中小企業の海外展開入門

「株式会社TRINUS」Success Case Introduction

2020年 6月 5日

メーカーに眠っている技術とデザインからユーザーのワクワクを生み出す

花色鉛筆

株式会社TRINUSは設立5年目、メーカーとデザイナーとユーザーの3点を「とりなす」ような新しい事業に取り組んでいる会社だ。この事業によって生み出された「花色鉛筆」は、断面が日本の伝統的な花の形になっているだけでなく、削りかすが花びらの形になる遊び心にあふれた色鉛筆。今回は、この新しい事業の取り組みや展示会に出展したきっかけとその結果、さらには今後の海外展開の取り組みなどについて探る。

INTERVIEW
ありそうでなかった新たな事業への挑戦

自社サイト
自社サイト上でメーカーの技術が活かせるアイデアを募集、Webサイトを訪れた人も、どのアイデアが良いか評価できるようになっている

代表取締役の佐藤真矢氏が前職でコンサルタントとして多くのメーカーと話をしているうちに、そのメーカーが持つ優れた技術が十分に活用されていないことに気づいたそうだ。そこで、2014年に、そのような技術をデザインの力によって昇華できるように、という思いから佐藤氏が会社を立ち上げた。まず、新商品開発をしたいメーカーの技術を自社サイトで紹介する。次に、国内外の4,000名以上の登録クリエイターがこの技術を生かした全く新しい商品のデザインや企画をプラットフォーム上に投稿。その後、投稿された企画をメーカー担当者とともにセレクトし、採用した企画をブラッシュアップしながら商品開発を行っていく。商品化されると、今度は自社のクラウドファンディングサイトを用いてテストマーケティングを実施、ユーザーの声を反映させながら商品のさらなるブラッシュアップをしてマス販売を目指していく。技術の選定から商品のPRまでの一連の過程を、メーカーに併走しながら一貫して行っていることが株式会社TRINUSの最大の特徴だ。

企画から3年、ようやく完成した新しい鉛筆

今回お話を伺ったコーポレート部門マネージャーの金子優実さん
今回お話を伺ったコーポレート部門マネージャーの金子優実さん

「花色鉛筆も3年かかってようやく商品化に至りました」と語ってくださったのは、コーポレート部門マネージャーの金子優実さん。「廃棄古紙を原料としたMAPKA(マプカ)という新素材を使った新しいアイデアをクリエイターから募ったところ、140件近いアイデアが集まりました。その中から、削りかすが花の形になる色鉛筆という驚きのあるアイデアが採用されて商品化することになりました」。しかし、決まっていたのは素材が『MAPKA』で、デザインが花の形をした色鉛筆、という点のみ。まず、この素材を成形できる工場を探すところから始まった。さらに、特殊な花の形に押出成形するため、適合する材料の研究開発に約1年を費やし、「材料開発、押出成形、パッケージング、と多くの企業のお陰でようやく商品化することができたのが花色鉛筆なのです」。その後、花色鉛筆は国立新美術館のミュージアムショップ『SOUVENIR FROM TOKYO』や『MoMA Design Store』をはじめとする高感度なライフスタイルショップで取り扱われるようになる。国内での販売実績から、海外の方がおみやげとして購入されるケースが多いと聞き、さらに海外展開を意識していったそうだ。また、インスタグラムなどのSNSを使い、日本語・英語を使って商品を紹介するにつれ、海外からの直接の引き合いも増えたという。「今では、フランスなどのヨーロッパ圏やアメリカ、ブラジルなど15カ国で販売されています」と嬉しそうに語っていただいた。

欧米以外にも積極的に海外展開を目指したい

展示台の様子
展示台に高さを出すことで、バイヤーの目を引き付けられるように工夫

また、展示会への出展がきっかけでオーストラリアやフランスの小売店で販売されることが決まった。削りかすが花びらの形になるデザインだけでなく、廃棄古紙を使っていて環境に優しいという点がバイヤーに評価されたそうだ。さらなる海外展開を目指して、今年はフランスのメゾン・エ・オブジェにも出展する。また、将来的には欧米だけでなく、中国や台湾などアジアにも進出をしていきたいとお話しいただいた。「花色鉛筆は断面が日本の伝統的な花の形になっているという意味では日本らしさがあるのですが、それ以上に削りかすにも美が表現されているという特徴を前面に出して、さらなる販路開拓をしていきたいです」と金子さん。花色鉛筆が描く海外展開の未来に今後も目が離せない。

※掲載している内容は取材当時(令和元年度)のものです。

企業データ

企業名
株式会社TRINUS
Webサイト
代表者
代表取締役 佐藤 真矢 氏
所在地
東京都渋谷区桜丘町31-14 岡三桜丘ビル SLACK SHIBUYA 903
創業
2014年
事業内容
日本の技術、デザイナー、エンドユーザーの3つを取り成し、新しい価値を生み出すオープンプラットフォームを提供。インテリア雑貨、文具、アパレル雑貨などジャンルの垣根を越えて、生活を楽しくする小さなイノベーションを生み出している。