省エネQ&A

省エネ法における判断基準について教えてください。

回答

省エネ法の「基本方針」が省エネルギー管理体制と管理方法の基本的な考え方を示しているのに対し、「判断基準」では省エネルギーを推進するための着眼点ともいうべきものが書かれています。そして、「判断基準」は、(工場の場合は)「1熱の発生」から「6 動力・熱への変換」までの6分野に分け記述されています。

エネルギーの使用の合理化等に関する法律(通称、省エネ法)は、1970年代の石油危機を契機に、エネルギーの使用の合理化を進めることにより、国民経済の健全な発展に寄与することを目的として1979年に制定されました。その後、地球温暖化問題の高まりや民生エネルギーの増大等の経済的・社会的環境の変化に応じて数度改正され、現在に至っています。

省エネ法は、省エネルギーに誘導するためのものであり、違反者を積極的に取り締まり、省エネの方向に強制的に向けさせる法律ではありません。反面、省エネ法は、分野・営利非営利・エネルギー消費の多少を問わず、エネルギーを使用する者はひとしく省エネルギーと電力の需要の平準化に努めることを求めています。

省エネ法の「基本方針」では、省エネルギー管理体制と管理方法の基本的な考え方を示しているのに対し、「判断基準」では省エネルギーを推進するための着眼点ともいうべきものが書かれています(下図: 出典は関東経済産業局ホームページで工場に対する判断基準)。

判断基準の構成 判断基準の構成

「判断基準」は、(工場の場合は)「1熱の発生」から「6 動力・熱への変換」までの6分野に分け記述しています(判断基準自体は経済産業局のホームページで公開されています)。以下、ボイラ、タービン・発電設備を例として、判断基準での6分野と設備・機器の関係をご説明します。

ボイラでは、例えば重油を燃料としバーナで燃焼用空気により燃焼し、熱を発生します(判断基準の1)。発生した熱はボイラチューブ内部を流れるボイラ水を加熱するために使用されます(判断基準の2)。ボイラ水を加熱することで温度の下がった燃焼排ガスはエコノマイザ(ボイラ給水を予熱する機器)や空気予熱器を使い廃熱回収が行われます(判断基準の3)。一方、ボイラで発生した蒸気はタービンに供給され、蒸気の持つ熱エネルギーが回転エネルギーに変換され、発電機を駆動することで電力が得られます(判断基準の4)。発生した電力はモータや電気炉などで使用されます(判断基準の6)。その過程で熱エネルギー(判断基準の5-1)や電気エネルギー(判断基準の5-2)の損失が発生します。

ボイラ、タービン、発電設備での判断基準 ボイラ、タービン、発電設備での判断基準

以上、ボイラ、タービン・発電設備でご説明しましたが、それ以外についての設備・機器についても判断基準の6分野との関係は下表の通りです。

判断基準での分野番号

想定設備、機器

1

ボイラ、工業炉、乾燥炉など

2

蒸気加熱器、吸収式チラー、工業炉、外調機など空調機器、熱交換器など

3

ボイラ、工業炉、凝縮器、乾燥炉など

4

発電機、コージェネ設備

5

蒸気/冷水/温水配管、工業炉、受電設備/変圧器/配電設備など

6

モータ、ポンプ、ファン、ブロワ、コンプレッサ、エレベータ、電気分解設備、照明設備、オフィス機器など

回答者

技術士(衛生工学) 加治 均