省エネQ&A

屋根への省エネ対策はどんなものがありますか?また、その効果量算定方法は?<建築物省エネその1:高反射塗料施工>

回答

屋根、壁と窓への省エネ対策として、「遮熱」と「断熱」があります。遮熱は反射率を高めるなどにより日射量を減らす対策で、冬期の暖房には不利に働きます。断熱は熱の侵入/放散を軽減する対策であり、冷房にも暖房にも効果があります。反射率は色によって大きく変わり、色選びには注意が必要です。

今回から3回にわたり、建築物を構成する屋根、壁と窓について、省エネ性能を向上させた際の省エネ効果量の算定方法について、ご説明します。下図は、室外より室内の温度が低い時の屋根、壁と窓周りの日射時の温度勾配を模式的に示しています。夏期であれば、空調機を使用し、外気より室内の温度を下げている状態に相当します。屋根、壁と窓には日射光が注ぎ込み、その一部は室内側に侵入します。そのため外気側表面は外気温度より高くなります。その後、断熱材などにより、外気側表面温度は室内温度まで下がります。以上の関係を式で表すと、下式となります。

(1-r)×I=(ts—to)÷Ro・・・(1)

q=(ts-ti)÷(R+Ri)・・・(2)

r:屋根、壁と窓の反射率

I:単位面積当たりの全天日射量[kW/m2(平方メートル)]

q:単位面積当たりの侵入/放散熱量[kW/m2(平方メートル)]※Iとは一致しません。

to:外気温度[℃]

ts:室外側屋根、壁と窓の表面温度[℃]

ti:室内温度[℃]

Ro:外気側表面熱伝達抵抗[m2(平方メートル)・K/W]

R:断熱材等による熱伝達抵抗[m2(平方メートル)・K/W]

Ri:室内側表面熱伝達抵抗[m2(平方メートル)・K/W]

室外より室内の温度が低い時の屋根、壁と窓周りの日射時の温度勾配模式図 室外より室内の温度が低い時の屋根、壁と窓周りの日射時の温度勾配模式図

屋根、壁と窓への省エネ対策として、「遮熱」と「断熱」があります。遮熱は反射率を高めるなどにより日射量を減らす対策で、冬期の暖房には不利に働きます。断熱は熱の侵入/放散を軽減する対策であり、冷房にも暖房にも効果があります。なお、散水も効果的です。散水は水の気化熱を利用し、屋根面の温度上昇を抑える対策であり、遮熱と同様、冷房負荷軽減対策です。

以下、第1回目として、屋根への遮熱対策での省エネ効果量の算定方法について、試算例を用い、ご説明します。

  • 塗装する屋根の水平投影面積:100m2(平方メートル)
  • 屋根には断熱材が未施工
  • 現状と塗装後の反射率:0.25と0.90

多くの高反射塗料が市販され、同じ色であれば一般の塗料より反射率が高くなります。反射率は色によって大きく変わり、暗く濃い色ほど反射率は低くなり、明るく薄い色ほど反射率は高くなります。したがい、高反射塗料と言っても、黒系の高反射塗料の場合、白系の一般塗料の方が遮熱性が高いこともあり得るため、色選びには注意が必要です。

下図は、高反射塗料と一般塗料の反射率の違いを説明する一例です(出典:関西ペイント ホームページ アレスクール)。

  • 日射時の年間冷房時間:100日/年(6~9月)×8h/日(日射時間)=800h/年
  • 電動空調機(EHP)のCOP:2.7
塗膜と明度の日射反射率の関係 塗膜と明度の日射反射率の関係
【試算と結果】
  • 東京での6~9月の全天平均日射量は、気象庁データより、14.0、14.6、15.2、11.1MJ/m2(平方メートル)/日であり、4か月の平均値は13.7MJ/m2(平方メートル)/日(3.81kWh/m2(平方メートル)/日)と求められます。
  • 日射量は、気象庁が「過去の気象データ検索」から全天日射量[MJ/m2(平方メートル)/日],として、また、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が「年間月別日射量データベース(MONSOLA-11)」として、公開しています。
  • 時間当たりの日射量Iは、3.80kWh/m2(平方メートル)/日÷8h/日=0.475kW/m2(平方メートル)。
    外気側表面熱伝達抵抗Roは、国立研究開発法人建築技術研究所 外皮の熱損失の計算方法の表A.3.2(末尾に記載)から、0.04m2(平方メートル)・K/W。
  • ここで、高反射塗料塗装前後の室外側屋根表面温度の温度上昇差は、(1)式から、
    (ts1-t0)-(ts2-t0)=ts1-ts2=(r2-r1)×I×Roですので、
    (ts1-t0)-(ts2-t0)=(0.90-0.25)×0.475×(0.04×1000)=12.4℃
    例えば、外気温が30℃のときの高反射塗料塗装前の室外側屋根表面温度は30+(1.0-0.25)×0.475×(0.04×1000)=44℃と求められ、「夏期の天井近くで50℃近くになった」と言う話は、決して誇張ではないことが理解されます。
    (2)式から、高反射塗料塗装前後の室内側流入熱量差△qは、
    △q={(ts1-ti)÷(R+Ri)}-{(ts2-ti)÷(R+Ri)}=(ts1-ts2)÷(R+Ri)で表されます。
    室内側には断熱材が未施工で、トタン等金属材料の熱抵抗は非常に小さいので断熱材による熱伝達抵抗Rは0.0と見做せます。室内側表面熱伝達抵抗Riは、国立研究開発法人建築技術研究所 外皮の熱損失の計算方法の表A.(末尾に記載)から、0.09m2・K/W。
  • 以上から、高反射塗料塗装前後の室内側流入熱量差△qは12.4÷{(0.0+0.09)×1000}=0.138kW/m2(平方メートル)と求められ、年間の空調機の削減電力量は、0.138×100×800÷2.7=4,089kWh/年と求められます。
表面熱伝達抵抗 表面熱伝達抵抗
表A. 表面熱伝達抵抗

※注記
建物の表面熱伝達係数は定数と考えても差し支えありません。ただし、厳密には、表面熱伝達係数は風速や表面温度と外気の温度差等により変わります。したがい、蒸気配管からの放熱などには適用できません。

回答者

技術士(衛生工学) 加治 均