省エネQ&A

ZEB(Zero Energy Building)を支える省エネ技術(1)

回答

ZEBロードマップ検討委員会では、事務所、学校、ホテルについて、「現在の高性能な建材や設備を適切に選択することで、50%省エネ(ZEB Ready)が実現可能」と試算しています。また、大成建設株式会社では、都市型の建物として国内で初めて建物単体で「年間エネルギー収支ゼロ」を達成し、ZEBが実現可能であることを実証しました。

第3回目と第4回目では、「ZEBを支える省エネ技術」についてご説明します。第3回目は「ZEBを支える省エネ技術」の概要についてご説明します。

「ZEBロードマップ検討委員会 とりまとめ」(平成27年12月 経済産業省 資源エネルギー庁省エネルギー対策課)では、「事務所、学校、ホテルにおいて、現在の高性能な建材や設備を適切に選択することで、50%省エネ(ZEB Ready)が実現可能」ことを検証し、具体的なZEB Ready基準を満たす仕様を例示しています。

また、大成建設株式会社では、技術センター(神奈川県横浜市)に建設した「ZEB実証棟(下写真)」において、2014年6月から1年間運用し実証を行った結果、エネルギー消費量が463MJ/m2(平方メートル)・年、創エネルギー量が493MJ/m2(平方メートル)・年となり、都市型の建物として国内で初めて建物単体で「年間エネルギー収支ゼロ」を達成し(出典は大成建設(株)HP)、ZEBが実現可能であることを実証しました。

大成建設技術センターZEB実証棟の外観 大成建設技術センターZEB実証棟の外観

事務所ビルでZEB Ready基準を満たす仕様として、「ZEBロードマップ検討委員会 とりまとめ」では、省エネ基準相当(ガラス建築)に比べ、赤字で示した仕様が追加されています。

事務所ビルでZEB Ready基準を満たす仕様の変更点 事務所ビルでZEB Ready基準を満たす仕様の変更点

また、「ZEB実証棟」では、下記の省エネ技術が導入されているようです(出典は大成建設(株)HP)。

低照度タスク&アンビエント照明システム
  • 採光システムと超効率LED間接照明の連携で室内の明るさ感を確保
  • 次世代人検知センサーで人の在/不在を判断し高効率に下向きLED照明を制御
  • やわらかい光の有機ELタスクライトで好みに合わせて机上面の光環境を調整
固定式自然光採光システム
  • 自然光を天井面ヘ照射し、肱しさ感を抑制しつつ、室内の明るさ感を向上
  • 固定式構造で、年聞を通じて様々な太陽高度の直射日光を採光可能
  • 窓際だけではなく室奥にまで光を到達させ、照明エネルギーを最小化
排熱利用タスク&アンビエント空調システム
  • 燃料電池の低温排熱を有効活用し、吸着式冷凍機で冷水を製造
  • 躯体放射空調による快適環境を提供、かつ搬送動力を低減
  • 自分好みの風量選択と在席情報による外気量制御で快適&省エネ
自然換気システム
  • 風・外気温・室温・人の位置などの計測データを用いた窓の開閉判断
  • 屋外の風を取り込んで室内を快適な温熱環境に制御
無線照明制御システム
  • 照明のON/OFFや調光をリニューアルにも最適な無線技術で制御
  • 照明メー力を問わず様々な照明器具が制御可能
  • 到達性が良く他の無線に干渉されない920MHz周波数域を利用>
  • 1灯から多灯まで広範囲に制御可能
  • 消灯時の微弱電力も力ツ卜し、さらなる省エネ(待機電力削減)

第4回目では、目新しい省エネ技術のキーワードについてご説明する予定です。

回答者

技術士(衛生工学) 加治 均