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自分らしく働きたい女性たちの“輝き続ける人生”を応援「スタイルクリエイト株式会社」
2025年 11月 17日
「女性に、輝き続ける人生を。」との企業理念を掲げるスタイルクリエイト株式会社(福岡県福岡市)は、子どもや家庭の事情などプライベートに左右されることなく自分らしく働きたいと考える女性たちを応援している。保育園を運営するほか、女性の起業やリスキリングを支援する事業を展開。創業者の麻生有花代表取締役は「夢をあきらめないでほしい」と女性たちへエールを送っている。
女性ゆえ、シングルマザーゆえの苦難

かつて福岡藩の重臣たちが“大名屋敷”を構えていたことに由来する福岡市の大名地区は、ファッションやグルメなど多くの店舗が建ち並び、若者たちでにぎわう活気あるエリアだ。トレンドの発信地ともいえる大名地区のオフィスビル内に2022年2月にオープンしたのが「CREATIVE ROOM」。全国的にも珍しい託児所付きコワーキング施設は、福岡県サテライトオフィス等開設支援事業を活用してスタイルクリエイトが設置・運営している。子育て中の母親をはじめ、自分らしく働きたいという女性たちを応援する同社の「ハブ(拠点)」となる施設だ。「子どもの様子を近くで見守りながらも仕事に集中できるスペースで、勉強会や講座などの会場にもなっている」と麻生氏は話す。
麻生氏は福岡県北九州市の出身。大学卒業後にアパレル関係の企業に勤務した後、結婚・出産で退職したが、その後まもなく離婚。長女を引き取り、職を探したが、「小さい子どもがいたら休むでしょう」などと冷たくあしらわれ、就活は困難を極めた。「それならば」と、ヘアメイクの技能を持つ知人と一緒に個人事業主としてウエディングプランナーの仕事をスタート。その後、再婚して2人目を出産したが、夫が立ち上げた会社の経営が行き詰まった。麻生氏は前職の経験を生かして新たにアパレル関係のEC事業を始めたところ、好調に推移。ウエディングプランナーの事業を併せて2015年9月にスタイルクリエイトを設立した。
起業後に離婚したが、シングルマザーとしてつらい経験は続いた。事務所の移転など事業拡大のため金融機関に融資の相談をしたときのことだ。「当時は離婚を前提に別居していたので、事情を説明すると、担当者の男性から『旦那さんがいなくて、どうやって返済するの』と言われた」。女性が融資を申し込む際、よくある話だ。麻生氏も少なからずショックを受けたが、「今に見てろよ」と気持ちを奮い立たせた。その数年後、事業を進める麻生氏のもとに、その金融機関から「融資させてほしい」との申し出があったという。
“子連れ出社”から保育園運営へ

保育所の運営は2017年にスタートした。きっかけは、その前年に福岡市内での仕事探しのイベントに求人企業として参加したことだった。40代の女性が「私を営業職として雇いませんか?」と麻生氏のもとを訪れた。話を聞くと、彼女は広告代理店に勤務していたが、夫の転勤で福岡市へ移り住み、仕事を探していたという。しかし、3人の子どもを育てている彼女も困難に直面。「すぐ休むでしょう」「働く時間に制限があるでしょう」などと言われ、自分が希望する仕事には就けずにいたのだ。麻生氏は彼女の熱意にほだされて採用することにした。
「彼女が入社してからは、お互い小さい子どもを持っていたので、子どもを事務所に連れてきて仕事をしていた。そのうちに、子育て関係の仕事もいいのでは、と考えるようになった」と麻生氏は振り返る。当時は深刻化する待機児童問題を受けて国が企業主導型保育事業を始めた時期で、行政(福岡市)のアドバイスもあって、2017年に第1号となる「港保育園」(福岡市中央区)を開設。自社の社員の子どもを中心に預かる企業主導型保育事業のスタートで、幼い子どもを持つ女性ら70人以上の求職者が集まり、うち11人を保育士や栄養士などで採用した。ちょうどこの頃に決まった「女性に、輝き続ける人生を。」という企業理念を具現化するように、スタイルクリエイト自体が、女性が自分らしく働けるフィールドとなった。
表面化した課題解決へ「人格者」を条件に右腕探し

新たなステージを迎えるなか、麻生氏は2018年に知人の勧めで福岡県中小企業家同友会に入会した。「法人化から数年で40人ほどが働く企業になったが、物事を判断する際のモノサシが個人事業主時代のままだった。個人商店ではなく会社組織を率いる経営者になろうという覚悟を持って入会した」と話す。
2018、19年に新たに3園を開設して認可保育園の運営に参入する一方で、課題も表面化していた。「保育士としては有能でも社会人としてのマナーや常識に欠けている人もいた」と麻生氏。さらにタイムカードの改竄という不正行為が発覚した。保育に関して専門知識を持たない麻生氏は右腕となる人材を探すことに。すると福岡同友会の先輩経営者から「右腕は人格者がいい。仕事ができるかどうかではなく、誰からも悪く言われることのない人を探してみて」とアドバイスを受けた。
そこで条件に合致する人材を社内で探したところ、当時は週3回勤務のパート保育士だった古澤由紀氏が思い浮かんだ。すぐさま麻生氏は「園長になってほしい」と打診。突然の申し出に対し、古澤氏も「ここなら自分が好きな保育ができる」と快諾した。その後、古澤氏もまた覚悟を持って期待以上の仕事をこなすと同時に、自己研鑽を重ねて成長し、現在は役員として保育事業部門を統括している。こうした異例の抜擢に対し、社内から反発や批判はなかったという。「まさに彼女が人格者だったからこそ」と麻生氏は話す。
起業を目指す女性たちへ「夢をあきらめないで」

コロナ禍の影響などで創業以来の事業を整理する一方で、2022年にコワーキング施設「CREATIVE ROOM」の運営を開始。さらに2024年からは創業支援事業に乗り出し、起業する女性をサポートする福岡県の事業「Bloom福岡」の運営事務局を受託している。「CREATIVE ROOM」では勉強会や交流会、ビジネスプラン発表会を開催し、麻生氏も先輩起業家として講師をつとめるなどして起業を目指す女性たちを応援する。
その際に麻生氏が強調するのが「夢をあきらめないでほしい」という点だ。「社会課題の解決など、このために自分は起業したい、といった明確な理由を持っていて、多少の困難があっても、軸がブレることなく、覚悟を持って行動し続ける人が成功している」と話す。さらに、「女性の起業は増えているが、ほどほどのレベルにとどまるプチ起業が多い。女性であるがゆえに直面する困難は多いが、より高いレベル、大きな規模にまで成長することを目指してほしい」とエールを送っている。
女性たちのリスキリングを支援する人材リソース事業も2024年にスタート。翌年にはキャリアアップを目指す女性を対象にした伴走支援型スクール「リーディアウーマンアカデミー」を開設した。昨今は、管理職など指導的地位に立つ女性の割合を2030年までに30%程度に高めるとする政府の数値目標を受け、思いがけず管理職に昇進する女性社員が増えていることから、「これまで同僚だった人、とくに男性社員が、今度からは部下となり、自分が指導していく際に困ることがないよう、管理職としてのスキルや心構えを身に付けられるようサポートしていきたい」と麻生氏は話す。
“全国展開元年”の第一歩、埼玉県内の保育園を取得

新規事業だけではない。既存の保育事業では事業エリアの拡大を進めている。これまで福岡市内の5カ所を運営していたが、今年10月に埼玉県内で5カ所の保育園をM&Aで取得した。待機児童問題が改善する一方で少子化に歯止めがかからないなか、こうした逆風をチャンスとみた麻生氏は、2025年を“全国展開元年”と位置付け、その第一歩として関東進出を果たしたのである。「これからは保育園が淘汰されていく時代。質の高い保育園が保護者から選ばれ、残っていく」と麻生氏は指摘する。
女性として、母親としての苦難を糧に歩んできた麻生氏。「女性に、輝き続ける人生を。」という理念を旗印に、事業を通じて女性の自立と成長を支えてきた。その挑戦は、福岡から全国へと、新たなステージへと進みつつある。
企業データ
- 企業名
- スタイルクリエイト株式会社
- Webサイト
- 設立
- 2015年9月
- 資本金
- 100万円
- 従業員数
- 96人
- 代表者
- 麻生有花 氏
- 所在地
- 福岡市中央区大手門2丁目2-8-201
- Tel
- 092-753-8900
- 事業内容
- 保育事業(保育園の設置運営・出張保育・ベビーシッター)、教育事業(リスキリング事業・研修)、人材リソース事業(創業支援・就労就業支援)