市場調査データ
1,000円カット
2025年 2月 28日
1,000円カットは、リーズナブルかつ短時間で利用できるヘアカットサービスの一形態として広く普及している。かつては中年男性や小さな子どもを主なターゲットとしていたが、最近は女性客や高齢者の利用も見られる。どの世代の男女が、どの程度利用しているのか。そしてどんな部分に魅力を感じているのか。20歳以上の男女1,000人を対象にアンケート調査を実施した。
1. 現在の利用状況

1,000円カットの利用状況を聞いたところ、「まだ一度も利用したことがない」と答えた人が半数以上の507人(50.7%)に上った。利用経験がある人の中で最多だったのは、「かつて利用したことがある」の208人(20.8%)、次いで「2~3か月に1回程度利用している」の144人(14.4%)、その後に「月に少なくとも1回は利用している」50人(5%)と、「半年に1回程度利用している」の49人(4.9%)が同程度で並んだ。
現在のユーザー数(利用率)は285人(28.5%)となり、「かつて利用したことがある」の208人(20.8%)を上回った。利用経験者のうち半数以上はリピートしていることが分かる。また、「月に少なくとも1回は利用している」と「2~3か月に1回程度利用している」を合わせると194人(19.4%)になり、現在のユーザーのうち7割近く(68.1%)が「2~3か月に1回程度以上利用している」という結果になった。
2. 性別・年齢別に見た利用状況の内訳

性別・年齢別に1,000円カットの利用状況を示した〈図b〉を見ると、男女間で大きな違いが見て取れる。男性はどの年代でも利用経験者が6割近くを占め、現在も利用しているユーザーが4割程度存在する。「月に少なくとも1回は利用している」ユーザーと「2~3か月に1回程度利用している」ユーザーの合計も3割程度に上る。頻度の違いはあれども、一度利用した男性はリピートすることが多いようだ。
一方、女性はまだまだ1,000円カットになじみが薄いようだ。「まだ一度も利用したことがない」が全ての年代で50%以上となり、30代と50代では7割を超えた。「まだ一度も利用したことがない」と「かつて利用したことがある」を合算した現在の非ユーザーの割合は、20代で75%、30代以上の年代では軒並み80%以上となった。裏を返せば、現在利用しているユーザーの割合が、ほぼ全ての年代で2割以下という結果になった。女性の場合は「月に少なくとも1回は利用している」というユーザーはほとんどおらず、数か月に1回程度から年に1回程度の利用であることも特徴となった。
3. 利用の基準(現ユーザーおよび利用経験者)

1,000円カットの利用経験者を対象に、同サービスを選ぶ際に最も重視するポイントを聞いた結果が〈図c〉である。最多得票となったのが「低価格、スピードや手軽さ」で、得票数は326(66.1%)。およそ3人に2人がこの回答を選んだことになる。次点が「家や職場、最寄駅といった生活圏内からの距離」で91人(18.5%)。利便性を重視する層も一定数見られる。その後は「技術の高さやオプションの豊富さを含むサービス面」の39人(7.9%)、「スタッフの人柄や店内の居心地の良さ」の25人(5.1%)が続いた。
4. 性別・年齢別に見た利用の基準の内訳(現ユーザーおよび利用経験者)

1,000円カットを選ぶ際の基準は、男女間や年代間でも若干異なるようだ。〈図d〉を見ると、性や世代を問わずに「低価格、スピードや手軽さ」が最も重要な基準となっているが、世代ごとに見ると、女性は若年層のほうが、男性は高齢層のほうがその割合が高い傾向がある。
その他の基準としては、男性は「家や職場、最寄駅といった生活圏内からの距離」がどの年代でも多いのに対して、女性はそれと同程度、「技術の高さやオプションの豊富さを含むサービス面」を選ぶ人もいる。利便性とともにサービスの質を重視するのも女性ユーザーの特徴と言える。
5. 利用にかける費用(現ユーザーおよび利用経験者)

1,000円カットの利用にかける費用について聞いた設問においては、「1,000円~2,000円未満」と答えた人が390人(79.1%)で最多となり、次が「1,000円未満」の64人(13.0%)となった。これらを合わせた454人、実に92.1%のユーザーが2,000円未満で利用しているという結果になった。こうしたユーザーが「低価格、スピードや手軽さ」を求めている層だと推測できる。一方で、3,000円以上をかける人は18人(3.7%)と少数だった。
6. 性別・年齢別に見た利用にかける費用の内訳(現ユーザーおよび利用経験者)

1回の利用にかける費用を性別・年齢別に見たのが〈図f〉である。「1,000円~2,000円」が最多であることは男女ともに、どの世代でも変わらないが、年代が上がるにつれて2,000円以上かける割合がわずかに高くなる傾向が見られる。20代女性は全員が2,000円未満となっているが、これは「毛先を整えるだけ」「傷んだ部分をカットするだけ」などといった、簡易的な利用方法が結果に表れていると思われる。
7. 利用する理由(現ユーザーおよび利用経験者)

1,000円カットを利用する理由について聞いたところ、最も多かった回答が「低価格なため」の338人(68.6%)で、次が「短時間でできるため」の112人(22.7%)だった。前出の「3.利用の基準」の項目では、1,000円カットを選ぶ際のポイントに「低価格、スピードや手軽さ」を挙げる人が最多だったが、それらの中でも低価格に魅力を感じている人が多いという結果になった。「家や職場、最寄駅から近いため」という理由は3位に入ったが、21人(4.3%)と少数である。たとえ店舗に行くまでに時間がかかっても、カット自体を安価に短時間で済ませたいと考える人が多いようだ。
8. 性別・年齢別に見た利用する理由(現ユーザーおよび利用経験者)

1,000円カットを利用する理由を性別・年齢別に見たところ、興味深い結果が得られた。男女ともに、どの年代も「低価格なため」という理由が最多だが、若年ほどその割合が高く、年代が上がるにつれて徐々に低くなる結果となった。若い人ほど価格に魅力を感じている人が多いことが分かる。高齢になるほど増えるのは「短時間でできるため」という理由で、50代、60代以上の女性は30%以上が、男性でも25%以上がこの理由を選んでいる。
9. 今後の利用意向

最後に、1,000円カットの今後の利用意向について尋ねたところ、「ぜひ利用したい」から「全く利用したくない」までの5つの回答に票が割れた。最多は「どちらとも言えない」の271人(27.1%)で、「ぜひ利用したい」の232人(23.2%)、「あまり利用したくない」の176人(17.6%)と続いた。「ぜひ利用したい」と「どちらかと言えば利用したい」を合わせた回答が401人(40.1%)に対して、「あまり利用したくない」と「全く利用したくない」を合わせた回答は328人(32.8%)となり、前向きな考えを持つ人がわずかに多い結果となった。
10. 性別・年齢別の今後の利用意向

今後の利用意向を性別・年齢別に見たのが〈図j〉である。「ぜひ利用したい」と「どちらかと言えば利用したい」を合わせた割合は、女性が3割前後で、男性が5割前後となった。反対に「全く利用したくない」と「あまり利用したくない」を合わせた割合は女性が3~5割、男性が2~3割となっている。年齢が上がるほどこの割合が低下していることも特徴である。女性より男性のほうが積極的に利用したいという意向が強く、さらに高齢者ほど興味が高いことがうかがえる。
11. まとめ(ビジネス領域としての1,000円カット)
1990年代後半に登場した1,000円カットは、低価格かつ短時間のサービスが注目を集め、特に男性やシニア層を中心に顧客を獲得してきた。しかし、その後はチェーン店の出店加速や新規参入が増加し、近年は価格面やサービス面での競争が激化しつつある。では、新しく参入して成功する可能性がないかと言えば、そうとも言い切れない。今回のアンケート調査からまず着目したいのは、未利用者の多さである。「1.現在の利用状況」で見たように、1,000円カットを「まだ一度も利用したことがない」人はおよそ50%いる。サービス自体は聞いたことがあるものの、何かしらの理由で足が向かない人が半数以上いるのである。
「9.今後の利用意向」で「あまり利用したくない」「全く利用したくない」と答えた人の記入形式の自由回答を見ると、その理由には「技術に不安があるので」「きれいに仕上がるか不安」「雰囲気が入りにくい」といったコメントが並ぶ。これらから推測すると、低価格・短時間という効率的なメリットの印象が強いためか、サービスの質や内容が良くないというイメージを持つ人が多いようである。見方を変えると、そうしたイメージを変えることができれば新しいユーザーを取り込むことができる可能性がある。サービスの質を高める、シャンプーやスタイリングなどのオプションを設ける、入店しやすい雰囲気をつくる、といった工夫で、まずは女性や子ども、シニア層にまでターゲットを広げてビジネスを考えることが重要になりそうである。
(本シリーズのレポートは作成時時点における情報を基にした一般的な内容になっています。個別の施策等を検討される際には、別途、専門家に相談されることをお勧めします)
調査概要
- 調査期間:
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2024年10月26日〜11月4日
- 調査対象:
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国内在住の20代男女、30代男女、40代男女、50代男女、60代以上男女。
サンプル数(n)1,000人
- 調査方法:
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インターネットによるアンケート調査
最終内容確認日2025年2月