省エネQ&A

省エネ視点でのクランクケースヒーターの活用方法は?

回答

クランクケースヒーターは冷媒と冷凍機油を分離しやすく潤滑性能を維持するための装置であり、空調・冷凍機器の停止時にクランクケースを加温しています。その使用電力(30~40W程度)は待機電力でもあり、空調・冷凍機器を長期間使用しないときは、元電源から遮断することで、待機電力を削減できます。

多くの空調・冷凍機器では、冷媒とともに冷凍機油がコンプレッサーから凝縮器、膨張弁、蒸発器を循環してコンプレッサーに戻ってきます。冷凍機油によってコンプレッサーの摩耗軽減と潤滑効果をもたせ、焼き付きを防止しています(冷媒については、既に、「冷媒って何?」で説明していますので、そちらをご参照願います)。

冬期など外気が低温になると、コンプレッサーの下部(クランクケース:右写真はその一例)に溜まっている冷えた冷凍機油中に冷媒が溶け込み、潤滑効果が薄れ、コンプレッサーの摩耗、焼き付きの原因になります。

クランクケースヒーター(右写真の赤いバンド状のもの)は冷媒と冷凍機油を分離しやすく潤滑性能を維持するための装置であり、空調・冷凍機器の停止時にクランクケースを加温しています(注記)。空調・冷凍機器を運転するとコンプレッサー自身からの圧縮熱が発生しますので、クランクケースヒーターの通電は停止されますし、最近の家庭用エアコンなどではクランクケースヒーターがない物も多くなっています。

(注記)炭酸水が温まると、中から二酸化炭素が噴出してくる現象と同じです。

クランクケースヒーターの使用例 クランクケースヒーターの使用例

以上の説明でご理解いただいた通り、クランクケースヒーターは空調・冷凍機器の運転中に必要なものではなく、停止中に必要なものであり、その使用電力(30~40W程度)は待機電力となっています。したがい、空調・冷凍機器を長期間使用しないときは、元電源から遮断することで、待機電力を削減できます。例えば、空調機器が10台、クランクケースヒーター容量が30w/台で、空調未使用期間が年間4か月(365日/年×24h/日×4/12月数比=2,920h/年)あったとすると、元電源から遮断することによる年間の電力削減量は876kWh(=10×30/1,000×2,920)と求められます。

なお、注意事項として、空調・冷凍機器を長時間の停止から運転再開するときは、冷凍機油中の冷媒を追い出すため、運転開始の12時間以上前から元電源を投入しておくことが必要です。

回答者

技術士(衛生工学) 加治 均