中小企業の海外展開入門

「小倉クリエーション」伝統の「小倉織」で欧州、東南アジアへ挑む

豊前小倉藩(福岡県北九州市)の特産物であった「小倉織」は、たて縞模様の木綿布で、江戸時代初期から袴や帯などとして織られていた。この生地の特徴は、たて糸が横糸の3倍密に織られることから立体感あふれ、光沢が絹のようにあざやかなことだ。

丈夫でしなやかな質感の小倉織は、明治時代には男子学生服として全国に拡がったものの、昭和初期になると一旦途絶えてしまった。

それを1984年、染織家の築城則子さんが約2年の試行錯誤の末に復元に成功し、草木染めした糸を手機(てばた)で織って現代の小倉織として再生させた。さらに1996年、小倉織を量産するため、築城さんの実妹・渡部英子さんが小倉織の製造・販売会社「小倉クリエーション」を設立した。広く小倉織を世に知らしめるためには量産が不可欠であり、そのためにも機械織りにしなければならない。9年の歳月をかけて同社は機械で織る広幅(140cm)の小倉織を完成させた。

伝統工芸品の小倉織を現代に復元させた「縞縞 SHIMA-SHIMA」

初めての海外展示会で商談成立

この機械織りの小倉織は、築城さんのデザイン・選糸・監修のもと、2007年に「縞縞 SHIMA-SHIMA」のブランド名で本格的にリリースされた。従来の手織りに比べて広幅の生地になったことから、カーテンやクッションなどのインテリアおよびファッションへと用途展開の可能性が広がった。

縞縞 SHIMA-SHIMAは2007年に「福岡県産業デザイン賞」で大賞を受賞し、その際、社長の渡部さんは関係者から海外で商品展開することをアドバイスされた。海外の展示会に出品すれば、海外はもとより国内のトップバイヤーの目にも触れる。効率的なセールスになると渡部さんは判断した。

翌2008年、縞縞 SHIMA-SHIMAが、生活関連産業ブランド育成事業「sozo_comm」(経済産業省後援)の海外出品商品に選ばれたことから、ドイツ・フランクフルトで開催の世界最大の消費財見本市「アンビエンテ」に初めて出展。風呂敷、テーブルセンター、ランチョンマットなどのインテリア小物を展示した。

「この展示会に来場されたニューヨークのミュージアムショップやスイスの百貨店とはその場で商談が成立しました」(専務取締役・渡部弥央さん)

初めての海外出展にもかかわらず、縞縞 SHIMA-SHIMAはニューヨークやスイスのバイヤーの目に止まり、テーブルセンター、ランチョンマットの受注に成功する。

「日本人にしか発想できない色彩の合わせ方だと外国人バイヤーから評価されました」(渡部弥央さん)

小倉織は、たて糸が多く密度が高いため繊細な生地に仕上がる。それによって生まれる、木綿でありながら絹のような光沢が外国人を魅了したようだ。さらに、アンビエンテでは海外のみならず日本のバイヤーからもオファーがあり、後日、百貨店や通販カタログ会社との取引が成立した。まさに、期待した効率的なセールスが現実のものとなった。

海外の展示会では初出展から商談を成功させた

キーパーソンを得て欧州で販路拡大

2009年のアンビエンテにも出展し、セレクトショップなどの小売店オーナーとも商談を取りまとめた。また、同年にはフランス・パリで開催される世界最大級のインテリア見本市「メゾン・エ・オブジェ」にも出展。2年連続してドイツ、そしてフランスへと海外の展示会へ出展しながら、小倉クリエーションは欧州での販売の足掛かりも築いていった。

フランスでは、築城さんが知己を得た、日本人とフランス人の2人が運営する事務所とエージェント契約を結んだ。また、2011年にはメゾン・エ・オブジェのほかにイタリア・ミラノの国際家具見本市「ミラノサローネ」にも出展。これをきっかけに現地で通訳をする日本人女性にイタリアおよび周辺でのセールスを委託することになった。

その結果、フランスでの市場開拓を委託したエージェント事務所の働きかけにより、縞縞 SHIMA-SHIMAが世界的有名ファッションブランドのメンズ用ジャケット・パンツの生地として採用された。

このようにフランスやイタリアでの販路開拓を委託できるキーパーソンと出会い、市場への攻勢を整えるとともに、小倉クリエーションの販売戦略も当初のインテリア小物から素材としての生地を主体とする方向へ切り替えていった。素材としての生地を輸出するほうが収益の観点からもビジネスとして効率がよいと判断したからだ。

インテリア小物および素材としての生地と幅広く製品展開する

海外展開での3つの留意点

小倉クリエーションが海外の展示会へ出展する際に留意することは、(1)商談に入る相手のwebサイトを必ず確認する、(2)可能な限り相手の店舗などを訪問する、(3)契約締結後の入金を確認してから商品を輸出する、などだという。

現在、同社の売上の10%が海外向けだが、将来的には30~40%に成長させたいという。そのためにも縞縞 SHIMA-SHIMAを外国人にも理解してもらえるよう、自社サイトの英語版をさらにグレードアップさせ、また、海外でも通販で縞縞 SHIMA-SHIMAのグッズが購入できるようにネットショップを開設する予定だ。

同社は、欧州では縞縞 SHIMA-SHIMAの生地を主体にビジネスを進めているが、東南アジアでは少し異なるビジネスも展開する。今年の暮にリニューアル・オープンされる台湾のマリオットホテル内の中華レストランでは、店舗の内装、テーブルウエア関係のすべてに縞縞 SHIMA-SHIMAが採用された。また、マレーシアでは日本のセレクトショップで縞縞 SHIMA-SHIMAの小物製品が販売されている。欧州、そして東南アジアへ。まさに、伝統工芸品の小倉織、縞縞 SHIMA-SHIMAは世界へと広がろうとしている。

企業データ

企業名
有限会社小倉クリエーション
Webサイト
代表者
渡部 英子
所在地
福岡県北九州市小倉北区大手町3-1-107
事業内容
繊維製品のデザイン企画・製造・販売、ほか