中小企業NEWS特集記事

「加茂精工」人材育成の現場から

この記事の内容

  • 社員とともに5Sを推進
  • 同じ講義を受け、共通の言語と意識を育む
  • 独創技術をNHK番組でも紹介
「工場管理者養成コース」を修了した社員たちと今瀬氏(前列中央)

加茂精工(愛知県豊田市)の2代目社長、今瀬玄太氏は2002年、中小企業大学校瀬戸校(同瀬戸市)の看板コース「工場管理者養成コース」を受講する。大学で経営工学を学び、大手機械部品メーカーの営業職を経て、父親が経営する同社に入ってまもなくの20代後半の頃。「率直に言って、最初はとっつきにくく、戸惑いもあった。それでも、徐々に慣れ、当社の工場で働く社員と一緒に5S(整理、整頓、清掃、清潔、しつけ)などに取り組んだのが、今思えばいい経験となっている」(今瀬社長)。

同コースでは受講者それぞれが自社工場の課題解決を実践する。今瀬社長はボール減速機内部のボール溝加工の時間短縮を課題とし、時間短縮策の一環として5Sを徹底。併せて、標準作業票の作成や工場レイアウトの変更にも取り組み、結果として10%以上の時間短縮を図った。

今瀬社長は自らの体験を踏まえ、グループリーダーなど現場中堅クラスの社員を毎年のように工場管理者養成コースに送り込んでいる。「新しいことを社内に浸透させるのは至難の業。その点、同じ講義を受けて知識を共有し、共通の言語、共通の意識を持っていれば、何をやる時でもスムーズにいく」。今瀬社長は、継続受講の狙いをそう説明する。

今瀬社長自身は工場管理者養成コースに続き、05年に経営管理者養成コースも受講している。当時、専務取締役のポストに就き生産管理や企画系の仕事を担当していた。なりたての経営者として、マネジメントとは、を知ることの必要性を痛感し、自らの意思で同コースの門を叩いた

同コースでは、自社の中期経営計画づくりになど取り組んだ。今瀬社長は「学生時代に学んだ経営工学と比べて、より実践的で幅広い経営学が身に付いた」と振り返り、「勉強もさることながら、そのあとの懇親会が楽しくて役に立った。当時、一緒に受講した人たちとは今でも飲みに行く」とネットワークづくりの効用にも触れる。

同社はボール減速機をはじめとする独創的な機構部品の開発・製造会社として知られている。多くのモノづくり企業が参戦する全国コマ選手権の地区大会で優勝し、NHKテレビの人気番組「超絶 凄ワザ」が取り上げる(2016年6月4日放送)など、話題にも事欠かない。瀬戸校で学んだ今瀬社長や中堅社員らが、小粒ながらもキラリと光る同社をさらにブラッシュアップし、その輝きは一段と増しそうだ。

企業データ

企業名
加茂精工株式会社
設立
1980(昭和55)年
資本金
8,500万円
従業員数
約70人
事業内容
ボール減速機など機械エレメントの開発・製造販売