業種別開業ガイド

ハウスクリーニング

トレンド

(1)高齢化、共働き世帯等の増加で利用者が増加

単身世帯の利用者層を見ると、高齢者が最も多く、次いで35~59歳の女性の利用が多い。ここ数年では、単身高齢女性の利用の伸びが大きい。ハウスクリーニングは、単身の女性にとっては重労働である。それを解決するものとして作業を依頼しているものと考えられる。

ほかにも、働き盛りの単身サラーリーマンなどによる利用も増えているようである。

※上記数値は世帯平均値であるため、一度も利用しない家計も加味されている。

単身世帯だけでなくとも、夫婦共働き世帯の増加や、高齢者夫婦のみ世帯の増加からも、ハウスクリーニングのニーズは拡大していると考えられる。

(2)サービスは多様化の方向へ

従来の水回りなどの清掃だけでなく、差別化のために、付加的なサービスを提供するところが出てきている。変わったところでは、いわゆるゴミ屋敷の清掃と片付けサービス、墓石のクリーニングと墓周りの清掃、定期訪問して清掃する際の洗濯代行といった家事支援サービスなどである。

ニーズの拡大に合わせて参入も増え、競争の激化が予想されることから、今後はより利用者の利便性を追求したサービスが加わり、サービスは多様化の方向に向かうものと考えられる。

ハウスクリーニングの特徴

  • ハウスクリーニングは、エアコンを使用し始める時期やカビの発生しやすい時期、来客を多く迎えるお盆がある8月や、年末の大掃除時期などで特に需要が多い。また、水回りやガラス、ベランダなどの清掃の需要も定期的に発生している。
※上記数値は世帯平均値であるため、一度も利用しない家計も加味されている。
  • 開業に必要な資格や許認可は特になく、比較的低資本で始められるため新規参入が多い。しかし、十分なクリーニング技術がなく、クレームに至るケースもあるようだ。そのため、国や業界団体が資格制度を設け、技能研修の実施や技能認定などを行い、業界の健全化、サービスの標準化に向けた環境作りを行っている。
  • 競争の激しいハウスクリーニング業界では各社、差別化に向けて、得意分野を持ったり対応範囲を広げたりする取り組みを行っている。たとえば、キッチン周りや、バス・トイレ周り、外側高所の窓ガラス、カーペットなど、汚れの酷い箇所、掃除の難しい箇所を中心に高い清掃技術をアピールし、部分清掃からの受注を取っている。また、庭や墓、車などの清掃サービスも加えて行い、幅広い需要を開拓しているところもある。

ハウスクリーニング 開業タイプ

(1)標準型

キッチン、バス・トイレ、洗面台といった水回り箇所や、エアコン、電子レンジ、ガスコンロ、換気扇といった汚れのひどい箇所を中心に清掃するタイプである。ほかにも、フローリングやカーペット、ガラスや網戸、サッシ、庭やベランダなど、清掃や洗浄に手間のかかる個所のクリーニングも行う。1~2名のスタッフが訪問して清掃サービスを行うのが一般的である。

(2)付加価値型

上記の清掃に加えて、汚れのひどい部屋全体(いわゆるゴミ屋敷など)の清掃や、片付け、フローリングや木製家具の修理なども含めた付加的サービスまでを提供するタイプである。他社にない独自のサービスを加えることができれば、大きな差別化要因になり得る。中には、事故物件の特殊清掃に特化した専門業者もある。

開業ステップと手続き

(1)開業のステップ

開業に向けてのステップは、主として以下の6段階に分かれる。

(2)必要な手続き

ハウスクリーニングを開業するに際して、必要な許認可などは特にない。

サービスメニュー作り

  • ハウスクリーニングの料金体系には、「時間制」と「場所制(室内、水回り箇所など、場所で別料金を設定)」がある。定期的に依頼を受けて清掃する日常的な清掃では「時間制」が多く、汚れの酷い箇所の指定を受けて集中的に清掃する場合は「場所制」が多くみられる。金額については、清掃場所の広さ、汚れの程度、建築物の構造や素材などにより異なるのが一般的である。
  • 差別化のための得意分野づくりとしては、キッチンの換気扇やガスコンロ、電子レンジ、シンク、バス、トイレ、洗濯機、エアコン(室外機含む)など、素人では手間がかかりすぎて掃除が難しい箇所の清掃技術を集中的に磨き、部分清掃の受注に結び付けるという方法がある。初回は、特別割引価格での受注から入り、信用を得た後に、他の箇所へと対応範囲を広げていく。対応範囲は、家屋だけでなく、庭の苔取りや雑草除去、墓や車などにまで広げていくことができる。
  • 一般世帯だけでは、ターゲットが限られてしまうため、小規模なオフィスや飲食店、ゲームセンター、パチンコホール、カラオケなど遊興施設なども対象に、部分清掃から営業活動を行っていくことも考えたい。

必要なスキル

  • 業務用洗剤や薬品を使うことも多いため、洗剤・薬品に関する知識の修得は必須である。これらの知識は業界団体が実施しているハウスクリーニングの資格認定のための研修等でも修得できる。以下の資格は、開業のための必要要件ではないが、できれば、取得しておくことが望ましい。

    <ハウスクリーニング技能士>
    公益社団法人全国ハウスクリーニング協会が、職業能力開発促進法に基づき、技能試験合格者に付与する国家資格である。

    <ハウスクリーニング士>
    NPO法人日本ハウスクリーニング協会が同協会の研修修了者に付与する資格である。
  • 依頼者宅に訪問して行うサービスであるため、スタッフの清掃技術やサービスの質、不快感を与えない身なりや接客マナーも重要となる。そのため、スタッフを定期的に研修に参加させる、社内で勉強会を行うなどして、常にスタッフのスキルアップを図っていくことが重要である。そのためにも、作業終了後には利用者アンケートを実施し、利用者満足度向上とクレーム防止、スタッフのスキル向上につなげたい。

    NPO法人日本ハウスクリーニング協会は、技能やクレーム対応などにおいて優良と認めた事業者に対して「優良企業マーク」を付与している。利用者からの信用確保のために、取得することをお勧めする。
  • 知名度が低い独立型店舗にとっては、営業力は必須となる。ホームページの開設、タウンページへの登録、比較サイトへの登録、地域情報誌への広告、ポスティングチラシ、折り込みチラシなどの施策が必要である。また、不動産管理会社からは、退去時の清掃業務を継続的に受注したい。引越し業者からの情報もクリーニングの受注機会に繋がるので役に立つ。

■見出しテキスト

(1)開業資金

開業に際しては、清掃設備費、技術研修費のほか、業務用車両の購入費用、人材募集費用などが最低限必要となる。

【参考】:自宅にてハウスクリーニング(独立型)を開業する場合の必要資金例

(2)損益モデル

■売上計画
自社の経営資源と営業区域の需要を考慮して、無理のない計画を立てることが重要である。

(参考例)
ハウスクリーニング(独立型、自宅での開業の場合)

■損益イメージ(参考例)
ハウスクリーニング(独立型、自宅での開業の場合)

  • 個人事業主を想定していますので、営業利益には個人事業主の所得が含まれます。
  • 開業資金、売上計画、損益イメージの数値は、出店状況などにより異なります。

(本シリーズのレポートは作成時点における情報を元に作成した一般的な内容のものであるため、開業を検討される際には別途、専門家にも相談されることをお勧めします。)

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