生産性向上に取り組む企業事例

オンラインショップをスマホ対応にリニューアル 催事販売、直売店およびオンラインショップによるリピート販売とブランド認知拡大【有限会社石黒商店】(愛知県蒲郡市)

2022年 8月 12日


オンラインショップをスマホ対応にリニューアル【有限会社石黒商店】

愛知県蒲郡市でえびせんべいを製造・販売する石黒商店は2020年にオンラインショップをリニューアル。従来のパソコン向けサイトに加えてスマホにも対応したことで、アクセス数は増えて売上も順調に伸びている。直売店での販売に加え、百貨店催事場での販売、首都圏の駅ナカへの出店増加なども後押しして認知度が高まり、全国から注文が来るようになった。「えびせんべいといえば是蔵」をめざして販路拡大への工夫を続けている。

自社ブランド「変わり種えびせん 是蔵」をシリーズ化

石黒商店のオンラインショップでは、25種類以上のえびせんべいを販売している。地元の愛知県で採れる素材を中心に使用し、ノンフライで製造したものだ。「きゃべつ塩せんべい」「鰹醤油せんべい」などの「変わり種えびせん 是蔵」シリーズや、「蒲郡みかんせんべい」「ショコラせんべい」など甘いせんべいの「sweets corezo」シリーズなどがある。2020年と比べると、ホームページへのアクセス数は70%アップ。ネットショップによる通信販売での売上も増加した。

石黒商店の本社は愛知県蒲郡市三谷町にある。1989年に父の石黒辰夫さんが現在の「石黒商店」を設立。ピロー包装機導入により、せんべいの包装業がメインになる。2004年には石黒裕之さんが20代の若さで社長に就任した。2011年に、取引先からえびせんべいを製造する機械を譲り受けたことで、自社でえびを主要原料としたえびせんべいの開発・製造に着手。SNSを通じて出会った地元企業経営者・百貨店の勧めもあり、下請けではなく自社製造・自社販売を中心としたせんべいの売上を増やす経営方針に転換した。

店舗販売と同時に力を入れたのは、百貨店での催事販売だ。全国に目を向け、有力な催事場には積極的に出店し、味を知ってもらおうと活動しはじめた。催事場で試食してもらうと、購買率は90%にものぼる。店頭でのお客様との会話をもとに、新たな商品開発もまわりだした。

同時に考えたのは、催事場で買ってくれた人がリピート購入してもらうための工夫だ。「おいしい、また買いたい」と言ってくれる人にはぜひ買って頂きたいと、電話やファックスで注文を受ける通信販売を始めることにした。さらに、常時買って頂くためにネット販売を活用できないかと考え始めた。

催事場出店の様子
催事場出店の様子

ホームページを開設し、オンライン販売も開始

最初に作ったのはブログだった。まずは催事場での販売情報の発信から始めたのだ。また、販売促進のために自社のホームページを開設し、オンライン販売も検討しだした。当初は、知名度や信頼性のある、モール型の大手サイトからの出店も検討したが、知人に相談すると、システム利用料や広告費などの費用が予想より多くかかることがわかった。むしろ、自前でオンライン販売をする方が直接お客様にお届けできるのではないかと、自社サイトでの販売を決めた。

お客様や商談先様からはご自宅遣い用にお買い得商品や「割れせん」の要望は多い。
しかし、石黒商店のせんべいはそもそも製造中にほとんど割れることがない。むしろ、ギフトにも使えるようなしっかりした商品として、またおいしさ、楽しさという魅力を伝えていくことを重視して、サイトのデザインや商品ラインアップを決めていった。

ネットショップを開設しても、売上はすぐには伸びなかった。ある日、顧客から「購入方法がわからない」と問い合わせが来た。オンラインショップの画面上で利用方法を説明したページは存在するものの、実際に読んでいる顧客は少ないようだった。
「問い合わせが来れば対応できますが、購入に手間取って黙ってオンラインショップから離れてしまわれては困ります。どうすれば顧客に購入までたどり着いてもらえるのかと思案しました」と、商品のターゲット層である50代以上の知り合いたちに頼んで、ネットショップで購入する様子を観察させてもらった。自身の両親や経営者仲間などが協力してくれたという。

オンラインショップでの商品購入までの過程を観察していると、記載した文字を読んでいなかったり、買い物かごの存在がわからなかったりと、さまざまな問題点が見えてきた。Webサイトのつくりが利用者に適したものではなかったのだ。その問題を元に、細かく改善を重ねたことで、徐々に売上が伸びはじめた。

人との縁にも助けられた。「決済システムに詳しい知人が、通販サイトのお客様の購入までの動きなどの情報を提供してくれました。『このサイトは、きれいなページだけれど使い勝手が悪い』『ここは決済料が高いから、おすすめできない』などです。実際に利用した方の情報なので、ありがたいです」と石黒さんは話すが、最終的には、素人でもシステムが手軽に扱えて、簡単な手順でクレジットカード決済ができる操作性のよさで決めたそうだ。

見やすくサイトをリニューアルし、売上増加へ

オンラインショップの様子
オンラインショップの様子

百貨店などで商品を購入した顧客にリピートしてもらうのか、新規顧客をターゲットにするのか、目的によってホームページの作り方は変わる。めざしたいのは、「えびせんべいといえば是蔵」という人が増えていくことだ。そこで、催事への出店、メディアへの告知、SNSへの投稿、そしてホームページの発信とオンラインショップの使いやすさ。これらを組み合わせて、お客様と接点を増やしていくことを重視する方針をもって、オンライン戦略を考えた。

さらに、顧客の心に響くにはどう表現したらいいかと試行錯誤しながら改良をつづけた。なかでもホームページ、オンラインショップの見やすさ、使いやすさは顧客の利便性にも関わるだろうということで、2020年度にリニューアルをおこなった。情報収集に努め、他のサイトも見ながら実際の使用感を比較した。

小規模事業者持続化補助金が使えることになったので、それをもとにリニューアルや、サイトへの導線強化をおこなった。たとえば使用する画像はプロのカメラマンに撮影してもらい、「おいしそう、買いたい」と思ってもらえる訴求力を重視して差し替えた。

各商品写真の工夫
各商品写真の工夫

スマホ向けサイトも新しく開設した。オンラインショップを開設した頃は、ネットショップはパソコンからの利用が7割、スマホからが3割だったのが、7年後の現在はスマホからの利用者が8割と逆転している。スマホサイトの開設は必須だった。

実は2020年度の売上比率としては、せんべいの販売業が9割、包装業が1割と、かつての比率を逆転している。包装業からせんべいの売上中心へという方針が軌道にのってきたのだ。しかしここで、新型コロナウイルス感染症が流行しだした。えびせんべいの購入目的は手土産ニーズが高かったこともあり、一時期は、売上がぐっと下がってしまった月もあった。

顧客のニーズにマッチしたサイトづくりや商品開発をめざす

それでも地道にできることを続けた、また人の移動が活発化しだしたなかで売上も回復していった。1つ意外だったのは、「結婚内祝い」としてのギフト購入の多さだ。商品に熨斗紙(のしがみ)をつける注文でそれがわかり、お歳暮よりも多いほどであった。ご利用いただいたお客様からは「食べておいしかった。これならお渡しした方たちに喜んでもらえる」というお声をいただいた。縁起物のえび、かに、ごぼうなどを使用しており、世代問わず受け入れられやすいのがえびせんべいの特徴。こうしたお客様とのやりとりや販売傾向から、次の戦略のヒントも見えてくるという。

自社サイトのほかに、フェイスブックとインスタグラムからも情報を発信している。特にユーザーの反応が早いインスタグラムへの投稿は、今後さらに強化する予定だ。SNSは催事情報の発信にも役立つ。ブログやホームページ発信とあわせて積極的な活用を進めている。

「是蔵」ブランドの投入から8年間で、首都圏の顧客が徐々に増加してきた。今後はリピーターだけではなく新規開拓も進めていく計画だ。コロナ禍で増えた「家飲み」向けのおつまみセット、母の日や父の日などの記念日に向けたセットをつくるなど、顧客ニーズにマッチした商品の開発をめざしていく。

石黒商店イメージ

企業データ

企業名
有限会社石黒商店
Webサイト
設立
1996年
従業員数
9人
代表者
代表取締役 石黒裕之 氏
所在地
愛知県蒲郡市三谷町東4丁目3