MAMOの販売は出だしから順調だった。母校の高校と大学から注文を受けたのを皮切りに、多くの大学などがMAMOを採用するようになり、初年度だけで20チームの顧客を獲得。その後、早稲田大学や明治大学などにも販路を広げ、現在は約150チーム。大学でのシェアはトップになった。前職での営業経験をフル活用したと思われるが、半田氏が営業をかけたのは数件だけ。「ほとんどは口コミで、先方から注文が入ってきた」というのが実態だ。指導者に対する素直な態度、練習に熱心に取り組む姿勢など、半田氏の現役時代を知る先輩や同僚らが「アイツがやっているなら相談してみよう」として発注するとともに、他のレスリング関係者にも声をかけていたのだ。半田氏がこれまでに築いてきた信頼と人望が、立ち上げから間もないMAMOを大学ナンバーワンのブランドに押し上げた格好だ。
もちろん品質は顧客の信頼に応えるものである。選手からの声に耳を傾け、半田氏自身も納得いくまで改良していく。たとえば生地。当初、「縦伸びが弱く、きつく感じる」という感想を選手から聞いた半田氏は生地探しに奔走。ただ伸びればいいものでもない。生地が伸びて薄くなると中の下着が透けてしまい、とくに女子選手は気になる。縦伸びに強くて透けにくい生地を求め続け、これまでに5回も使用する生地を変更したという。
デザインにも凝っている。シングレットのラインや柄は通常プリントでデザインしており、バリエーションも限られている。これに対し、MAMOでは、縫製を行う大栄商会の協力のもと、生地を丁寧に縫い合わせることで独自のデザインを生み出している。「MAMOを着ると体つきがシャープに見える」と半田氏は胸を張る。また、顧客との話し合いでデザインを決めているため、「他のチームとデザインがかぶることがない」として選手から喜ばれている。
“こだわりの塊(かたまり)”とも言えるMAMOはトップ選手の信頼も勝ち得た。東京五輪で金メダル(女子フリースタイル50kg級)を獲得した須﨑選手は、早稲田大学でMAMOのシングレットを着用していたが、「卒業してからのユニフォームもMAMOでお願いできるか」と要望。キッツ(東京都港区)に所属している今もMAMOを着て試合に臨み、2023年9月の世界選手権で優勝して2大会連続の代表に内定した。五輪で代表選手は大手メーカー製のシングレットを着用するが、半田氏は「レスリングを楽しんでいるとき須﨑選手は無敵になる。パリではぜひ楽しんできてほしい」とエールを送る。