省エネQ&A

ZEB(Zero Energy Building)の必要性について

回答

業務他部門は最終エネルギー消費の増加が顕著で、徹底的な省エネルギーの推進が喫緊の課題となっています。また、エネルギー・セキュリティーの観点からも、建築物のエネルギー自給(自立)の必要性が強く認識されています。そのため、室内外の環境品質を低下させることなく、大幅な省エネルギーを実現するZEBに注目が集まっています。

ZEB(Zero Energy Building:注記)について、その必要性、ZEBとは、ZEBを支える省エネ技術と、4回に分けてご説明します。

注記:
Zero Emission Buildingとも呼ばれます。オフィスビルや商業施設などの建築物における年間での化石エネルギー消費量が“正味”ゼロとなる建築物をZero Energy Building、年間でのCO2排出量が“正味”ゼロとなる建築物をZero Emission Buildingと呼びます。なお、“正味”を強調する意味でNet Zero Energy Building、Net Zero Emission Buildingと表記することもあります。また、住宅の場合は、Buildingに代わりHouseを用い、ZEHと呼びます。

第1回目は、ZEBの必要性についてご説明します。

エネルギー白書2017によると、わが国の実質GDPは2.6倍に増加したにもかかわらず、産業部門のエネルギー消費量は2割近く減少していますが、業務他部門は2.4倍、家庭部門は1.9倍と大きく増加しています(第212-1-1図:出典はエネルギー白書2017)。

最終エネルギー消費と実質GDPの推移 最終エネルギー消費と実質GDPの推移

業務他部門は、事務所・ビル、デパート、ホテル・旅館、劇場・娯楽場、学校、病院、卸・小売業、飲食店、その他サービス(福祉施設など)の9業種に大別されます。これら9業種のエネルギー消費を見ると、1975年度までホテル・旅館のエネルギー消費が最大シェアを占めていましたが、1976年度以降、事務所・ビルが最も大きなシェアを占め、1979年度から卸・小売業のシェアが2位になりました。近年では、事務所・ビルと卸・小売業のシェアが大きくなっています(第212-1-7図:出典はエネルギー白書2017)。

業務他部門業種別エネルギー消費の推移 業務他部門業種別エネルギー消費の推移

わが国では、「産業部門」、「業務他・家庭部門」、「運輸部門」のそれぞれに応じた省エネルギー政策を展開しています。

業務他・家庭部門は最終エネルギー消費の32%を占め、他部門に比べ増加が顕著であることから、徹底的な省エネルギーの推進は我が国にとって喫緊の課題となっています。また、東日本大震災における電力需給の逼迫や国際情勢の変化によるエネルギー価格の不安定化等を受けて、エネルギー・セキュリティーの観点から、建築物のエネルギー自給(自立)の必要性が強く認識されています。

そして、室内外の環境品質を低下させることなく、大幅な省エネルギーを実現するZEBに注目が集まっており、「エネルギー基本計画」(2014年4月閣議決定)において、「建築物については、2020年までに新築公共建築物等で、2030年までに新築建築物の平均でZEBを実現することを目指す」とする政策目標が設定されています。

また、2015年7月にとりまとめられた「長期エネルギー需給見通し」においても、2030年の目標として定められている省エネルギー量を達成するため、「ZEB実現に向けた取組等により高度な省エネルギー性能を有する建築物の普及を推進する」ことが前提となっています。

このように、ZEBの実現・普及は、我が国のエネルギー需給の抜本的改善の切り札となる等、極めて社会的便益が高いものであり、エネルギー基本計画等の目標の確実な達成が求められている状況にあります。

回答者

技術士(衛生工学) 加治 均