一方、社員からプロジェクトチームの参加者を立候補で募集しようとしたが、「恥ずかしがり屋が多くて、なかなか手が上がらなかった」(近藤氏)そうだ。そこで近藤氏自ら参加者を指名した。副業・兼業人材のサポートはきめ細かく、プロジェクト開始の際は、参加メンバー一人ひとりと時間をかけて面談し、コミュニケーションをとっていたという。
月2回のペースでプロジェクトの打ち合わせが行われ、開始後の2カ月間は「そもそも何をつくるか」という議論を続けた。「できる」「できない」を問わず、広くアイデアを募集した。アイデアは、ホワイトボードを埋め尽くすほどだったという。
「キャラクター製品を作りたい」という意見が多く、実際に可能性を探って断られることもあった。そんな作業も大きな学びとなった。実現可能性が難しいアイデアを一つずつ外していき、最終的にまとまったのが時計の文字盤だった。「加工的にも難しくなく、当社の技術を生かした加工ができる」と多くの票を得たそうだ。
実際の製作ではアルミを削り出す自社の技術を活用したほか、新規性やクリエーティブな感性を取り入れようと樹脂素材のレジンを使用した。モダンな印象のあるモンドリアン風と、スタイリッシュな印象のあるグラデーション風の2つの文字盤を完成させた。
プロジェクトに参加した山本和範氏は、「自分たちで考えないと形にならない、というところはこれまでの部品製造とは違う作業だった。同僚に設計のことを尋ねることもあり、いままで考えたことがなかった社内の別の部署の仕事や技術について知る機会にもなった。大変だったが、自分たちのアイデアが形になる喜びや面白さを知った」と話す。
立ち上げ段階では、手を挙げられず、自分の意見を言えなかった社員たちの意識にも変化が表れた。第2弾で開発した道具箱は、社員から「自分でこういうものを作りたい」と参加の申し出からスタートしたという。また、「別のアイデアをやりたい」という社員も現れ、第3弾に向けた取り組みも検討されている。
「最初はみんなあまり意見を言えなかったが、今は堂々と意見を言うことが普通になってきた」と近藤氏。「社員のモチベーションをアップさせたい」という近藤氏の目標がかなってきた。ただ、本格的な商品化について近藤氏は、「もう少し完成度を高めたい」と慎重だ。「販売するとなると、そんなに安くは売れない。材料費なども含めて詰める必要がある」としている。現在も副業・兼業人材との契約は継続しており、商品化というもう一つの目標に向けて、着実な歩みを進めている。