市場調査データ
移動販売
2022年 8月15日
過疎化や高齢化などの社会課題に対応する手段としても、今後のさらなる成長が期待される「移動販売」。中でも自動車で調理販売を行う「フードトラック」(キッチンカー)は、コロナ禍で大打撃を受けた「飲食」のカテゴリーに属しながらも、密を回避したい時代のニーズを捉えて堅調に成長を続けている業種の一つだ。そんな移動販売の活用実態を、20代以上の男女1000人の消費者に対するアンケート結果から探っていく。
1. 現在の利用状況
移動販売の「現在の利用状況」〈図a〉を見ると、最多は「かつて利用したことがある」の475人で、次に「まだ一度も利用したことがない」の304人が続いた。一方、「ほぼ毎日利用している」〜「月に一度未満の利用頻度だ」の合計は217人。そのうちの165人が「月に一度未満の利用頻度だ」という結果を踏まえると、今回のアンケートでは、まだ多くの消費者が移動販売の定期利用には至っていないということがうかがえる結果となった。
2. 性別・世代別の利用状況の内訳
移動販売の性別・世代別の利用状況の内訳〈図b〉を見ると、「ほぼ毎日利用している」〜「月に一度未満の利用頻度だ」の割合が最も多いのが30代男性だ。記述式自由回答では「利便性の高さ」や「出来立ての美味しさ」を利用の理由として挙げる声に加え、「固定店舗にはないワクワク感がある」といった声も多かった。定期ユーザーの割合が30代男性に次いで多い20代女性は、その一方で「まだ一度も利用したことがない」の割合が40%超と最も多く、さらに「かつて利用したことがある」の割合が少ないことから、一度利用するとリピーターになりやすい傾向があるといえそうだ。
3. 利用分野
利用する移動販売の種類を聞いた設問において、「その他」を選んだ321人には「まだ1度も利用したことがない」のほとんどが含まれると考えると、実質的なトップは「たこ焼きや焼き鳥などの一品料理を提供するフードトラック」(279人)となりそうだ。僅差で「パンやスイーツ、ドリンクなどの軽食を提供するフードトラック」(242人)が続き、「お弁当やランチボックスなどを提供するフードトラック」(97人)、「大手スーパーなどが運営する移動スーパー」(57人)の順となった。移動販売の中でも大多数が利用するのが何かしらのフードトラックで、その中心は「一品料理」や「軽食・ドリンク」。一方、昼時のオフィス街などで目立つようになってきた弁当やランチボックスなどを提供するフードトラックの利用者は、現状は全体の1割程度という結果になった。
4. 性別・世代別の利用分野の内訳
移動販売の性別・世代別利用分野の内訳〈図d〉を見ると、軽食のフードトラックの利用割合が最も多いのが50代女性で、後には女性の各世代が続いた。一方の男性は、一品料理と弁当・ランチボックスを提供するフードトラックの利用割合が比較的高い。このように、移動販売の利用分野には男女別の傾向が表れた。
5. コロナ禍の影響
コロナ禍が移動販売の利用に与えた影響については、「ほとんど変わらなかった」と「全く影響はなかった」を合わせると794人に上った。興味深いのが、「利用頻度が増えた」(24人)、「一時的に増えたが元に戻った」(42人)という「利用増」の変化を訴えた人よりも、「むしろ利用が減った」(136人)と回答した人が多かった点だ。コロナ禍で敬遠された店内飲食に代わるスタイルとしても期待されてきたフードトラックだが、記述式自由回答では「感染対策が心配」「衛生面に不安がある」といった声も多数。一方で「接触機会が少ないので店内飲食より安心できる」といった声もあり、感染対策としての移動販売の利用に関しては、人によって捉え方が異なるようだ。
6. 移動販売の利用にかける金額
移動販売1回の利用にかける金額に関して、最多は「500円〜1000円未満」の472人となり、次に「500円未満」(372人)、「1000円〜1500円未満」(93人)が続いた。移動販売の利用にかかる現状の金額感に対して、記述式自由回答では「割高」と考えている人の声が目立った。特に、利用の中心が「一品料理」や「軽食・ドリンク」であり、かつ固定店舗に比べて単価を抑えられるという特徴を持つフードトラックに対して、消費者はさらなる低価格化を期待しているのかもしれない。
7. 今後の利用意向
移動販売に対する今後の利用意向〈図g〉では、「どちらとも言えない」が409人と最多になった。ただしそのうちの一定数の人が「近隣に移動販売が来ない」「生活圏内で見かけることがない」を挙げており、裏を返せば「移動販売がより充実すれば、消費の選択肢になり得る」といった意向を読み解くこともできる。「ぜひ利用したい」「どちらかといえば利用したい」を合わせた人数は432人。その理由として、前述した以外には「移動販売でしか味わえない商品がある」「手軽に外食気分を味わえる」「来てくれるので店に行くよりも楽」「時短になる」などの声が多く挙がった。一方、「あまり利用したくない」「全く利用したくない」を合わせた155人からは、前述した衛生面への懸念や割高感を指摘する声のほか、「最近混んでいて、利用しづらくなった」「品数が少ない」「あえて移動販売を利用する意味がない」「リピートしたいと思う商品に出合ったことがない」などの意見が寄せられた。
8. まとめ(ビジネス領域としての移動販売)
今回のアンケート結果を見る限りでは、現状、移動販売はビジネスの確実性を求めるような領域ではないといえるかもしれない。ただし、今後の利用意向を持つ層は40%超と決して少なくはなく、「どちらともいえない」を含む消極的な回答者からも「移動販売の絶対数の少なさ」を指摘する声が多いことを踏まえると、その分母を増やすことへのニーズは高そうだ。フードトラックの場合、ユーザーはそこにしかない味やワクワク感を求める一方、手軽さや時短といった利便性の面も重視する傾向がある。利用の中心は、一品料理と軽食・ドリンクだが、男女によってニーズが分かれるため、販売する商品によって出店場所を変える、あるいは出店場所によって販売する商品を変えるといった対応も考えられる。そして、現状の価格帯を「割高」と捉えている消費者が多い点も、無視できないポイントの一つだろう。
なお、フードトラックのトレンドやビジネスの特徴、開業のポイントなどに関しては、当サイトの業種別開業ガイド「フードトラック(キッチンカー)」編を参照。
(本シリーズのレポートは作成時時点における情報を基にした一般的な内容になっています。個別の施策等を検討される際には、別途、専門家に相談されることをお勧めします)
調査概要
- 調査期間:
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2022年6月3日〜6月4日
- 調査対象:
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国内在住の20代男女、30代男女、40代男女、50代男女、60代以上男女。
サンプル数(n)1000人※回答不備4人を除く
- 調査方法:
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インターネットによるアンケート調査
最終内容確認日2022年8月