省エネQ&A

今後の省エネルギー政策の方向性は?<「徹底した省エネルギー推進」に向けて(省エネルギー小委員会 取りまとめ)>

回答

エネルギー基本計画では、産業部門、業務部門、家庭部門、運輸部門の省エネ対策をそれぞれ積み上げ、2030年時点において、最終エネルギー消費で5,030万kl 程度の省エネを見込んでいます。この実現には2012年から2030年までに35%のエネルギー効率改善が必要となり、非常に野心的な目標です。

昨年4月に閣議決定されたエネルギー基本計画では「徹底した省エネルギー」が方針として示されています。具体的には、産業部門、業務部門、家庭部門、運輸部門の省エネ対策をそれぞれ積み上げ、2030年時点において、最終エネルギー消費で5,030万kl程度の省エネを見込んでいます。この実現には2012年から2030年までに35%のエネルギー効率改善が必要となりますが、1993年から2013年における20年間のエネルギー効率改善が14%であることを鑑みれば、非常に野心的な目標です。

平成27年8月28日付で、総合資源エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会 省エネルギー小委員会より、上記方針を具体化するための必要な措置が示されました。

本Q&Aでは、省エネルギー小委員会の取りまとめ内容について、中小企業者にスポットを当てた内容を中心に説明するとともに、経済産業省による省エネ関連平成28年度概算要求の概要をご紹介します。

1. 現在の省エネルギー施策

  • エネルギーの使用の合理化等に関する法律(省エネ法)が制定され、工場等において一定(原油換算で年間1,500kL)以上のエネルギーを使用している事業者に対して定期報告義務を課し、自らのエネルギー使用状況を把握させるとともに、努力目標を含むエネルギー管理手法を示した誘導的なガイドラインを国が示すことにより、事業者におけるエネルギー管理の徹底を促しています。
  • 中小企業者に対する支援的措置(省エネ支援)として、設備投資を支援する以前に知識や情報を提供することが必要との観点から、国は省エネルギー診断事業や講師派遣を行っています。また、資金繰りに苦しむ事業者も多いため、設備投資に対する低利融資や金融機関からの融資に対する利子補給など、ファイナンスの支援も実施しています。加えて、地域の相談窓口を構築し、中小企業者の省エネを推進するためのきめ細やかな支援を始めています。

2. 現在の施策の評価

  • これまでの省エネ診断事業の実績によれば、設備投資なしでもできる対策と設備投資の必要な対策を合わせて、10~20%の省エネのポテンシャルが導出されています。

3. 今後必要な措置(省エネルギーのノウハウを有していない中小企業等への対策)

  • 積極的な情報提供
    費用対効果の高い省エネポテンシャルを有する中小企業の省エネを進めるため、省エネ診断を引き続き実施すること。また、診断の効果を周知する仕組みとして、情報提供も積極的に実施すべきであること。
  • 診断技術の向上
    中小企業が用いている設備やビジネスは日々変化しており、さらに最近ではITを活用したエネルギーマネジメントシステムも開発されていることから、省エネ診断を実施するための技術をさらに高めるための開発を実施することが必要です。したがって、国が「省エネルギー対策導入促進事業」として実施する省エネ診断については、当該診断技術の向上を今後重視すべきであること。
  • ファイナンス支援の充実
    設備の老朽化への対策としては、イニシャルコストの支出や資金調達が大きな問題であることから、補助金やリース制度によるイニシャルコストの低減、金融機関からの融資の際の利子補給や低利融資・政策金融の充実を図るため、地方銀行等との連携をさらに進めるべきであること。
  • 地域における省エネに係る相談体制の更なる整備
    さらに、中小企業が日々の事業活動において、省エネ対策を進めるためには、きめ細かく相談することができる場所が、中小企業の近くにあることが必要です。そのため、より多くの各地域において、中小企業の省エネ相談へ迅速に対応できるプラットフォームを順次整備するとともに、そのプラットフォームを核として、各地域内において中小企業が省エネを進めるにあたり、アドバイスを実施できる自治体や金融機関等にも繋ぐことができる体制を、各地域で構築すべきであること。

以上の省エネルギー小委員会の取りまとめを踏まえ、経済産業省では省エネ関連平成28年度概算要求を、下記の通り行っています(出典:経済産業省九州経済産業局「省エネ設備投資に使える補助金」)。

エネルギー使用合理化等事業者支援補助金について エネルギー使用合理化等事業者支援補助金について
  • エネルギー使用合理化等事業者支援補助金として1,260.0億円(平成27年度当初予算額は410.0億円)・・上図
    平成26年度補正予算として実施された「最新モデル省エネルギー機器等導入支援事業(A類型)」は先着順等の見直しの後、実施されるようです。
省エネルギー対策導入促進事業費補助金について 省エネルギー対策導入促進事業費補助金について
  • 省エネルギー対策導入促進事業費補助金として9.5億円平成27年度当初予算額は5.5億円)・・上図
    診断事業や省エネ相談地域プラットフォーム事業等への要求です。増額分は省エネ相談地域プラットフォーム事業の拡充のためのようで、また、診断事業では、診断後に提案された省エネ対策の実施率が9割以上(省エネ量基準)となることを目標にするようです。
  • エネルギー使用合理化特定設備導入促進事業費補助金として30.0億円(平成27年度当初予算額は26.1億円)・・省エネ設備を導入する際の利子補給を行います。
  • エネルギー使用合理化特定設備等資金利子補給金として0.05億円(平成27年度当初予算額は0.05億円)・・中小企業が高性能工業炉や高性能ボイラを導入する際の利子補給を行います。
  • 電気・熱エネルギー高度利用支援事業費補助金として25.0億円(新規)
    高効率コージェネレーション機器に関わる支援を行います。

他にも、エネルギー使用合理化等事業者支援補助金の民間団体等分としてLPガス、天然ガス等の補助金が前年度と同額分要求されていますし、省エネルギー型建設機械導入補助事業等も継続して要求されています。

回答者

技術士(衛生工学) 加治 均