省エネQ&A

蒸気ボイラーを使用しています。ドレン(復水)の再利用による効果はどのように計算すればよいのでしょうか。

回答

ドレンは発生時点では蒸気と同じ温度をもち、かつ、不純物を含まない純水です。そのため、ドレンをボイラーへの補給水として再利用すれば、ボイラー燃料削減の効果とボイラー補給水削減の効果があります。それぞれの計算は以下のようになります。

ドレンの回収方式については「ボイラーで発生させた蒸気を生産設備で使用しています。生産設備で蒸気を使用した際に生じるドレンを有効利用するにはどのようにしたらよいですか。」でオープン方式とクローズド方式があることを示しました。ここでは設備費用が小さいオープン方式を想定して、ボイラー燃料と補給水の削減量とその効果金額を求めます。

3.0t / hボイラーからの蒸気を使用した際に発生するドレンの60%を85℃で回収するとして計算します。計算は図のフローのように行い、以下のようになります。

計算のフロー 計算のフロー

1. ドレン回収量の計算

前提条件

  • 蒸気圧力(温度):0.7MPa(170.5℃)
  • 給水温度:20℃
  • ボイラーからの蒸気発生量
    仕様で示されるのは「換算蒸発量」です。この場合は3.0t / h。これは、大気圧下で100℃の飽和水を100℃の乾き飽和蒸気にするのに要する熱量2,257kJ / kgを条件にしています。
    「実際蒸発量」を、実際の給水温度と蒸気の圧力での熱量、それぞれ83.9kJ / kg、2767.6kJ / kg(注)を使って、以下の式のように求めると、2.52t / hになります。
    (注)これら1kg当りの熱量、すなわち比エンタルピーは飽和蒸気表で調べます。
    実際蒸発量 = 換算蒸発量 ×(上記2,257) / (蒸気のエンタルピー - 給水のエンタルピー)
    = 3.0t / h × 2,257kJ / kg /(2767.6kJ / kg - 83.9kJ / kg) = 2.52t / h
  • 運転時間:8,000h / 年
  • 負荷率:ボイラーは蒸気の使用量に応じ負荷が変動します。平均負荷率を給水量などから求め、70%とします。
  • ドレンの回収率:機器ごとのドレン発生の状況から推定します。60%と仮定します。
    ドレンの回収量は、2.52t / h × 8,000h / 年 × 0.7 × 0.6 = 8,470t / 年

2. ドレンで回収する熱量の計算

飽和蒸気表で比エンタルピーを見ると、ドレン回収時の85℃で356.0kJ / kg、給水の20℃で83.9kJ / kgですので、ドレン1kgあたりの正味回収熱は、
(356.0 - 83.9)kJ / kg = 272.1kJ / kg = 272.1MJ / t
ドレンで回収できる熱量は、1項の回収量の数値を使い、
272.1MJ / t × 8,470t / 年 = 2,300,000MJ / 年

3. 燃料の削減量・金額を計算

(1)燃料削減量を計算

燃料を都市ガスの13Aとすると、低発熱量は41.7 MJ / m3N。
燃料削減量は、ボイラー効率を96%とすると、
2,300,000MJ / 年 ÷(0.96 × 41.7MJ / m3N) = 57,500m3N / 年
となります。ここで、燃料削減率も確認しておきます。

まず、ドレン回収をしない場合の燃料使用量を求めます。
0.7MPaの蒸気がもつ熱量は2,767.6kJ / kg = 2,767.6MJ / tで、この蒸気を2.52t / h × 負荷率0.7で発生しているので、年間の発生蒸気の熱量は、
(2,767.6 - 83.9)MJ / t × 2.52t / h × 0.7 × 8,000h / 年 = 37,900,000MJ / 年

これを、燃料の低発熱量41.7MJ / m3Nとボイラー効率で割ると、燃料使用量は、
37,900,000MJ / 年 ÷(0.96 × 41.7MJ / m3N) = 947,000m3N / 年

したがって、燃料の削減率は、
57,500m3N / 年 / 947,000m3N / 年×100 = 6.1%
となります。

(2)燃料削減金額を計算

都市ガスは中圧で供給されており、単価を75円 / m3として計算します。

ガスのメーターや単価のm3は、15℃、(中圧では)0.981kPaのもとでの数値です。一方、発熱量のm3Nは0℃、大気圧のもとでの数値ですので、1m3N = 1.045m3(注)となります。

(注)〔(273 + 15) / 273〕 × 〔101.3 / (101.3 + 0.981)〕 = 1.045
 ここで101.3kPaは大気圧。

燃料削減金額は、

57,500m3N / 年 × 1.045m3 / m3N × 75円 / m3 ÷ 1,000 = 4,510千円 / 年

なお、ドレン回収前の燃料費は、

947,000m3N / 年 × 1.045m3 / m3N × 75円 / m3 ÷ 1,000 = 74,200千円 / 年

4. 補給水の削減量・金額を計算

ドレンの回収分だけ補給水が削減できます。

その量は1項から8,470t / 年。

水道水(下水を含む)の単価は自治体により大きく異なりますが、仮に250円 / m3とすると削減金額は、

8,470t / 年 × 250円 / m3 ÷ 1,000 = 2,120千円 / 年

となります。

5. 削減金額の合計を計算

3項の燃料費削減と4項の補給水削減の効果の合計は、

4,510千円 / 年 + 2,120千円 / 年 = 6,630千円 / 年

となります。

回答者

エネルギー管理士 本橋 孝久