中小企業の海外展開入門

「ユニカホールディングス」信頼が会社の未来を作る

代表取締役社長 安見義矩氏

ユニカホールディングス株式会社は、コンクリートドリルやコアドリルなど電動先端工具の製造販売を行っている会社である。電動先端工具は、マンションの内装工事から橋、ビル、道路工事、造船などに使用される。ユニカホールディングスは、20年ほど前に競合企業に先んじて中国展開を実現したことを機に、積極的な海外展開を図っている。

ユニバーサルカンパニーを目指して

ユニカという社名は、同社がユニバーサルカンパニーを目指すことから1971年に付けられた。日本のマーケットは限られている。ユニカがユニバーサルカンパニーを目指すのは、会社の将来を作っていくためには海外展開が必要だと考えるからだ。

海外展開を具体的に考え始めたのは今から30年ほど前のことだった。当初より中国マーケットに魅力を感じ、現地のマーケティング調査も行い、その後の中国経済の成長からマーケットの拡大を確信し、1995年に中国工場(廊坊日質機械工具有限公司)を設立した。中国工場では中国向け製品の生産を行っていたが、一部の製品は日本にも輸出した。

中国展開と同時期にベトナムへの展開も検討していた。ベトナムを拠点とすれば、アジアはもちろんインド、アフリカ、中東までをもカバーできる。加えてベトナム人の非常にまじめな人柄や勤勉さも魅力だった。中国展開の2年後の1997年、ベトナム・ホーチミン市に工場(現在のUNIKA VIETNAM CO., LTD.)を設立した。

日本から製品を輸出すれば為替変動の影響を受けるが、海外から海外へ商品を流通させるなら為替リスクヘッジも狙える。また、中国やベトナムのようにコスト競争力のある地域に工場を持つため、価格面でも自社の優位性をアピールできる。海外にはドイツやフランス、ポーランドなどヨーロッパを中心に競合企業も多いが、ユニカ社製の製品は品質の高さと価格競争力の高さで海外でも知られる存在となった。

1995年に設立された中国工場(廊坊日質機械工具有限公司)

現地スタッフが離職しない組織風土

中国とベトナムのトップは皆現地出身者である。それだけでなく、アメリカやヨーロッパ、ロシアを担当しているのは日本本社で勤務するアメリカ人であり、インドと中東、アフリカはインド人に担当させている。事業は、展開地域あるいは周辺地域の出身者に任せるというのがユニカの方針だ。

中国でもベトナムでも現地スタッフの会社への忠誠心は高く、退職者はほとんどいない。その理由は、それぞれ中国人とベトナム人が現地法人を経営しているからだという。海外展開する日本企業の中には日本流の経営を現地に持ち込もうとする会社もあるが、ユニカでは日本のスタイルを持ち込むのは生産管理と技術だけだ。現地企業の運営管理はすべて現地の責任者に任せている。

ベトナム工場の責任者は日本で苦労して勉強を重ね大学院まで卒業したという努力家だ。ある会社で研究員として働いていた時に安見義矩社長と出会いユニカに入社した。中国工場の責任者も縁あって出会った人材だったが、話をするうちにユニカに入社したいと申し出てきたという。いずれも優秀なだけでなく素晴らしい人材であったが、彼らには業務だけではなく道徳や文化的なものも含めた日本人の考え方を教え、現地に派遣した。

安見社長は年に3-4回しか中国とベトナムの工場には訪問しないが、彼らからは週次あるいは日次で業務の進捗報告が来る。安見社長はその内容をすべてチェックして彼らに指示を出している。直接顔を合わせる機会は少ないが、コミュニケーションの頻度は高い。安見社長は「成功させるために社員を指導することは社長の責任であり、何でも任せきりにしてしまうのは無責任だ」と断言する。これは国内でも海外でも一緒だ。

こまめに安見社長からの指導を受けている現地企業の責任者たちは、会社の方針や考えを現地のスタッフにわかりやすく伝え浸透させている。社員の定着率は非常に高く、役職者はほとんど退職しないという。それだけ現地の社員が働きやすい組織づくりがなされている。また、努力を適正に評価する仕組みも導入している。もちろん、入社の段階で人材を見極めることができていることも社員の定着率の高さの背景にはあるのだろう。

1997年に設立されたベトナム工場(VIE-PAN INDUSTRIAL CO., LTD.)

信頼関係を構築する

安見社長に人材を見極めるポイントを尋ねた。ユニカでは能力の前に人格をみるという。それは「他の人を大事にする」という気持ちを持っているかどうかということだ。単なるテクニックでは組織を動かすことはできない。ユニカは、人格が組織を動かすと考える。他の人を大事にするという気持ちを持っているからこそ他者との信頼関係を構築できる。そして人と人との間の信頼関係が企業間の信頼関係につながり、会社の将来に対する信頼につながってくる。

さらに社員が「この会社は、自分たちの将来を作ってくれている」と考えることができてこそ、社員は努力するものでもある。この考え方は日本だけでなく、どの国においても当てはまることだという。

いつかはアフリカに

安見社長は今後インドや中東、アフリカへの展開を検討している。インドはまだマーケットが小さいが、あと数年のうちに拡大すると考えている。すでに中東での事業展開実績もあるが、インドからカバーしていきたいという。また、アフリカの中には急激に発展している都市もあり、それが今後のアフリカ経済の拡大を牽引していくだろう。

また、「グローバル展開をしながら、企業規模を拡大し社員の将来を作りたい」と安見社長は語る。国のインフラが整備されるたびに、その国の未来が作られる。そして、その中でその事業に携わる社員たちも自分の未来をイメージする。

常にユニバーサルカンパニーを目指し続けてきたユニカホールディングス。今後も世界で未来を作り続けていくことだろう。

企業データ

企業名
ユニカホールディングス株式会社
Webサイト
代表者
代表取締役社長 安見 義矩
所在地
東京都千代田区岩本町2-10-6
事業内容
コンクリートドリル・コアドリル等各種電動先端工具の製造販売等