市場調査データ

運転代行サービス(2024年版)

2024年 5月 10日

コロナ禍による飲食店の営業自粛などの影響を大きく受けた運転代行業界。零細の事業者が多いという事情があり、コロナ前後で3割ほどが廃業したという指摘もある。しかし、コロナ明けの兆しが見え始めた頃からは、一転して全国各地で人手不足に陥っているという報道が目立つ。運転代行の今の利用実態と今後の利用意向について、20代〜60代以上の男女1,000人に聞いた。

1. 現在の利用状況

〈図a〉運転代行の利用状況(n=1,000)
〈図a〉運転代行の利用状況(n=1,000)

運転代行の現在の利用状況は、「まだ一度も利用したことがない」と「かつて利用したことがある」を合わせた現非ユーザーの割合が92.7%に上った。つまり現ユーザー数は、残りの7.3%となる。2009年に当サイトで実施したアンケート調査における運転代行の利用率は6%。現在との差1.3%は誤差の範囲と捉えることもできそうだ。ただ、後の設問でコロナ禍によって利用頻度が減ったと答えた人が6.4%に上ることから、コロナ以前であれば09年との差がもっと如実に表れていた可能性もある。このコロナ前後の変化については、後の設問で詳しく触れる。

2. 利用しない理由

〈図b〉運転代行を利用しない理由(n=1,000)
〈図b〉運転代行を利用しない理由(n=1,000)

運転代行を利用しない理由について、最多は「(外で)お酒を飲まないので必要性がない」の42.2%。次に「代わりにタクシーを利用する」の13.8%が続き、「そのほか」(11.2%)、「運転代行ユーザーなので、利用しない理由はわからない」(10.8%)、「費用が高い」(10.5%)がほぼ横並びとなった。また、「使い方がよくわからない」(6.1%)、「自分の車を他人に運転させたくない」(5.4%)は、それぞれ記述式回答欄でも多かった指摘で、設問1における現在の利用率(7.3%)を踏まえると、これらも決して小さいとは言えない数字だろう。どの課題にどう向き合うかで、ビジネスの切り口は変わってきそうだ。

3. 運転代行の利用にかける費用

〈図c〉運転代行1回の利用にかける費用(n=1,000)
〈図c〉運転代行1回の利用にかける費用(n=1,000)

まだ一度も利用したことがない非ユーザーを除く25.9%のうち、8割以上に当たる21.8%は1回の利用にかける費用が5,000円未満だった。そして残りの4.1%のうちの3.4%が「5,000円〜1万円未満」。運転代行1回の利用に1万円以上をかけるユーザーは0.7%と、ごく少数であることがわかった。

4. コロナ禍の影響

〈図d〉コロナ禍が運転代行の利用に与えた影響(n=1,000)
〈図d〉コロナ禍が運転代行の利用に与えた影響(n=1,000)

コロナ禍が運転代行の利用に与えた影響として、「利用頻度が増えた」が0.4%であるのに対し、「利用頻度が減った」のは6.4%という結果になった。設問1における現在の利用率が7.3%であることを踏まえると、コロナ禍によって利用を減少させたユーザーの多さがうかがい知れる。実際、記述式回答欄でも「コロナ以降、集まってお酒を飲む機会がなくなり、今もそのまま」「コロナで飲み会がなくなった結果、家飲みの方が好きになった」などといった声が散見された。一方で「一時的に影響はあったが今は元に戻った」の2.4%は、現在の利用率を下支えしていると考えられそうだ。記述式回答欄でも「コロナが落ち着いたらまた利用するかもしれない」といった今後の利用に前向きな声も複数挙がった。

5. 今後の利用意向

〈図e〉今後の利用意向(n=1,000)
〈図e〉今後の利用意向(n=1,000)

今後の利用意向に関して、「ぜひ利用したい」と「どちらかと言えば利用したい」を合わせた利用に積極的な人の割合は9.9%と、現在の利用率7.3%を上回った。これに「どちらとも言えない」の30.9%を合わせた40.8%はビジネスのターゲット層になり得るだろう。なお、「あまり利用したくない」を選んだ一部の層から聞こえてきたのは、「衛生面への懸念」や「過去の利用で嫌な思いをした」といった声。こうしたことに配慮した自社の違いを際立たせることができれば、ターゲットの幅はさらに広がるかもしれない。

6. 性別・年齢別の今後の利用意向

〈図f〉性別・年齢別の今後の利用意向(n=1,000)
〈図f〉性別・年齢別の今後の利用意向(n=1,000)

性別・年齢別の今後の利用意向を見てみると、「ぜひ利用したい」「どちらかと言えば利用したい」を合わせた積極的な利用意向の割合は全年代とも男性の方が高い傾向にあることがわかった。一方で、「全く利用したくない」「あまり利用したくない」を合わせた利用に消極的な層の割合は、一部の例外はあるがおおむね男女ともに「年齢が上がるほど高まっていく」という傾向が見てとれた。

7. まとめ(ビジネス領域としての運転代行)

運転代行は、そもそも「車を持たない人」と「お酒を飲まない人」のほとんどは利用する必要がないサービスであるため、ターゲットは最初からかなり絞り込まれるビジネスと言っていいだろう。その分母の少ない業界にとって、コロナ禍による飲食店の休業や外食自粛が大きなダメージを与えたことは、このアンケート結果にも少なからず表れていた。さらに、外食の自粛によって生活スタイルが変わり、運転代行が必要なくなったという元ユーザーの声があったのも事実だ。

ただ、戻りつつある客足に対し運転代行不足が叫ばれているような報道もある中、今回のアンケートでも今後の利用意向を持つ層は現在の利用率を上回っており、今後も需要増が続くことはある程度予想できる。他社に先駆けてこの領域に飛び込むことで、得られる先行利益はあるかもしれない。ただし、万が一またコロナ禍のように社会が不安定な状況になった場合も考慮した上で、持続可能なビジネススタイルを構築できるかも重要な視点になりそうだ。

これまでに言及した以外で、利用に積極的な層からは「行動範囲が広がり、お店の選択肢も増えるので、たまには利用したい」「タクシーを往復で利用するよりも割安だし便利」「田舎に住んでいると、飲みにいく時は必須アイテム」「お酒の席では気兼ねなく楽しみたい」「歳をとって夜の運転が不安になってきたので」といった声が挙がった。

一方、利用に消極的な層の圧倒的多数が指摘したのが「必要性がない」との声。そのほか「タクシーの方が割安」「割高でもタクシーを使う」「そこまでしてお酒を飲みたくない」「マニュアル車だと断られる時がある」「どうすればサービスを利用できるのかわからない」などが挙がった。

どちらかといえば男性の方が今後の利用意向を持つ割合が高く、男女ともおおむね年齢が上がるほど利用に消極的になる。こうした消費者の特性も新規のビジネスを考える上での検討材料になり得るだろう。

(本シリーズのレポートは作成時時点における情報を基にした一般的な内容になっています。個別の施策等を検討される際には、別途、専門家に相談されることをお勧めします)

調査概要

調査期間:

2023年11月10日〜11月17日

調査対象:

国内在住の20代男女、30代男女、40代男女、50代男女、60代以上男女。サンプル数(n)1,000人

調査方法:

インターネットによるアンケート調査

最終内容確認日2024年5月

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