キラリと光る食品リサイクル商品

じゃがいも残渣をきのこの培地原料に転換

ポテトチップス最大手のカルビーは、生産プロセスで出される廃棄物を有効利用するゼロエミッション活動を進めている。その一環として同社の鹿児島工場では、ポテトチップスの主原料であるじゃがいもの残渣をきのこ栽培の培地として製品化し、業者に向けて安定出荷している。

鹿児島工場が供給しているきのこ栽培用培地の商品名は「ドライミールポテト」。農事組合法人秋香園などとの産官学連携で開発が進められ、2003年に商品化した。

かつてポテトチップスは「季節商品」だった

じゃがいもは国内で年間に約274万トン生産されるが、カルビーはそのうち約22万トン弱を調達してポテトチップスを生産している。

ちなみに、1個のじゃがいものうちポテトチップスになるのは重量比で約30%。ずいぶん少ないように思われるかもしれないが、実はじゃがいもの成分の80%が水分なのだ。そのためポテトチップスの製造ではじゃがいもを油で揚げると大部分の水分を飛ばしてしまう。さらに、じゃがいもの皮と劣化部分(輸送や経時変化などによる)は除かれるため、最終的にポテトチップスの原料として使われるのが重量比で約30%となるわけだ。

ところで、ポテトチップスはその昔、春から秋にかけての「季節商品」だった。というのも、40~50年前まではじゃがいもの貯蔵技術が未成熟だったため、原料であるじゃがいもを同じ品質で1年間貯蔵できず、どうしても原料の品質が劣化する秋の終わりから春にかけてポテトチップスの生産を休止せざるを得なかった。

ところが、年間通じて食べたいという消費者ニーズは強く、それに呼応するように貯蔵技術も向上したことから、やがてポテトチップスは通年商品と変わっていったのだった。

ちなみに、貯蔵技術で重要なポイントが温度管理である。自然の摂理に従ってじゃがいもは、自らの寿命を延ばそうと活動し、さらに翌年に芽吹く"新芽"の準備に入ろうとする。が、ポテトチップスを生産する立場としては、じゃがいものそんな振る舞いは好ましくない。そこで温度管理によってそれを抑えているのだ。

じゃがいも残渣も培地の原材料に代用できる

ポテトチップスの生産で排出されるじゃがいもの残渣をきのこの培地にリサイクルした「ドライミールポテト」。2003年に商品化された

ドライミールポテトの誕生のきっかけを生産本部環境対策部長の高橋正博さんは説明する。

「未利用資源の有効利用は当社にとって創業以来の基本精神です。単に廃棄物の削減だけではなく、アウトプットのバリエーションを増やして資源の有効利用を図ろうということです。これまで工場の廃棄物を肥料や飼料などに活かしてきましたが、ドライミールポテトはその枠を超えた初めての商品と位置づけられます」

ポテトチップスの生産過程で廃棄されるじゃがいもの残渣について、鹿児島工場でも2000年までは主に産業廃棄物として処理していたが、他の有効利用法を検討していた。そこで目を向けたのがきのこの培地だった。

当時、きのこの培地について調べてみると、おからや粉砕されたとうもろこしなどが原材料に代用できることがわかった。ならば、じゃがいもの残渣も代用できるのではないか。この発想に興味を示したのが農事組合法人秋香園だった。そして01年からは秋香園のほかに福岡県森林林業技術センター、九州大学が参加し共同開発がスタートした。

育成スピードを20%アップできる

03年、きのこ培地商品としてドライミールポテトが発売された。じゃがいもの主成分はでんぷんだが、それがきのこ培地に好適のようだ。共同開発した秋香園を始め複数の農園では、ベースのドライミールポテトに複数の成分を配合した培地できのこを栽培する。主としてシメジ系きのこの栽培では顕著な効果が表れ、ドライミールポテトを用いた培地で栽培すると、かつて30日ほどだった成育期間が24~25日ほどに短縮し、収穫量のアップにつながっている。また、きのこの傘部分が肉厚になりやすいようだ。

ドライミールポテトを用いてきのこを栽培すると生育に顕著な効果がみられ、収穫量がアップする

鹿児島工場では、すでにすべてのじゃがいも残渣をドライミールポテトとして再利用している。これにより廃棄物と廃熱の処理に要する経費をゼロに抑え、さらにドライミールポテトの販売により若干の黒字化になった。

カルビーには国内に12の生産拠点があり、その12工場の再資源化率〔(再資源化重量累計÷廃棄物発生重量累計)×100〕は99.98%(09年度実績)と高い。また、12工場のうち10工場で再資源化率100%を達成しているが、さらに黒字化している工場はわずかで、鹿児島工場もその1つだ。

現在、鹿児島工場で取り組んだドライミールポテトについて他工場への横展開を検討している。ただし、それには市場の確保が重要なポイントになる。

「このようなビジネスは長く続けなければ意味がありません。そのためには、提携先も含めて市場性を見極めながらじっくりと進めなければなりません」(高橋さん)

ポテトチップスの生産工程から出された残渣は新たな商品に変わり、新しいビジネスを生み出した。そしてさらに市場を拡大すべく、いま、その間合いをじっくりと計っている。