100={X×Qf—X×Qf×Lg—Qf×Lr—X×Qf×Lb—(1-X)×Qf×Lp}÷(X×Qf)×100

=[1-{(Lg+Lb)+Lr÷X+Lp× (1-X)÷X}]×100

上記式の関係をグラフで表すと下図の通りとなります。
(下図のLri、Lroは上表のLr、Lpに、下図の「排ガス熱損失」は上表のLgに置き換えられます。また上表のLbは下表では考慮外です。)

ボイラの間欠運転による運用効率低下の例 ボイラの間欠運転による運用効率低下の例

注1:下図の青線はボイラー負荷と熱効率の測定結果の一例です(出典:IHI 技報 Vol.52 No.4 41-45)。100%の定格負荷から45%程度までは見かけ上の伝熱面積が増えることによりボイラー熱効率は増加し、その後は缶体の放熱損失が増加することにより急激にボイラー熱効率が低下します。この傾向はすべてのボイラーに当てはまります。したがって、50%前後の負荷範囲で運用することは省エネに適っていますし、あまりに低負荷でボイラーを運用することはエネルギーの浪費に直結します。なお、右図の赤線はボイラー給水温度により変化(給水温度が高いと潜熱回収ができなくなる)します。

注2:「燃焼時間率が大きいときは燃焼が継続し、着火回数は少なくなる」との仮定が成立しないケースが数多くあり、パージ損失Lpとブロー損失Lbを考慮せずに[ボイラー効率={1-(Lg+Lr÷X)}×100]として、省エネ効果を算出することの方がむしろ一般的です。また、[ボイラー効率={1-(Lg+Lr÷X)}×100]として省エネ効果を算出する方が削減量が小さく評価されます。

ボイラ効率 ボイラ効率
回答者

技術士(衛生工学) 加治 均