省エネQ&A

ポンプや送風機の回転速度調整による省エネとは?(その1)

回答

通常、バルブやダンパで流路を絞り流量を調整しています。これをやめ、ポンプや送風機の駆動用モータにインバータを取り付けることにより、モータの回転速度を可変にし、ポンプや送風機の流量を調整することが大きな省エネ効果を生みます。このとき、既存のバルブやダンパは撤去または全開とします。

近年、インバータの低価格化により、この手法の費用対効果が高まっています。今回は基本的な内容とし、次回以降、具体的な検討方法につき記します。

1.流量の調整方法

ポンプ、送風機の駆動用として最も多く使われる誘導モータの回転速度は次式で表されます。

回転速度の計算式 回転速度の計算式

たとえば、50Hzの商用周波数(f )で4極(P )誘導モータの回転速度は1465min-1程度で固定した値になっています。そのため、ポンプや送風機の流量を調整するには、通常、バルブやダンパが使われてきました。

しかし、上の式において、周波数(f )を変えれば回転速度を変えられ、流量を可変にできます。ここで、周波数を変えるためにはインバータが用いられます。

インバータは50Hzや60Hzの商用周波数の交流を受け入れ、整流回路を用いて直流にし、それを変換し、ねらいとする周波数の擬似的な交流を出力するものです。

2.回転速度低減の効果は3乗で効く

現在、主流となっている遠心式のポンプや送風機では、そのモータ駆動力は
モータ駆動力=圧力×流量÷効率
となります。

ここで、圧力は回転速度の2乗に比例し、流量は回転速度に比例するので、モータ駆動力は回転速度の3乗に比例します。

したがって、仮に流量を20%下げるため、回転速度を20%落とすと、
0.80 × 0.80 × 0.80 ≒ 0.51
となり、モータ駆動力は49%も減ることになります。

図1は、送風機の風量をダンパーで絞った場合と、インバータで回転速度を落として風量を絞った場合の消費電力の違いです。後者にすることによる省エネ効果が大きいことがわかります。

インバータ制御による省エネ効果 インバータ制御による省エネ効果
図1 インバータ制御による省エネ効果 1)

3.インバータの取付け

インバータは図2のようにモータのすぐ前に接続します。2.2kWのインバータの場合、縦13cm、横11cm、奥行14cm程度の大きさです2)。前面に周波数などを調節するためのタッチパネルと表示板が付いています。

インバータ取付後、バルブやダンパを段階的に開けながら、インバータでポンプ、ファンの回転速度を落とし、異常のないことを確認しながら最終的にバルブ、ダンパを全開とします。

インバータの取付 インバータの取付
図2 インバータの取付 3)

4. 回転速度低減が有効な例

ポンプや送風機が使われている現場で、インバータを用いた回転速度低減による流量削減が大きな効果を示すのは以下の場合です。

①ポンプ(遠心式、以下同じ)出口の流量がバルブで絞られていたり、送風機出口の風量がダンパーで絞られている例が多くあります。

②季節や時間帯、その他の使用状況により流量を調整すべきなのに、いつも同じ流量で運転している場合。適正な制御がされていないクーリングタワー、また、生簀やプールと濾過装置の間のポンプなどで見られます。

③なお、機械設計者がポンプ、送風機を使った設備を設計する際に、次のような余裕が生じることは避けられません。

  • 流量や風量を計算により求めた後、現場での配管の修正や長期使用におけるポンプ等の能力低下に備える分の余裕。
  • モータは規格品であり、その定格出力は2.2kW、3.7kW、5.5kWというように段階的になっているので、やむを得ず余裕を持ったモータを使用してしまう場合が多い。

この③の余裕(ムダ)も、①や②の例に回転速度低減手法を適用することで解消されます。

5.ポンプ、送風機以外への適用について

これまでポンプと送風機について記してきましたが、モータを使用した機器は他にもあります。

そうした機器でもインバータにより回転速度を落として省エネができないか、という観点で見ると以下のようになります。

図3にモータの回転速度と負荷トルクの関係を大別したものを示します。

負荷トルク-速度特性 負荷トルク-速度特性
図3 負荷トルク-速度特性 4)
①低減トルク負荷

トルクが回転速度の2乗に比例する負荷。出力は回転速度の3乗に比例します。
本件で述べているポンプや送風機が該当します。

②定出力負荷

出力(仕事率)=トルク×回転速度=一定ですから、回転速度を落とすと、トルクが上がります。出力が一定のため、回転速度を落とす方法では省エネにはならない負荷です。

工作機械の主軸や一定張力、一定速度で製品を巻き取る巻取機が該当します。

③定トルク負荷

回転速度に関係なくトルクが一定の負荷。回転速度を下げればそれに比例して出力も下がり、時間当たりエネルギー消費量は減ります。しかし、ほとんどの場合、回転速度の低下に反比例して運転時間を延ばす必要があり、その場合は省エネとはなりません。

巻上げ機や圧延機、抄紙機、印刷機のロールの駆動はほぼ定トルク負荷で回転速度も厳密に管理されています。

また、ギアポンプ、ロータリーポンプ、ルーツブロアも定トルク負荷です。

以上から、回転速度を調整して省エネ効果を得られるのは①の低減トルク負荷であるポンプ(遠心式)や送風機が主であることがわかります。ただし、②や③でも、省エネを目的としなくとも、製品の品質管理等のための回転速度調整を目的としてインバータが多く使われています。

次回以降、ポンプと送風機それぞれの回転速度調整につき、具体例と注意点を見ていきます。

【参考文献】
1) 白石康裕、田上清隆、省エネルギー、2010、vol.62、no. 2、p. 27-30
2) 水口雄二朗、改訂 楽勝! 現場で使うインバータ、(財)省エネルギーセンター、2012、p.166
3) 水口雄二朗、楽勝!ポンプ設備の省エネ、(財)省エネルギーセンター、2010、p.133
4) (財)省エネルギーセンター編、新訂 エネルギー管理技術 電気管理編、(財)省エネルギーセンター、2002、p.735

回答者

エネルギー管理士 本橋 孝久