マーケティング本部係長の青木紗千恵さんはこのヒット要因について説明する。
「いまでこそブルーチーズなどのナチュラルチーズが一般化していますが、当時の日本はチーズ特有の風味に抵抗感をもつ人が少なくない時代だったようです。そうした中、『チーズ鱈』ではあまりクセのないチーズを開発し、それをシート状の鱈で挟んで商品化しました。チーズをおつまみ化させた画期的な商品で、チーズ特有の風味をマイルドにするなど、誰もがおいしく食べられるように工夫したことで消費者から支持される商品になったのだと思います」
「イカは珍味の王様」といわれた時代、「チーズ鱈」はイカではなく鱈を用いて「珍味の王様」をしのぐ勢いで売上げを伸ばした。まさに売上げが毎年倍増し、それに対応するため工場の生産ラインをひっきりなしに増設した。さらに、生産効率を上げるために生産現場では間断なく工程改善が進められた。
そして87年に登録商標を取得した。それでも競合他社が類似商品で追い上げようとしてきたが、品質で差別化を図ることでその追撃を許さなかった。例えば、差別化の1つに自社製のチーズがある。通常、プロセスチーズをつくる際に原料のナチュラルチーズを溶解するが、この加熱によってチーズの味に大きな変化が生じる。しかし、同社ではその変化を小さくするノウハウを有し、チーズのおいしさを保つ製法を確立していた。
また、味のバリエーション拡大にも早期から取り組み、からし味、わさび味などの商品のリリースを通して気づくことも多かった。その気づいたことの中でなによりも、原料としてのチーズの重要性を再認識できたことが大きかった。からしやわさびなど味の変化球をチーズに加えるのではなく、あくまでチーズそのもののおいしさを追求する。いわば直球での勝負が大切ということだ。「チーズ鱈」なのだから、やはり差別化のポイントはチーズであるべきだ。そう再認識すると、原料に用いられるナチュラルチーズの製造技術を開発し、さらに世界各国のチーズにも目を向けていった。