省エネQ&A

ピンチテクノロジーについて教えてください。

回答

ピンチテクノロジーとは、工場等で、加熱や冷却に必要な熱量を最小化するための熱交換器ネットワークを計画する解析手法のことです。その他、用水使用量と排水量を減らすための水ピンチテクノロジーや投入資源量と廃棄物を減らすための物質ピンチテクノロジーも開発されています。

ピンチテクノロジーとは、工場等で、加熱や冷却に必要な熱量を最小化するための熱交換器ネットワークを計画する解析手法のことです。

「ピンチ」は、英語で「つまむ」という意味で、与熱側と受熱側の流体の温度と熱量の関係を図示化したとき(下図:出典は「矢崎雅俊の”環境工学”」で、図を熱複合線図と呼びます)、与熱側と受熱側が温度的に最も接近する箇所をピンチポイントと呼びます。

熱複合線図での与熱側と受熱側の流体の熱量差は最小冷却熱量と最小加熱量を表しており(「ターゲット」と呼びます)、このターゲットは理論上の熱量を示しているのではなく、ピンチポイントとして選定した最小温度差が合理的であれば実現できる熱量を示しています。これにより、ターゲットを達成する熱交換器ネットワークが必ず得られます(具体的な熱複合線図の作成方法については次回以降にご説明予定です)。

熱複合線の概念図 熱複合線の概念図

ピンチテクノロジーは単一工場に留まらず、複数工場間の熱融通(エリアワイドピンチテクノロジー)解析にまで拡大することに成功しています。単一工場ごとの省エネルギー化は限界に達している一方で、異業種の工場が隣接するコンビナート内では、工場によって利用する熱の温度帯が異なることから、さらなる省エネルギーも可能です。既に国内5カ所(千葉、鹿島、水島、大分、宇部)のコンビナートに解析が適用されており、さらに、2011年度からはNEDO「国際エネルギー消費効率化等技術・システム実証事業」の一環としてタイ王国のマプタプット工業団地へと海外展開されるなど、国内外のコンビナートにおける省エネルギーソリューション技術として大きな期待が寄せられています(出典:NEDO実用化ドキュメント「複数工場間で熱を共有し、コンビナート全体での省エネを実現」)。

なお、ご説明した熱エネルギーを減らすためのピンチテクノロジーに加え、用水使用量と排水量を減らすための水ピンチテクノロジーがあり、さらには投入資源量と廃棄物を減らすための物質ピンチテクノロジー(Mass Integration)も開発されています。

回答者

技術士(衛生工学) 加治 均