省エネQ&A

水銀に関する水俣条約により工場の水銀ランプが使えなくなる?<高圧水銀ランプの代替品(1)セラミックメタルハライドランプ>

回答

水俣条約により、高圧水銀ランプなどのランプの製造、輸出及び輸入が2020年以降禁止となります。高圧水銀ランプに代わる省エネ型高天井用照明器具としてのラミックメタルハライドランプは、比較的安価で、既設の水銀ランプやメタルハライドランプの安定器をそのままに、ランプ交換だけで済む製品も販売されています。

水銀に関する水俣条約(以下、水俣条約と呼びます)は、水銀および水銀化合物による汚染、健康被害や環境被害を防ぐため、国際的観点による水銀管理を目指した条約で2013年に採択、92か国が署名しました。発効は50ヶ国目が批准してから90日後とされており、その時期は2016年ごろと予想されています。

水俣条約では、水銀を使用する製品も規制対象となっており、次に該当するランプの製造、輸出及び輸入が2020年以降禁止となりますのでご注意ください(出典:「水銀に関する条約の制定について」 日本電球工業会)。

(1)30W以下の一般照明用コンパクト蛍光ランプ(CFL)で、水銀封入量が5mgを超えるもの

*コンパクト蛍光ランプには電球形蛍光ランプも含みます。

(2)一般照明用直管蛍光ランプ(LFL)で、

  1. 60W未満の3波長蛍光体を使用したもので、水銀封入量が5mgを超えるもの
  2. 40W以下のカルシウムハロ蛍光体を使用したもので、水銀封入量が10mgを超えるもの

(3)一般照明用の高圧水銀ランプ(HPMV)

*メタルハライドランプや高圧ナトリウムランプなどは含みません。

(4)電子ディスプレイ用冷陰極蛍光ランプ(CCFL及びEEFL)で、

  1. 長さが500mm以下の小サイズのもので、水銀封入量が3.5mgを超えるもの
  2. 長さが500mmを超え1,500mm以下の中サイズのもので、水銀封入量が5mgを超えるもの
  3. 長さが1,500mmを超える大サイズのもので、水銀封入量が13mgを超えるもの

ここで、上記(3)の高圧水銀ランプに関しては高天井用照明として数多く使用された歴史から、多くの工場や事務所で喫緊の対応が迫られています。そこで今回から、高圧水銀ランプに代わる省エネ型高天井用照明器具について、3回(セラミックメタルハライドランプ、無電極ランプ、LEDランプ)に分けて解説いたします。

セラミックメタルハライドランプ(H190形)と水銀灯の特性比較 セラミックメタルハライドランプ(H190形)と水銀灯の特性比較

セラミックメタルハライドランプは、金属原子高圧蒸気中のアーク放電が光源であり、水銀のほかにナトリウムやスカンジウムなどの金属ハロゲン化物 (メタルハライド)が発光物質です。従来のメタルハライドランプとの違いは発光管の材質が石英製の代わりにセラミック製となっている点です。セラミック製とすることで、発光管内部の封入物質との反応が少なくなり、温度が高められる分ランプ効率が高く(約53%省エネ)、また、劣化を抑えられる分寿命(水銀灯の約1.5倍)も延長されています(上表:出典はパナソニック(株)技術資料)。

セラミックメタルハライドランプは比較的安価で、既設の水銀ランプやメタルハライドランプの安定器をそのままに、ランプ交換だけで済む製品も販売されています。ただし、セラミックハライドランプには、下表のとおり水銀が封入されています。処理にあたっては産業廃棄物扱いとなるため、各種法規制への対応等に関する注意が必要です。(出典:「一般照明用HIDランプ及び使用済みHIDランプに関するQ&A」 日本照明工業会)。

回答者

技術士(衛生工学) 加治 均