市場調査データ

旅行会社

2022年 8月10日

「旅行会社」は、コロナ禍によるダメージが最も大きかった業種の一つだ。2020年からの2年でユーザー数や売上規模が激減したこの業界の現状に関しては、業種別開業ガイド「旅行会社」編でも言及している。では実際、旅行会社のユーザーは、今とこれからの「旅行」に対してどんな意向を持っているのか。20代以上の男女1000人へのアンケート結果を基に考えてみる。

1 現在の利用状況

〈図a〉旅行会社の利用状況(n=1000)
〈図a〉旅行会社の利用状況(n=1000)

旅行会社の「現在の利用状況」〈図a〉を見ると、3ヶ月に1度以上利用するヘビーユーザーは92人(9.2%)。これに「2〜3年に一度程度利用する」という回答者までを加えても、491人(49.1%)となり、現状、旅行会社の定期ユーザーは過半数にわずかに届いていない状況であることがわかった。一方で、突出して多かったのは「以前利用したことがある」の352人(35.2%)。その背景には、長引くコロナ禍の影響や、単に「旅行」に対する意識の違いなどがあることも考えられるが、旅行会社には一度の利用体験が定期的な利用につながっていないという側面もあるようだ。

2 性別・世代別の利用状況

〈図b〉性別・世代別の利用状況(n=994※対象外の世代を除く)
〈図b〉性別・世代別の利用状況(n=994※対象外の世代を除く)

「性別・世代別の利用状況」〈図b〉を見ると、2〜3年に1度程度以上利用している定期ユーザーの割合が最も高いのは20代男性。一方で「まだ1度も利用したことがない」割合が最も高いのも20代男性となった。若いほど「まだ1度も利用したことがない」割合が高くなるのは当然といえるが、その半面「以前利用したことがある」割合が少なく、定期ユーザーが多いという状況から、20代男性は、一度利用するとリピーターになる可能性が高いと考えることができる。

3 コロナ禍の影響

〈図c〉コロナ禍が旅行会社利用に与えた影響(n=1000)
〈図c〉コロナ禍が旅行会社利用に与えた影響(n=1000)

コロナ禍が旅行会社の利用に与えた影響について聞いた設問では、「利用頻度が大きく減った」が512人(51.2%)と半数を超えた。「ほとんど変わらなかった」「全く影響がなかった」を合わせると407人(40.7%)となるが、このうちの多くは「1.現在の利用状況」において「まだ一度も利用したことがない」や「以前利用したことがある」を選んだ回答者が占めると考えられる。だとすれば、旅行会社の定期的なユーザーの多くが、コロナ禍で旅行会社の利用を控えたケースがあったということになりそうだ。

4 旅行会社の利用にかける金額

〈図d〉旅行会社1回の利用にかける金額のグラフ(n=1000)
〈図d〉旅行会社1回の利用にかける金額のグラフ(n=1000)

旅行会社1回の利用にかける金額に関して、最多は「1万円〜3万円未満」の338人(33.8%)となり、次に「3万円〜5万円未満」の230人(23%)、「5万円〜10万円未満」の153人(15.3%)が続いた。一方、10万円以上という層は63人(6.3%)と多くはないが、売上ベースで考えた時、「1万円〜3万円未満」の層とどちらが大きくなるかはわからない。記述式自由回答では、旅行会社を利用する理由として、「自分で手配するよりお得」という回答が目立つ一方、「少々割高になったとしても、自分では組めない最善のプランを提供してくれる」といった回答も少なくなかった。割安感を求める人もいれば、そこにしかない価値を求める人もおり、その両方ともビジネスのターゲットになり得るというのが旅行会社の特徴といえるかもしれない。

5 性別・世代別の旅行会社にかける金額

〈図e〉旅行会社の利用にかける金額の性別・世代別グラフ(n=994※対象外の世代を除く)
〈図e〉旅行会社の利用にかける金額の性別・世代別グラフ(n=994※対象外の世代を除く)

旅行会社ユーザーの特徴と傾向を捉える上で、興味深い結果が出たのが1回の利用にかける金額を性別・世代別で見たグラフ〈図e〉だ。1回の利用料金を「〜1万円未満」とするのは20代男性が最も多く、その後に続くのは男性の各世代。反対に「3万円以上」とするのは女性の40代、50代がほぼ横並びのトップとなり、以降女性の各世代が続いている。このように、旅行会社の利用にかける金額に関しては、男女間で大きな違いがあることがわかった。

6 旅行会社の利用形態

〈図f〉旅行会社の利用形態(n=1000)
〈図f〉旅行会社の利用形態(n=1000)

旅行会社の利用に際して、オンラインと実店舗どちらを使うかを聞いた設問〈図f〉では、最も多いのが「ほぼ全てがオンライン」の417人(41.7%)。「実店舗とオンラインを併用」194人(19.4%)、「かつては実店舗だったが今はオンラインがメイン」の178人(17.8%)と、旅行会社の利用にオンラインを活用するユーザーが789人(78.9%)と大多数を占めていることがわかった。記述式自由回答では、「オンラインだと空き時間にできる」「比較検討が楽」といった声が多く挙がった。一方で、「実店舗のみ」の125人(12.5%)も、決して少ないとは言えない数字だ。記述式自由回答では、「やはり色々とアドバイスが欲しい」「リアルの方が安心できる」といった声が寄せられた。

7 今後の利用意向

〈図h〉旅行会社に対する今後の利用意向(n=1000)
〈図h〉旅行会社に対する今後の利用意向(n=1000)

「旅行会社に対する今後の利用意向」〈図h〉では、「ぜひ利用したい」「どちらかといえば利用したい」を合わせた人数は626人(62.6%)となった。その理由としては、「パッケージツアーはお得」「段取りがスムーズ」「旅先のアイデアが増える」「個人だといけない場所に行ける」「特に海外などの遠方だとサポートがあって安心」「ポイントがつく」などの意見が寄せられた。「どちらとも言えない」を選んだ271人(27.1%)の多くから挙がったのが、「行きたいがまだコロナが心配」という声。コロナ禍の収束後であれば、今後の利用意向を持つ人はさらに膨らむと考えられる。一方、「あまり利用したくない」「全く利用したくない」を合わせた103人(10.3%)からは、「旅行会社を通さずに自分で手配したい」という声が多く寄せられた。つまり「旅行には興味があるが、その手段に旅行会社を使わない」という人も一定数いるということがわかった。

8 まとめ(ビジネス領域としての旅行会社)

旅行会社のアンケートを通してわかったのは、「旅行」に対するニーズの高さだ。旅行会社をまだ一度も利用したことがない人は15.7%、今後の利用に消極的な人は10.3%と一定数いるが、この中には「コロナが収束したら行きたい」「旅行には行きたいが、旅行会社は使わない」といった人も含まれている。こうした人を含む「旅行」に前向きな多くの人が、その旅行をより楽しめるようになるツールやサービスなどのさらなる充実を望んでいるといえるだろう。旅行会社1回の利用に対する金額感としては「1万〜3万円未満」へのニーズが最も高いが、「10万円以上」という層も一定数おり、ビジネスを考える上では「売り上げベースの視点」を持つことも大切になる。また、旅行にかける金額感の男女間の意識の差が大きいということも、何らかのブレイクスルーのヒントになるかもしれない。こうしたポイントを踏まえつつ、さらにコロナ禍で変わった消費者ニーズを捉え、コロナ以前より山積する業界の課題を解決する意識を持つことが、「旅行」業界における成功の糸口となりそうだ。

なお、「旅行会社」のトレンドやビジネスの特徴、開業のポイントなどは、当サイトの業種別開業ガイド「旅行会社」編を参照。

(本シリーズのレポートは作成時時点における情報を基にした一般的な内容になっています。個別の施策等を検討される際には、別途、専門家に相談されることをお勧めします)

調査概要

調査期間:

2022年6月3日〜6月4日

調査対象:

国内在住の20代男女、30代男女、40代男女、50代男女、60代以上男女。サンプル数(n)1000人
※一部対象外世代の回答者も含む

調査方法:

インターネットによるアンケート調査

最終内容確認日2022年8月

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