RoHS指令の基礎

「ELV指令附属書II適用除外用途への科学と技術進歩の適用」最終報告書(第8次)

2016年5月13日

欧州委員会(EC)からの委託によりELV指令(2000/53/EC)の3種の適用除外用途(2(c)、3および5)への科学と技術の進歩の適用を検討していたOeko-Institutは4月18日に「指令2000/53/EC(ELV)の付属書IIの適用除外用途2(c)、3および5に対する科学と技術的な進歩の適用」の最終報告書1)を公表しています。

本報告書のボリュームは123ページで、以下の本文6項と付録6項で構成されています。

本文

  1. 背景:P7
  2. 適用範囲:P7~P8
  3. 概要:P8~P9
  4. 除外2(c):P10~P27
  5. 除外3:P28~P47
  6. 除外5:P48~P99

付録

  • A1.0 除外2(c)の歴史(ヒストリー):P101~P102
  • A2.0 除外2(c)に関連する特性、性能指標:P103
  • A3.0 除外3に関するACEA et al(2014)の寄稿記事の付録として提出された情報の要約:P104~P107
  • A4.0 除外3に関する多数のステークホルダーからのEcobrassに対して提案された情報の比較:P108~P109
  • A5.0 酸化鉛バッテリーシステムを活用していない市場における車輌に関する情報:P110
  • A6.0 構成部品および車輌のレベルでバッテリーテクノロジーの開発タスク部分として要求される該当ステージの記述:P111~P123

以下に本報告書の1. 背景、2. 適用範囲および3. 概要に記載されています内容の概要をご紹介します。

1.背景

(1) EU加盟国は2003年7月1日以降に上市する車輌の材料、部品に鉛、水銀、六価クロムおよびカドミウムを含んでいないことを確実にしなければならない。(ELV指令第4条(2)(a))

(2)付属書IIに本条の規定から除外される限られた数のアプリケーションが、除外の適用範囲と除外期間および(適用可能であれば)第4 条(2)(b)(iv)に従ったラベル要求を含めてリストされている。

(3)正規の原則に基づき、付属書IIは委員会によって科学と技術の進歩が適用されなければならない。(第4条(2)(b))
すなわち、以下が検討される。
— 既存の除外が第4条(2)(b)(ii)の規定要求に照らして未だ正当であるかどうか
— 追加的な除外が同条項に基づいて要求されているかどうか
— 第4条(2)(b)(iii)に関連して除外がもはや正当性を失ったため除外すべきかどうか

(4)更に、適用手順は制限物質に許容さるべき最大許容濃度を確立し(第4条(2)(b)(i)、表示が必要な材料および構成部品を指定しなければならない。

附属書IIに対する科学と技術の進歩は、過去6度適用されています。(2002、2005、2008、2010および2013)2)

2.適用範囲

Eunomia Research&Consulting(以降「E R&C」)が主導しているコンソーシアムはELV指令の選ばれた除外評価のための技術支援の提供を欧州委員会の環境総局から要求されていました。当該評価はレビューされた除外に対して明確で一義的な文言の推奨を提供することでした。

その作業はOeko-Institutが実施し、Eunomia R&Cによりピアレビューがなされました。

当該評価には附属書の適用可能性に関するステークホルダーとのコンサルテーションおよび作業進捗についてステークホルターに対する告知を継続するためにウェブサイトの立ち上げが含まれています。

プロジェクト期間中の2014年9月24日~2014年12月17日までの12週間にステークホルダーコンサルテーションが実施されました。

下表に示しますこのステークホルダーコンサルテーションにおいてカバーされた除外は、ELV指令の付属書IIの除外に対して明記されているレビュー時期を考慮し欧州委員会と合意してレビューされています。コンサルテーション期間中に提出された公開可能なステークホルダーの寄稿記事はELV除外ウェブサイト上やEUCIRCABC(Communication and information Resource Center for Administrations , Businesses and Citizens)ウェブサイト上で閲覧可能です。

更に、有用な情報の理解を促進するための2つの除外に関するターゲットステークホルダーミーティングが2015年4月10日に開催されています。当該ミーティングにおいて行われたプレゼンテーションも同様にEU CIRCABCウェブサイトやELV除外ウェブサイト上で閲覧できます。

3.概要(Overview)

プロジェクト期間中に3つの既存のELVの除外についてレビューが行われました。このプロジェクトでカバーされた除外は同時に推奨された有効期限の明確な記述およびレビュー期限と共に下表にまとめられています。この評価結果の詳細および推奨の根拠等に関しては本報告書の該当セクション(本文4~6および付録)をご参照ください。

推奨文言および除外期限日★複雑なテーブル★

本最終報告書の内容を踏まえて欧州委員会により検討がなされ、ELV指令附属書IIの改正案が作成された後に立法化されることとなります。

なお、RoHS指令(2011/65/EU)においても同指令附属書IIIにおける鋼、アルミニウムおよび銅中に含有する鉛の適用除外について、「6(a)機械加工用途の鋼鉄および亜鉛めっき鋼中の重量比0.35%まで、6(b)アルミニウム中の重量比0.4%までおよび 6(c)銅中に含有される重量比4%まで」の鉛含有の見直しプロジェクト(Pack 9)3)が2015年6月10日から2016年3月9日まで行われています。その最終報告が待たれるところです。

(瀧山 森雄)

1)

2)

3)

当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。 法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家に判断によるなど最終的な判断は読者の責任で行ってください。
情報提供:一般法人 東京都中小企業診断士協会