業種別開業ガイド

雑貨店

2020年 4月 16日

トレンド

(1)市場規模は増加傾向

日経MJの専門店調査によると、2015年度の雑貨業界の市場規模は1兆673億円であり、6年連続で増加している。ただし、雑貨店と一口にいってもその種類は多岐にわたる。取り扱う商材が幅広く、コンセプトや流行によって成功するかどうかが分かれる点には注意したい。

(2)コンセプトの明確化

消費者は価格だけではなく質も重視した商品を求めるようなっている。雑貨商品は100円ショップ等でも販売されているため、リーズナブルに手に入るものが少なくない。そのため、デザイン性を高めることや特定のジャンルに特化することなど、価格以外の強みを戦略的につくっていくことが重要となる。

例えば、業界大手の無印良品は、自社ブランド商品をシンプルなデザインでまとめることで流行に流されないポジションを確保しており、2015年から2019年にかけて営業収益が増加し続けている。

(3)業態の多様化と競争の激化

雑貨業界は、キッチン雑貨やインテリア雑貨、ファッション雑貨などの幅広いジャンルが存在するほか、商品の仕入れ先もメーカーから個人(ハンドメイド品)まで多様である。また、ネットショップであれば実店舗をもつ必要がなく、小さな規模で始めることも可能である。そのため参入障壁が低く、競争が激化する傾向にある。

消費者のニーズを的確にとらえるために、自身の得意分野の商品を扱うことや、トレンド情報をしっかりとおさえることが大切である。また、飲食店(カフェ等)の併設や店舗スペースの貸出などとの兼業もひとつの戦略となる。

ビジネスの特徴

小売に属する業態であり、雑貨店特有の特徴というものは特段ない。ただし、複数のメーカーやブランドの商品を扱うため、徹底した在庫管理を行うことが求められる。

開業タイプ

(1)自社ブランド商品販売店

無印良品などのように自社で製作した商品を販売する業態。ハンドメイド品などを自ら製作して販売する場合もこの業態にあたる。営業や在庫管理など小売店に共通する業務に加えて、企画・開発・製造など商品製作に関するコストを考慮した経営計画が求められる。

また、出店する場所によって客層が異なるため、店舗のコンセプトと合わせた場所への出店も重要となる。

(2)セレクトショップ

経営者や担当者がメーカー等から選んだ商品を陳列・販売する業態。当該店舗の経営者やバイヤーの商品を選ぶ目利き力が店舗の運営に重要な役割を果たす。

自社ブランド商品販売店と同様、出店場所による客層の違いについても考慮が必要。

(3)ネットショップ

実店舗が必要ないため、賃料などが不要となる点が強み。楽天やAmazonなどWeb上のショッピングモールに出店するほか、専用のWebサイトを制作する、またそれらの兼用などの開業方法がある。

開業ステップ

(1)開業のステップ

開業に向けてのステップは、主として以下のとおり。

開業のステップ

(2)必要な手続き

雑貨店の営業に関して、特に営業許可等は必要としない。ただし、通信販売を行う場合は特定商品取引法の規制対象となる。

また、兼業する場合には、兼業する業種によって資格や届出が必要になる場合がある(店舗内に飲食店を併設する場合には「飲食店営業許可」が必要になるなど)。

出店場所の選定

渋谷や表参道、青山と言った集客力が高く、街の名前がそのままブランド価値を高めるような場所への出店が効果的ではあるが、店舗のコンセプトとの相性も重要である。ただし、近年はネット通販などの台頭もあり、出店場所の重要性はネットの普及以前よりは低下している。

今後、重要になるのはコンセプトや商品力であり、オリジナル商品の開発などコーディネーターの力量が業績に大きく関係するだろう。

必要なスキル

独自の品揃え、スタッフのセンス、商品知識、トレンドに加え、接客対応なども求められる。また多様化するニーズに対応するために新商品の開発や新しい仕入ルートの開拓が必要である。

開業資金と損益モデル

(1)開業資金

【繁華街に50平米の店を開業】

必要資金例の表

(2)損益モデル

a.売上計画

年間営業日数、1日平均来客数、平均客単価を以下の通りとして、売上高を算出した。

売上計画例の表

b.損益イメージ

上記、売上計画に記載の売上高に対する売上総利益および営業利益の割合(標準財務比率(※))を元に、損益のイメージ例を示す。

損益のイメージ例の表

※標準財務比率は洋品雑貨・小間物小売業に分類される企業の財務データの平均値を掲載。
※出典は、東京商工リサーチ「TSR中小企業経営指標」。

c.収益化の視点

多岐にわたるアイテムが存在するため、仕入の適否が売上や利益を大きく左右する。仕入面では企画開発力、商品力、情報力、リテールサポート力のあるメーカーや問屋と取引があるか、仕入先から積極的に情報を得て計画的に仕入を行っているか、展示会や見本市、問屋街などに直接出向き、トレンドをキャッチしているか、新しい感覚を持つ若手スタッフを積極的に活用しているかが問われる。また、商品によっては単価の低いものもあるため、適正な在庫管理より商品回転率を高めることも必要であろう。

なお、資金面では適正な店舗の改装やECマーケティングなどの投資が行われているかにも注意したい。

※開業資金、売上計画、損益イメージの数値は、出店状況等により異なります。

(本シリーズのレポートは作成時点における情報を元に作成した一般的な内容のものであるため、開業を検討する際には別途、専門家にも相談されることをお勧めします。)