入社するまでものづくりの経験がなかった田城氏が手掛けたことの一つが「株式会社タシロ」のブランディング。まずは自社のことを知ろうと、取引先に「自社の強みは何か?」と聞いて回った。すると「強みは人を含めた高い品質」との答えが多く返ってきた。「製造業界のコンビニ」を謳い文句にするだけあって、早いレスポンスや柔軟な対応が取引先には好評だったのだ。「ウチの強みは“人”。その強みを伸ばし、“人”で勝負していきたい」との思いを強くした。
とはいえ、多くの中小企業と同様、人材確保は容易ではない。その当時、20人弱の社員の大部分は技能実習生など外国籍。「日本人の応募はきわめて少なかった」(田城氏)という状況だった。そこで田城氏は前職での経験を生かし、人材を確保するための土台作りに取り掛かった。具体的には▽ビジョンとミッション、キャッチコピーなどの策定▽就業規則の見直し(完全土日休み、半日休暇制度、時短正社員制度など)▽人事評価制度の導入▽社員教育の充実▽認証や表彰などへの応募・申請▽自社製品の企画・製造・販売事業の開始▽展示会などイベントへの積極的な参加(年10回以上)—といったもので、これらの取り組みを2~3年の期間をかけて実行していった。
このうち社員教育では、田城氏自らが講師となり、ビジネスマナーなどの研修を実施した。また、社員の多能工化などを進めることで、「24時間以内納品可能」とする「製造業界のコンビニ」の看板を維持しながら働き方改革も実現。「完全土日休みはもちろん、残業はゼロ」(田城氏)という。さらに認証・表彰では2019年に「神奈川がんばる企業エース」認定を受けた。毎年10社程度しか選ばれず、田城氏は「その年の県内中小企業のトップ10に入った」と胸を張る。
採用面では、「大企業と同じ土俵で勝負していてはいけない」として、地元・平塚市を含む湘南エリアでの認知度向上に注力。エリアを絞った求人情報を検索できる求人サイトを活用した。こうした地道な努力の積み重ねが奏効したようで、それまで年間10人前後だった応募者数は2019年以降、徐々にではあるが、年を追うごとに増加してきたのである。