中小企業・小規模事業者によるカーボンニュートラルの取り組み事例
取り組んでから気づいた、目に見えるコストダウンのメリットと業務フロー改善の副産物:岡山技研工業株式会社(岡山県和気郡)
2025年 2月 21日
企業データ
- 企業名
- 岡山技研工業株式会社
- Webサイト
- 設立
- 1973年4月
- 従業員数
- 35名
- 所在地
- 岡山県和気郡和気町吉田1222-1
- 業種
- 金属製品製造業
主に各種鍛造部品や金型の設計、製造販売を行っている。高い強度と精密性を誇る岡山技研工業株式会社の製品は自動車部品や航装部品、農業機械部品などに使用され「ものづくりの原点」を支え続ける。今回は代表取締役社長 川上健二氏、専務取締役 川上哲治氏、営業課課長岡村浩太郎氏の3名にお話を伺った。

[取り組みのきっかけ]
岡山県商工会連合会と岡山大学のサポートで取り組みをスタート
創業時4名でスタートした岡山技研工業株式会社は、型打ち鍛造と金型設計製作の専門メーカーとして「ものづくりの原点」の技術を磨き続け、長い間多くの取引先からの信頼を得ている。カーボンニュートラルに関して当初は名前を聞いたことがあるくらいだったというが、岡山県商工会連合会からのお話がきっかけで取り組みをスタートさせたと代表取締役社長 川上健二氏は語る。
「商工会連合会の担当者の方から熱心にお話いただいたのと、名前としては知っていたカーボンニュートラルがどういうものなのかという興味がありましたので、何かのきっかけになればと思い取り組むことにしました」(川上健二氏)

岡山県商工会連合会は岡山大学と連携して、企業のCO2排出量の可視化にチャレンジする取り組みを行っている。岡山大学の学生とは、ワークショップなどを通して当社の事業内容の紹介や意見交換を実施し、お互いの理解を深めた上で取り組みをスタートした。会社全体の管理業務や営業業務に携わり、カーボンフットプリント(※)算定にあたり各種データを集計していた岡村氏はこう語る。
※カーボンフットプリント
製品やサービスの原材料調達から使用、廃棄、リサイクルに至るまでのライフサイクル全体で排出された温室効果ガスを、温室効果をもとにCO2量に換算して表したもの。
「取り組む前は、何から手を付けて良いのかわからず、難しく考えていましたが、岡山大学の学生がしっかり準備されていたので、スムーズに取り掛かることができました」(岡村氏)
[具体的な取り組み]
カーボンフットプリントの算定から、CO2削減を意識してLEDや新しい機械を導入
具体的な取り組みとしては、岡山大学と共同でカーボンフットプリントの算定を行うところから始まった。
「年間の電力使用量、重油の種類、製造個数や重量といった数値、加えて製品を2つピックアップし、製造プロセスを可視化のうえ、電力や輸送状況などの数値を岡山大学の学生と協力し算出する作業を行いました。製品については個別の使用電力などを厳密に算出することは難しいので、輸送や製造重量、廃棄物に軸足を置いた算出をしました。」(岡村氏)

またカーボンフットプリントを算定することで、自然とCO2削減に意識が向いていき、LEDやCO2排出量の少ない新しい機械の導入を実施したと専務取締役川上哲治氏は語る。
「LEDを導入することで、このくらいCO2を削減できるといった電気工事業者からの提案に、今まではそこまでピンと来ていなかったのですが、そういった部分に関心が出てきて意識するようになっていきました。機械に関しても、新しいものは古いものに比べて省エネ性能が高くなっているので、入れ替えることでCO2の排出量を減らせることになります。同じ機械を買うにしてもCO2排出量が違うのであれば少ない方を買おうという意識にもなりました」(川上哲治氏)
[感じたメリット・課題]
光熱費の削減と人材確保のアドバンテージ

岡山大学とカーボンニュートラルの第一歩を踏み出した同社。実際に取り組むことで感じたメリットや課題感についても伺ってみた。
「つい最近入れ替えた機械が光熱費削減に貢献していることを数値から実感しています。加えて就活生からの反応が良いことも大きく実感しています。岡山大学に伺う機会が多いのですが、若い方の環境に対する意識が高いことがあり、そこに真剣に取り組んでいる会社というのはとても良い印象を持っていただけます」(川上哲治氏)
「お客さんや就活生に向けて、カーボンニュートラルへの取り組みをやっていることも話せるようになったので、この点も強みとして訴求できるようになりました」(岡村氏)

一方、カーボンニュートラルの取り組みにあたって大変だったことを尋ねると、岡村氏は「まずはカーボンニュートラルに取り組むことの必要性を理解することが難しかったです。いきなりこれは必要だからやろうという考えではなかったです」(岡村氏)
そこから必要性を感じられるようになったきっかけも尋ねると、「データを集めて計算をしていく中で、ここはCO2が削減できるのではないかとポイントが見えてきたのがきっかけでした。可視化することが大事ですね。コストが下がり具体的な結果を実感できると、さらに取り組む意義を感じられるようになってきました」(岡村氏)
またデータ収集や製造プロセスの可視化によって様々な業務フローを見直し、業務効率化を図れた点は大変ながらもメリットになったと岡村氏は語る。
「カーボンフットプリントの算定にあたり、各データは経理からもらうものや現場からもらうものなど、バラバラな内容を同じフォーマットに落とし込む必要がありました。しかし、そこが整っていなかったのでフォーマットを整える仕組みを考えるきっかけになりました。製造プロセスも可視化することで色々気づきがあり、見直して一部業務の効率化を図ることができました」(岡村氏)
コストや採用面でのメリットを感じつつ、実施にあたり大変なポイントもプラスに捉えメリットに昇華していったことが窺える。
[今後の展望]
自分たちの技術を発展・継承しつつ、社員に還元していく
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最後にカーボンニュートラルや会社の今後の展望について伺うと、川上健二氏がこう答えてくれた。
「どこまでできるかは別として、会社としてこのくらい削減したいという計画目標や行動目標を作っていきたいです。そしてカーボンニュートラルの取り組みを含めてさらに付加価値を高めて強い会社作りを進めていきたいと思います」(川上健二氏)
今後コストダウンにより利益を増やし、従業員の賃上げにもつなげて三方良しの構図にしていけたらとの展望も語ってくれた。
岡山県商工会連合会からのお話、岡山大学のサポートでスタートしたカーボンニュートラルの取り組みで色々な気づきと確かな効果を感じ、今後の構想は尽きない。