市場調査データ
ハウスクリーニング(2025年版)
2025年 10月 10日
近年のハウスクリーニング市場は、コロナ禍による衛生意識の高まりや、共働き・共育て世帯の増加、高齢化社会の進行など、さまざまな要因によって変化している。消費者のライフスタイルが多様化する中で、ニーズに応じた柔軟なサービス設計が求められ、さらに今後はデジタル化やAI技術の導入により、業務の効率化や顧客満足度の向上が期待される。こうした変化の中で、現在の利用状況やサービスを選ぶ基準を探るため、20代以上の男女1,000人を対象にアンケート調査を行った。
1. 現在の利用状況

まず、ハウスクリーニングサービスの現在の利用状況をたずねると、「一度も利用したことがない」と回答した人が819人(81.9%)で、「過去に利用したことはあるが、今は利用していない」の111人(11.1%)と合わせると9割以上となり、非ユーザーの割合が圧倒的に高い。
現在のユーザー数は70人(7.0%)で、そのうちの6割(42人)は「年に1回程度の利用」にとどまっている。「年に数回程度利用している」は14人(1.4%)で、月に1回程度以上利用している人の合計は14人(1.4%)となった。これらの結果から、月1回以上や週1回以上の頻度で利用する人はごく少数で、ハウスクリーニングサービスはまだ広く普及していないことが明らかになった。
2. 性別・年齢別に見た利用状況の内訳

現在の利用状況を性別・年齢別に見たのが〈図b〉である。性別の傾向としては、男性は「年に1回程度利用している」人が20~50代に多く、60代以上の男性は「過去に利用したことはあるが、今は利用していない」の割合が約2割と比較的多い。また、40~50代の男性が月に数回、定期的に利用している人がいるのに対して、女性は定期的な利用が少なく、年に数回、スポット的に利用している人が多い傾向が見られる。
年代別に見ると、40~50代はスポット的に利用する人が多くなる傾向がある。60代になると年1回程度となり、サービス利用者は極端に少なくなる。特に女性は、高齢になるにつれて自分で掃除する傾向が強まる様子がうかがえる。
3. 利用の基準(現ユーザーおよび利用経験者)

設問1で、ハウスクリーニングサービスを利用したことがあると回答した181人を対象に、ハウスクリーニングサービスを選ぶ際に重視するポイントを聞いた。
最も多かったのは「料金や見積もりの明瞭さ」の85人(47.0%)で、料金面を重視している人が半数近くを占めた。それに続いたのが「業者の信頼性、口コミ評価」の41人(22.7%)、「スタッフの対応や技術の質」の35人(19.3%)で、これらを合わせると76人(42.0%)。信頼性やサービスの質を求める声が、料金面と同程度あることが分かる。また、「損害保険加入の有無」や「自宅からの距離」「予約のしやすさ」は、ほとんど重視されていないことも見て取れる。
4. 性別・年齢別に見た利用の基準の内訳(現ユーザーおよび利用経験者)

ハウスクリーニングサービスを選ぶ際のポイントを、性別・年齢別に示したのが〈図d〉である。前項で見たように、利用者の多くが「料金や見積もりの明瞭さ」を重視しているが、それ以外の選定基準は年齢や性別によって異なる。女性は「スタッフの対応や技術の質」を重視する比率が高く、男性はそれよりも「業者の信頼性、口コミ評価」を重視する傾向がある。「サービスの範囲」を選ぶ人が男性に多いのも特徴的である。
年代的には、20~30代では「料金や見積もりの明瞭さ」などが中心で、手頃にサービスを利用したい傾向が見える。年代が上がるにつれて重視するポイントは変化し、女性の50~60代以上や男性の60代以上では、業者の信頼性やスタッフの対応の重視度が高まる傾向がある。
5. 利用にかける費用(現ユーザーおよび利用経験者)

ハウスクリーニングサービスの利用経験者に、利用する際の費用を聞いた。最も多かったのは「1万円~3万円未満」の62人(34.3%)で、「5,000円~1万円未満」の60人(33.1%)が続き、これら2つの回答でおよそ3分の2(67.4%)を占めた。比較的高めの価格帯で利用している人が多いことが分かった。これはサービス内容や掃除範囲の広さ、所要時間など、さまざまな要素から算出された一般的な価格帯であるからと考えられる。
その一方で、「1,000円未満」は8人(4.4%)、「1,000円~3,000円未満」が16人(8.8%)で、低価格帯の利用者は少ない。「3万円~5万円未満」は10人(5.5%)、「5万円~10万円未満」が3人(1.7%)となっており、高額利用者も少数である。
6. 性別・年齢別に見た利用にかける費用の内訳(現ユーザーおよび利用経験者)

1回の利用にかける費用について、性別・年齢別に示したのが〈図f〉である。特に30代以上の女性は、「1万円~3万円未満」の利用が比較的多く、高価格帯のサービスに対する抵抗感が少ない傾向が見られる。また、「3万円~5万円未満」や「5万円~10万円未満」を利用する人も一定数存在し、高品質なサービスに対するニーズやリピート利用の可能性が高い層といえる。
一方、男性は「3,000円~1万円未満」の価格帯に集中する傾向が見られる。特に20代・30代男性では「1,000円~3,000円未満」や「3,000円~5,000円未満」の利用が目立ち、スポット的な利用や価格重視の選択が多いことが推測できる。同じ男性でも60代以上になると「1万円以上」の利用が半数以上となり、男女合わせた全年代で最も多い割合となった。多少高額になってもきちんとクリーニングして欲しいというニーズがありそうだ。
7. 利用する理由(現ユーザーおよび利用経験者)

ハウスクリーニングサービスを利用する理由をたずねたところ、最も多かった回答が「掃除しにくい場所の掃除のため」の84人(46.4%)で、次に「頑固な汚れの除去のため」の52人(28.7%)となり、自分では難しい作業をプロに任せたいという理由が全体の7割以上を占めた。また、「時間と労力の節約のため」の28人(15.5%)という、時短と効率化を求めて利用する人の割合も高い。「健康的な居住環境の維持のため」は7人(3.9%)、「出産・育児・介護で手が回らないため」は2人(1.1%)と、少数だった。
8. 性別・年齢別に見た利用する理由(現ユーザーおよび利用経験者)

ハウスクリーニングサービスを利用する理由を性別・年齢別に表したのが〈図h〉である。まず、性別での違いは顕著で、女性は「掃除しにくい場所の清掃のため」と「頑固な汚れの除去のため」が多く、これら2つの回答でおよそ8~9割を占める。一方の男性は、それら2つの回答に加えて「時間と労力の節約のため」が多い。「高齢の家族や親の代わりに依頼している」という回答も男性に多く見られ、時間や労力と引き換えにお金を使うという意識は男性のほうが高いようである。
年代での違いとしては、30~40代では「時間と労力の節約のため」がやや多く、50~60代以上になると「掃除しにくい場所の清掃のため」「頑固な汚れの除去のため」が増える傾向がある。仕事や子育てなど、ライフステージが影響しているものと考えられる。
9. 今後の利用意向

アンケートの全対象者1,000人に今後の利用意向を聞いたところ、「ぜひ利用したい」の69人(6.9%)と「どちらかと言えば利用したい」の225人(22.5%)と答えた人の合計は294人(29.4%)となり、全体の約3割はサービスを取り入れたいという意向がある。設問1で、現在のユーザー割合はわずか7.0%だった。現在は利用していないが、必要に応じて依頼してみたいという潜在的ニーズが存在していることは明らかだろう。
また「全く利用したくない」の254人(25.4%)と、「あまり利用したくない」の133人(13.3%)を合わせた約4割の人は、積極的な利用を考えていないという結果となった。利用をためらう理由としては「価格が高いと感じる」「他人が室内に入ることに抵抗がある」のような声が寄せられた。
10. 性別・年齢別の今後の利用意向

今後の利用意向を、性別・年代別のグラフで示した。「ぜひ利用したい」「どちらかと言えば利用したい」と回答している割合は女性の方が高い傾向があり、特に20〜50代の女性にその傾向が強く見られる。家事負担の軽減や育児・仕事との両立など、生活支援を目的としたニーズが背景にあるものと考えられる。
男性は全体的に消極的な回答の割合が高いが、どの年代でも20~25%程度は利用意向があるのは興味深い。男性も4人から5人に1人は利用してみたいと考えている。また「どちらとも言えない」という回答が多いのも男性の特徴であり、この層にいかに利用してもらうかということも、ビジネスを考える上でのポイントになりそうである。
年代的には、若年層ほど利用に消極的な割合が低く、高齢になるにつれてその割合が高くなるという、相関関係が見られた。
11. まとめ(ビジネス領域としてのハウスクリーニングサービス)
共働き・共育て世帯の増加や高齢化に伴い、ハウスクリーニングサービスの需要は着実に高まりつつある。一方で、本調査の結果から、依然として多数の人が未利用であることも明らかとなった。しかしこの結果は、サービスの認知や理解がまだ浸透していないこともその要因の一つと推測され、言い換えれば、市場拡大の余地がまだまだ大きいということでもある。
記述式の自由回答を見ると、特に20~40代には「関心はあるが利用経験がない」「サービス内容がよく分からない」といった、無関心ではなく未接触を理由とした潜在需要層が存在する。すでに利用経験のある層ではリピート意向が高く、サービス満足度も安定していることから、いかにして初回利用のハードルを下げるかが今後の鍵となりそうだ。価格透明性や信頼性の訴求、ライフスタイル別の柔軟なプラン設計などが、これら未利用層への接点を広げる有効な施策になり得る。
さらに、年齢・性別によって利用金額に違いが見られることも注視しておきたい。この違いは、クリーニングを依頼する場所や所要時間などが影響していると推測される。今後のサービス設計においては、利用者層ごとのニーズに即したメニューと料金体系の設定も重要になるだろう。
(本シリーズのレポートは作成時時点における情報を基にした一般的な内容になっています。個別の施策等を検討される際には、別途、専門家に相談されることをお勧めします)
調査概要
- 調査期間:
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2025年4月26日~6月18日
- 調査対象:
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国内在住の20代男女、30代男女、40代男女、50代男女、60代以上男女。
サンプル数(n)1,000人
- 調査方法:
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インターネットによるアンケート調査
最終内容確認日2025年10月