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「工場等」の判断基準に基づく個別管理標準作成上の留意点─ (2-1)加熱及び冷却並びに伝熱の合理化(加熱設備等)

回答

「工場等」の判断基準の「(2-1)加熱及び冷却並びに伝熱の合理化 加熱設備等」を取り上げ、「該当する設備」、「管理内容と補足説明」と「個別管理標準を作成する上での留意点」について解説しています。

「工場等」の判断基準に基づく個別管理標準作成上の留意点に関わり、2回目として、「工場等」の判断基準の「(2-1)加熱及び冷却並びに伝熱の合理化 加熱設備等」を取り上げます。

I. 「工場等」の判断基準の「(2-1)加熱及び冷却並びに伝熱の合理化 加熱設備等」に該当する設備

関東経済産業局のホームページ上で例示されている設備は、下記のとおりです。

蒸気ボイラー(プロセス用)、プロセス用電動ターボ冷凍機・チラー、自家発電設備(蒸気タービン、復水型)、自家発電設備(ディーゼルエンジン、ガスタービン型)、コージェネレーション(ディーゼルエンジン、ガスタービン型)、加熱(溶解、熱処理、加熱)/乾燥設備、加熱成形設備、表面処理、洗浄、脱脂、中和等設備、冷蔵・冷凍設備

II. 「工場等」の判断基準での管理内容と補足説明

「工場等」の判断基準の「(2-1)加熱及び冷却並びに伝熱の合理化 加熱設備等」の1. 管理として規定されている項目は、アからコの10項目で、下記のとおりです。

ア.
蒸気等の熱媒体を用いる加熱設備、冷却設備、乾燥設備、熱交換器等については、加熱及び冷却並びに伝熱(以下「加熱等」という。)に必要とされる熱媒体の温度、圧力及び量並びに供給される熱媒体の温度、圧力及び量について管理標準を設定し、熱媒体による熱量の過剰な供給をなくすこと。

イ.
加熱、熱処理等を行う工業炉については、設備の構造、被加熱物の特性、加熱、熱処理等の前後の工程等に応じて、熱効率を向上させるように管理標準を設定し、ヒートパターン(被加熱物の温度の時間の経過に対応した変化の態様をいう。以下同じ。)を改善すること。

ウ.
加熱等を行う設備は、被加熱物又は被冷却物の量及び炉内配置について管理標準を設定し、過大負荷及び過小負荷を避けること。

エ.
複数の加熱等を行う設備を使用するときは、設備全体としての熱効率が高くなるように管理標準を設定し、それぞれの設備の負荷を調整すること。

オ.
加熱を反復して行う工程においては、管理標準を設定し、工程間の待ち時間を短縮すること。

カ.
加熱等を行う設備で断続的な運転ができるものについては、管理標準を設定し、運転を集約化すること。

キ.
ボイラーへの給水は、伝熱管へのスケールの付着及びスラッジ等の沈澱を防止するよう水質に関する管理標準を設定して行うこと。給水の水質の管理は、日本工業規格B8223(ボイラーの給水及びボイラー水の水質)に規定するところ(これに準ずる規格を含む。)により行うこと。

ク.
蒸気を用いる加熱等を行う設備については、不要時に蒸気供給バルブを閉止すること。

ケ.
加熱等を行う設備で用いる蒸気については、適切な乾き度を維持すること。

コ.
その他、加熱等の管理は、被加熱物及び被冷却物の温度、加熱等に用いられる蒸気等の熱媒体の温度、圧力及び流量その他の加熱等に係る事項についての管理標準を設定して行うこと。

III. 個別管理標準を作成する上での留意点

本判断基準では、生産と密接な関係をもつ加熱、冷却、伝熱が対象となり、電気加熱方式の加熱炉も対象です。また、保健空調、産業空調のための空気調和設備や給湯設備は対象外です。

  • (2-1)1. アでは、蒸気や温水による加熱、冷水による冷却などの熱交換の際の加熱(又は冷却)する側の条件(温度、圧力、流量など)を定めます。そして、温度、圧力、流量などを監視するメータには管理値を定め、定期的に計測し、その結果を記録することが求められます。
  • (2-1)1. イでは、品質、安全、エネルギー効率等の視点からのヒートパターンの設定状況を定めます。そして、その結果は運転日誌等で運転時間の推移に合わせ温度設定が変わっていることで確認する方法が良いでしょう。
  • (2-1)1. ウでは、炉内の配置、処理速度、充填量などを定めます。そして、その結果は作業日誌等で確認する方法が良いでしょう。
  • (2-1)1. エは、(1)1. ウと重複する場合があり、熱媒体による加熱であれば本項で定めます。また、負荷の割合による効率の良い設備を把握し、運転の優先順位を決めることをお勧めします。
  • (2-1)1. オでは、工程間の時間を定めることが求められます。そして、その結果は運転日誌等で工程時間として記録するのが良いでしょう。
  • (2-1)1. カでは、操業計画を定めることが求められます。そして、実際の結果は運転日誌等に記録するのが良いでしょう。
  • (2-1)1. キでは、pH、電気伝導度、シリカ含有量などについて基準を定めます。そして、その結果は分析値で確認します。
  • (2-1)1. コでは、加熱(又は冷却)される側(被加熱物または被冷却物)の条件(温度、圧力、流量など)を定めます。そして、(2-1)1. アと同様に、温度、圧力、流量などを監視するメータには管理値を定め、定期的に計測し、その結果を記録することが求められます。
回答者

技術士(衛生工学) 加治 均