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「SPLYZA(浜松市)」手軽な残像動画アプリ開発

この記事の内容

  • アマチュアスポーツマンの上達をサポートする解析アプリを開発
  • 世界20カ国でスポーツアプリ1位獲得、経産省など複数から優秀賞など受賞
  • 今後は団体スポーツ向け分析アプリで販売攻勢をかける
開発したアスリート向けアプリを説明する土井代表(HI-Cube内の本社で)

「アマチュアスポーツマンの『もっと上手くなりたい』を叶える」を標榜するのが、スポーツ分析アプリケーションを開発販売するSPLYZA(スプライザ)の企業哲学だ。

ゴルファーなら誰もがスイングの良し悪しを確認したいし、飛距離を伸ばすフォームへの改善を願う。専用の施設に行けば、動画での確認はできるが敷居が高く面倒。もっと手軽に低価格で自身のスイングを確認したい、との要望に応えるアプリをSPLYZAが開発した。

野球、テニスなど球技だけでなく、扱う種目は選ばない。スマートフォン(スマホ)で撮影した動画をアップロードするだけでコマ送りのようなストロボモーションに変換され動いた軌跡が確認でき、改善への参考になるというアプリ。

トップアスリートたちは複数の高性能カメラで撮影し、多くの人手を介してフォーム分析を行っており、すでに仕組みはある。しかし「スポーツは99・9%がアマチュアで占められている。一握りの人向けではなくアマに特化すれば需要があると考えた」と土井寛之代表取締役(42)は、起業時の想いを語る。

土井氏は、大学卒業後に浜松市内のIT企業に就職。その後、好きなウインドサーフィン三昧の生活を楽しめることもありオーストラリアに滞在。帰国後、名古屋市の企業に就職した。そこで起業を考え前職の仲間2人に声をかけSPLYZAがスタートした。社名はsports(スポーツ)とanalyzer(アナライザー=分析装置)をかけ合わせて名づけたという。

「3人ともスポーツが好きで、アスリートに役立つアプリ開発を目指しアイデアを持ち寄ったが、初めて開発したアプリは相手にされなかった。ユーザー不在の開発だったから」と土井氏は振り返る。この反省から想定するユーザーを観察し、直に声を聞いてニーズを探った。こうして撮影した動画を残像動画に自動変換するアプリを開発。世界20カ国でスポーツアプリ1位に輝いた。

2015年にはマイクロソフトの「イノベーションアワード」で優秀賞を獲得。16年には経済産業省主催のグローバルな新規ビジネス創出イノベーターを育成するプログラム「始動Next Innovator2016」に採択された。

個人向けアプリに次ぐ展開として力を入れているのが、団体スポーツ用の分析アプリ「SPLYZA Teams」。サッカーなどの試合映像を選手やプレーごとに編集でき、チーム全員で戦術分析できるのが特徴だ。試合後のコーチからの指導は、一方通行になりがちで選手たちに想いが届かないケースが多い。このアプリなら、分担して一人一人の動きなどを分析するので選手たちが主体的になり、チームのレベルアップに大きく寄与する。今月末に始まる全国高校ラグビー大会では、出場校のうち6チームが同アプリを採用している。

利便性の高いアプリも知ってもらわなければ事業拡大にはつながらない。今年8月に3社の代理店と契約。来年4月からは大手教育支援事業の系列企業が手掛ける教育サービスのメニューに採用されることも決まった。ようやく軌道に乗り始めた状態といえよう。来年末には単年度黒字へと転じるのが当面の目標だ。

そのため「週3日は出張し顧客開拓とニーズ把握に努めている。ただ、マーケティング力強化が今後の課題」という。「これまで困った時にHI-Cubeのマネージャーから人を紹介してもらえたことが本当に助かった。多彩なイベントへの誘いやアドバイスもありがたく、成長過程で生じる課題も力を借りて乗り越えられる」と土井氏は入居メリットを語る。

企業データ

企業名
SPLYZA
Webサイト
設立
2015年5月
従業員数
8人
代表者
土井寛之氏
所在地
静岡県浜松市中区和地山3-1-7HI-Cube内
Tel
053・523・7719
事業内容
アマチュアを対象にしたサッカー、野球、ゴルフなど個人向け、チーム向けスポーツ用分析アプリケーションの開発・販売