市場調査データ

フィットネスジム/パーソナルトレーニング

2023年3月29日

室内に人が密集するイメージの強いフィットネスジム/パーソナルトレーニングは、コロナ禍以降、利用に慎重になる人が増えた印象がある。一方で、テレワークにより時間的な余裕ができたことや、運動不足に対する懸念などから、各種ジムの利用に積極的になったという声も聞こえてくる。現在のフィットネスジム/パーソナルトレーニングの利用状況と今後の利用意向はどうなっているのか。20代以上の男女1000人に聞いた。

1.現在の利用状況

〈図a〉フィットネスジム/パーソナルトレーニングの利用状況(n=1000)
〈図a〉フィットネスジム/パーソナルトレーニングの利用状況(n=1000)

フィットネスジム/パーソナルトレーニングの現在の利用状況を聞いた設問において、最多は「まだ一度も利用したことがない」の677人(67.7%)となった。2017年に実施した「フィットネスクラブ」の利用状況において「利用したことがない」が64%であったことを踏まえると、ユーザーの総数は当時からあまり変わっていないと考えられる。続いて多かったのが「かつて利用したことがある」の247人(24.7%)。詳しくは後の設問で触れるが、このうちの一定数がコロナ禍をきっかけに利用をやめたと推測できる。一方で、それ以外の定期ユーザーの合計は76人(7.6%)にとどまった。ただ、このうち「週に5日程度の利用」〜「週に1日程度の利用」といういわゆるヘビーユーザーが51人(5.1%)を占めていることから、ユーザーにはその利用価値を認められていると考えることができそうだ。

2.利用の決め手

〈図b〉フィットネスジム/パーソナルトレーニングの利用の決め手(n=1000)
〈図b〉フィットネスジム/パーソナルトレーニングの利用の決め手(n=1000)

フィットネスジム/パーソナルトレーニングをどのような視点で選ぶかを聞いた設問において、「まだ一度も利用したことがないのでわからない」(540人)を除き最多となったのは、「立地・アクセス面」の138人(13.8%)。その後は「低価格」(110人)、「設備の充実度」(94人)、「利用のしやすさ」(60人)、「サービスの充実度」(41人)、「ダイエットなどの目的に対するコミットメント面」(17人)の順となった。「価格」よりも「立地やアクセス面」が重視され、また「設備の充実度」「利用のしやすさ」などへのニーズも比較的高いということが、フィットネスジム/パーソナルトレーニングの特徴といえそうだ。

3.利用にかける費用

〈図c〉フィットネスジム/パーソナルトレーニングの利用にかける月額の費用(n=1000)
〈図c〉フィットネスジム/パーソナルトレーニングの利用にかける月額の費用(n=1000)

フィットネスジム/パーソナルトレーニングの利用にかける月額の費用感について聞いた設問で、「まだ一度も利用したことがないのでわからない」(646人)を除き最多となったのが「5000円〜1万円未満」の149人(14.9%)。続いて「1000円〜5000円未満」(119人)、「1000円程度」(49人)の順となった。一方で、月額1万円以上を投じるという層も37人(3.7%)と少数ながら存在することは、ビジネスを考える上でのポイントだろう。価格を下げて多くのユーザーを獲得するという方法のほか、高額でもサービスの提供価値を高めて特定のユーザーにリーチするという方法も考えられる。

4.コロナ禍の影響

〈図d〉コロナ禍がフィットネスジム/パーソナルトレーニングの利用に与えた影響(n=1000)
〈図d〉コロナ禍がフィットネスジム/パーソナルトレーニングの利用に与えた影響(n=1000)

コロナ禍がフィットネスジム/パーソナルトレーニングの利用に与えた影響に関しては、「利用をやめるきっかけになった」が83人(8.3%)。先の設問で「かつて利用したことがある」と答えた人は247人だったことを踏まえると、実に3分の1程度のユーザーがコロナ禍をきっかけに非ユーザーになったという背景が浮かび上がってくる。また、これに「利用頻度が減った」の64人(6.4%)を合わせた「利用減」の影響を訴えた人は147人(14.7%)に及んだ。

その一方で「むしろ利用が増えた」は17人(1.7%)にとどまっていることから、やはりコロナ禍はフィットネスジム/パーソナルトレーニングのビジネスにとって大きな打撃となったと考えられる。記述式自由回答欄でも「感染症対策・衛生面が心配」「コロナ禍に室内で密集しての運動は控えたい」といった意見が多数。中には「通っていたジムでクラスターが発生した」という声もあった。ただ「自粛期間や在宅勤務でなまった体を鍛え直したい」「コロナが明けたら利用を再開したい」という趣旨の回答も多く、さまざまなシーンで日常が取り戻されつつある今、フィットネスジム/パーソナルトレーニングに向けられる視線が今後より前向きになっていくことも期待できそうだ。

5.今後の利用意向

〈図e〉今後の利用意向(n=1000)
〈図e〉今後の利用意向(n=1000)

フィットネスジム/パーソナルトレーニングに対する今後の利用意向を聞いた設問では、「ぜひ利用したい」(74人)と「どちらかと言えば利用したい」(233人)と答えた人の合計は307人(30.7%)。また、状況によっては利用する可能性もある「どちらとも言えない」が319人(31.9%)に及んだ。記述式自由回答欄において、一定数の人が「運動が嫌い」「体を鍛えることに興味がない」と指摘したことからも分かるように、この領域には全くニーズを持たない層も少なからず存在している。そんな中30.7%が利用意向をもち、31.9%が状況によって利用を考えるという現状は、前向きに捉えることもできそうだ。ちなみに、2017年の「フィットネスクラブ」の調査時には、利用意向を持つ人の合計が30%、「どちらとも言えない」が27%で計57%。この2つを合わせたビジネスのターゲットと言える層の割合は、今回調査時(62.6%)の方が若干上回った。

また、利用に消極的な層にも「自宅でのトレーニングで十分」「無料の動画サイトで事足りる」などの意見も多数あり、運動の必要性を感じている層となるとさらに膨らむと考えられる。現ユーザーからは「自力の筋トレには限界がある」「30代を過ぎて自分のトレーニングでは成果が出づらくなった」といった声も寄せられており、運動の必要性を認識している人は未来のユーザーに変わる可能性もありそうだ。こうした層に自力でのトレーニングとは異なるフィットネスジム/パーソナルトレーニングならではの価値を伝えることができれば、ターゲット層のさらなる拡大も現実味を帯びてくるだろう。

6.性別・年齢別の今後の利用意向

〈図f〉性別・年齢別の今後の利用意向(n=1000)
〈図f〉性別・年齢別の今後の利用意向(n=1000)

今後の利用意向について、性別・年齢別の割合を捉えた〈図f〉を見ると、「ぜひ利用したい」「どちらかと言えば利用したい」を合わせた積極的な回答の割合が最も高かったのは20代男性となった。次に30代女性、30代男性、40代女性が続き、記述式自由回答欄では「運動不足を解消したい」「ダイエットのために利用したい」「子育てが一段落したら利用したい」「自分だけだと長続きしないからトレーナーに教えてもらいたい」などの意見が挙がった。反対に「全く利用したくない」「あまり利用したくない」という消極的な回答割合が最も高かったのは60代以上男性。「60を過ぎているので、感染に対してより慎重になる」など世代特有の意見のほか、「何ができるのかわからない」「利用までのハードルが高い」などの声も散見された。

7.まとめ(ビジネス領域としてのフィットネスジム/パーソナルトレーニング)

今回のアンケートでは、フィットネスジム/パーソナルトレーニングの現状の定期ユーザーが7.6%と、コロナ禍で多くのユーザーが離れた実情が顕著になった。ただ、今後の利用意向を持つ層と、どちらとも言えないを合わせたターゲット層は6割を超えており、これは2017年の調査時よりも増加している。記述式自由回答欄では、コロナ禍によって変化した生活スタイルにおけるストレス発散、運動不足解消、ダイエットなどをその目的として挙げている声が多く、コロナ禍の反動で潜在ニーズが強まっている可能性もある。こうした層に対して、衛生面や非接触などといった近年重視されているニーズを加えてアピールしていくことが、ビジネスを考える上でのポイントになるかもしれない。

本アンケートにおいて、最も重視されるのは「立地・アクセス面」となったが、そのほかの項目を第一条件と考える人もそれなりに多く、どの面を際立たせてビジネスを展開するかという考え方もあるだろう。ここまで言及した以外に利用に消極的な層からのコメントで目立ったのは、「価格が高い」「行くのが面倒になって結局続かない」「近所にない。電車に乗ってまで通いたくない」「忙しくて通えない」「コロナの時に熱が冷めた」「肉体系の仕事をしているので必要性がない」など。一方、利用に積極的な層からは、「個人で行うよりモチベーションが上がる」「運動の習慣づけになる」「生きがいだから」「トレーニングだけでなく、サウナや風呂も手軽に使える」「立ち仕事の後に利用すると疲れがとれる」などの意見が寄せられた。何を強みにし、こうしたターゲット層の声のどこを解決あるいは伸ばしていくのか。そうした視点でフィットネスジム/パーソナルトレーニングを捉えると、ビジネスとしての道筋が見えてくるかもしれない。

(本シリーズのレポートは作成時時点における情報を基にした一般的な内容になっています。個別の施策等を検討される際には、別途、専門家に相談されることをお勧めします)

調査期間:

2022年11月19日〜11月21日

調査対象:

国内在住の20代男女、30代男女、40代男女、50代男女、60代以上男女。
サンプル数(n)1000人

調査方法:

インターネットによるアンケート調査

最終内容確認日2023年3月

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