「『バナナの茎で紙を作りたい』と現地の農家に声を掛けたら、3世代バナナ農家をやっている農家から『そんな話は聞いたことがない』という反応だった。『だまされない』と警戒する農家を『信じてほしい』と農家を説得して回った」。ワンプラネット・カフェ代表取締役のエクベリ聡子氏は2011年にバナナペーパーづくりに取り組み始めた当時のことをこう振り返った。
舞台は、ザンビア東部サウスルアングワ国立公園のほど近くにあるエンフウェ村。村ではほぼ自生に近い状態で、有機バナナが栽培されている。バナナは成長すると数メートルにもなる大きな「草」で、1本の茎からは1度しか実が取れない。収穫すると、茎は切り落とされて廃棄されるのだが、それを目当てにゾウが村にやってくることもあり、厄介者でもあった。聡子氏と夫のペオ・エクベリ氏が茎から繊維を取り出すために悪戦苦闘していると、「何かおかしいことをやっている人がいる」と村のうわさになった。やがて何人かの農家が集まってきたそうだ。
「最初はバナナの茎から繊維の取り出す方法も分からず、バナナの茎をたたいたり、踏んだりして、数時間かけて少しだけ繊維が取れた。『たったこれだけ?』という感じだった」と聡子氏は笑顔をみせた。
それから1年後、2012年にワンプラネット・カフェを設立。10年余りが過ぎた現在は年間約5トンの繊維をザンビアで生産する。日本や英国に輸送したその繊維を元にバナナペーパーを製造。今では、さまざまな用途に利用が広がっている。現地ではバナナを有機栽培する60件の農家と契約し、バナナの茎を買い取り、農家の新たな収入源を生み出している。現地で直接雇用した25人が、茎から繊維を取り出す作業に従事している。