省エネQ&A

フロン排出法と省エネの関係性は?

回答

略称「フロン排出法」が2015年4月から施行され、製造から廃棄までのライフサイクル全体を包括する対策を求めています。そして、ノンフロン・低GWP製品への転換に向け、安全面、省エネ面、コスト面でより優れた製品の技術開発及び安全性評価等が国の支援の下、活発に行われています。

空調機や冷蔵庫等で冷媒として使用されている代替フロン(HFC)の排出規制を強化した「フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律(略称:フロン排出抑制法)」が2015年4月から施行されています。

代替フロンは、1987年、オゾン層破壊の深刻化を受けて採択されたモントリオール議定書で特定フロンの段階的廃止が決まったことを受け、急速に普及しました。ところが、代替フロンはCO2に比べ、なお大きな温室効果(CO2の温室効果を1とするGWPで評価、数値が大きいほど大きな影響を及ぼします)があり、1997年採択の京都議定書で規制対象となりました(下図:出典は、「平成26年度 東京都公害防止管理者定期講習」東京都環境局編)。

フロン類の種類と環境影響 フロン類の種類と環境影響

我が国では、2002年に「フロン回収・破壊法」を制定し、業務用の冷蔵庫やエアコンなどの所有者に廃棄の際のガス回収・破壊を義務づけました。しかし、代替フロンは増加傾向にあり、対策を取らなければ2020年には現在の2倍以上の約5,000万トンにまで増えると試算されています(下図:出典は、「平成26年度 東京都公害防止管理者定期講習」東京都環境局編)。

HFCの排出量推移(1995年~2020年) HFCの排出量推移(1995年~2020年)

フロン排出抑制法の施行はこうした実態を受けたもので、

  • 管理者(ユーザー)には、定期点検の実施、漏えい量の報告等
  • 充填回収業者には、充填業の登録制導入、破壊等の証明
  • 破壊・再生業者には、再生業者の設置、破壊・再生の各証明書
  • フロンガスメーカーには、フロン類の転換等により製造量削減
  • 製品メーカーには、ノンフロン・低GWP製品への転換

により、製造から廃棄までのライフサイクル全体を包括する対策を実施します。

例えば、ビルや工場での空調には、通常、業務用空調機が使用されているため、その所有者は管理者として、3か月に一度の簡易点検が義務づけられることになりました。加えて、一定規模以上の業務用冷凍空調機器については簡易点検に加え専門業者に依頼しての定期点検も必要となります。簡易点検の結果は記録簿として保管する必要がありますが、記録簿は東京都環境局等が例示しているため、参考とすることをお奨めします。

指定製品7区分ごとの使用冷媒及びGWP、環境影響度の目標値、目標年度 指定製品7区分ごとの使用冷媒及びGWP、環境影響度の目標値、目標年度

また、ノンフロン・低GWP製品への転換については、上表の7区分について(出典は「フロン排出抑制法の概要 2014年度」済産業省と環境省の共編)製品の技術開発及び安全性評価等が国の支援の下、活発に行われています。自動車用エアコンディショナーや冷凍冷蔵ユニット用については目標をクリアした商品が開発・商品化されていますが、従来品に比べ高価です。一方、家庭用や店舗・オフィス用エアコンディショナーについては安全面、省エネ面、コスト面でより優れた製品の登場が待たれます。

回答者

技術士(衛生工学) 加治 均